第23幕
また僕は今、あの夢を見ている。
またいつものように子供の頃の姿で。
けどどうやら少しシチュエーションがいつもとは違うようだ。
「なんで二人がいるの?」
あの見知らぬ丘の頂上。僕の前にはユキナとフルがおり、そこで僕の方を見てたたずんでいるんだ。
「ねぇ?なんか話してよ。」
だが、二人は僕の声にはさっきから反応してくれない。
夢だから当たり前なのかな?でもなんか…
その時だった。
二人の足元一帯が突如、紫…いや、闇色に染まり始めたかと思ったらそこからいくつもの手が無数に伸びてきて二人の身体を掴んだ。
「ねぇ!何しているの!二人とも逃げるんだ!」
僕は必死になって呼びかける。
だが二人ともその場から逃げようとしたい。
そしてその間にも徐々に二人はその手により地面に…いや、闇に引きずり込まれている。
そしてある異変に気づく。
「うそだろ…どうして!!」
そう。さっきから僕の身体は二人を助けだしたい思いとは逆に何故か突然その場から一歩も動かせなくなったのである。
「イヤだ…」
こんな形で家族を失うなんて。
そして僕の目から涙が地面に落ちるのと同時に二人は完全に僕の前から姿を消した。
そこに残るのはただの無力。
自分は何も…誰も救うことの出来ない夢見がちな人間なのだという無力感。
ただそれだけ。
〜メビウス 50階層 ボス部屋〜
「ねぇ!バスパの街に戻らない?」
僕は二人になるべく心配をかけないよういつも通りの笑顔でそう言う。
今朝のあの夢があまりにもリアルで怖くなったから。
『せっかくダンジョン全体の半分、50階層までたどり着いたのだ! 帰るとしてもここのボスを絶対に倒してからがいい!』
「そうですよ!今日のエデルさん、あまり顔色よくないようにも見えますし、風邪でもひきました?」
「そ!そんなことないよ!」
僕は両手を大げさに振って風邪なんかではないことをアピールする。
でも今考えるとあれはやけにリアルだったけどほんとに夢…だよな?
「はぁ…考えてても仕方がないよね。じゃあもうこの階層もとっととクリアしちゃおう!」
『「おお!」』
二人とも元気だねぇ。
だが僕は後になりこのボス部屋に入ったという選択を下した自分をとても後悔することになる。
そのボス部屋では異常な光景が広がっていた。
体長5メートルはあろうかというここのボスであった蜘蛛のモンスターが15匹、その全てが既に無残な亡骸へと変えられていた。
身体の大きさも大きさなのでまだ全然、地面に呑まれていないようだ。
そしてボス部屋の中央で一番大きな頭を砕かれた蜘蛛の残骸である節足に優雅に腰掛け、涼しい笑顔をこちらに向けてくる男。
この状況を作り出したのはおそらくコイツだろう。
身にまとっている白衣が全く汚れてもいなくてシワひとつないところをみるとノーダメージであいつらを倒しきったということになる。
「やぁこんにちは!エデル君、僕のことを覚えてるかな?」
忘れられるわけがない。あのどこか恐ろしい雰囲気を纏った笑顔。
ビヤルドの街にある冒険者ギルドのギルド長に紹介してもらった…
「忘れちゃったかな?それなら改めて自己紹介をさせてもらおう!僕はアレク。職業付与についての研究を主にしている研究者さ。冒険者としての側面も持つけどあっちは研究費の足しにする為にやっているだよね。でも最近少しばかり冒険者としての方が有名になっちゃったみたい」
そんなことはどうでもいいんだ。
僕はなるべく冷静を装いアレクに尋ねる。
「僕たちに何か用ですか?」
するとアレクはまたあの笑顔をこちらに浮かべて「さぁどうだろう」とだけ呟いた。
明らかにあのアレクという男は僕らが来るのを待っていたな。
『確か冒険者ランクは9だったな。研究費の足し程度の考えでそれだけランクが高いとは恐れ入るな…』
フルが珍しく引き腰でそう呟く。
「まさか…アレクって、あのアレク」
ユキナが何かを思い出したようにワナワナ震えた目を僕に向けて一言。
「エデルさん…私達、早く逃げないと…あの男に、殺される!」
「ユキナ、まさかあの男について何か知っているの?」
僕はユキナの不安を煽らないよう優しく質問した。
すると彼女から驚きの言葉が発しられる。
「えぇ。だってあの男は…」
●名前 アレク
●職業 暗殺者
●HP 6231/6231 SP 498/539
●レベル 53
●スキル 我流暗殺術 毒魔法 高速移動
次回更新予定
2018/3/25




