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B side【フル編】

閑話となります。

我が孤独を恐れるようになったのは恐らく"あの時"だろう。


我は幼き頃は父、母そして兄者と北の樹海と呼ばれている広大な密林のさらにずっと奥に住んでいた。

かつて我々が住んでいたそこは、人がかつて一度しか立ち入ったことがないとされる場所で、我の両親はその水を傷口に当てるとたちまち傷口が塞ぎ元気になれる等全てのどんな生物にも平等にその神秘の力を発揮し、神からの贈り物ともいわれている何にも誰にも汚されていないエメラルドブルーをした湖【神秘なる青の湖】〔トゥルーブルー〕がそこにはあった。

だが、まだ浅い位置の北の樹海とは違いこの湖周辺は並みの人間では相手どれない強力なモンスターが徘徊している。人間のようなひ弱な生物では特に来るだけでも至難の技だといえるだろう。

ただ、父母はよくこの湖に唯一きた正しい心を持った強い人間に力を与えたこと、それと我ら一族は昔からこの湖の創生神に守護を任されており分かりやすくするため、湖とは対の赤い毛皮に包まれているということをいつも誇っていたな。


だが、そんないつも大きく力も強かった…我の誇りだった両親はある日、死んだ。いや、殺されていた。

我が、兄者にそれまで住んでいた巣穴から少し離れた場所で狩りを教えてもらいに行った帰り…

初めての獲物のロックエレファントを巣穴に持ち帰った時だった。


「やっぱり俺は最強なんだ!今の俺ならあの伝説の神狼も殺せるんだ!ヒャハハハハハハハハ!」


男は腐った目で図上を見上げ空に向けて高らかに笑っていた。


その身は重装備でかつ返り血にまみれ、その背中にはやはり我ら一族を殺す為であろう【神殺しの邪剣】が装備されていた。

その人間の下では両親の亡骸が体から大量の血を流して横たわっていた。激戦だったのであろう。亡骸の周囲の木々はいくつも折れており、地面には何箇所もクレーターのようなものが出来上がっている。そして、両親は邪剣で体の何箇所も何箇所も切られた跡があった……。


我ら兄弟はそこから動くことができなかった。だがそれがまずかった。


「まだ、なんかいるなぁ」


気づかれた。気配を最大限消して草むらに潜んでいたのに。


「なんだぁ?ガキもいたのかぁ?」


と邪剣を我らが潜んでいた草むらに向けてきた。まだ両親の血がこびりついている凶器を。


これが両親の誇っていた人間というものなのか?これが両親が誇っていた…。


我は怖くて震えていた。ただただ目の前の人間が恐ろしかった。


『フル!お前だけでも逃げるのだ。私が奴の気を引いておくから!我らの血は途絶えさせてはいけない!』


兄者から念波が届く。我ももちろん戦いたかったが兄者は我より昔から強く、冷静だった。

だから我が逃げた後にきっと相手の隙を伺い兄者もうまく逃げる算段なのだろうと理解できた。

あの男には本能的に戦っても勝てないと分かっていたから。


それからは我は脇目も振らず、ただただガムシャラに逃げた。


そして1時間ほど走り続けただろうか。 気づけば樹海の浅い所まで来ていた。


両親を失った悲しいは大きかったが、兄者がそのうち追いかけて来てくれるという希望を捨てずにただひたすらに待った。


その歳月8年。ずっと独りだった。とても悲しく寒い夜をいくつも独りですごした。


その間に我も15歳となり、あの頃より狩りの腕をかなり上げることができた。この時は"唯一の家族"の兄者がひょっこり現れた時に我の狩りの技術を見せて自慢し、褒めてもらうことだけを楽しみにしていたからだ。


だが、とうとうその間に兄者は一度も姿を現さなかった。


兄者も死んでしまったのかもしれないと本気で思った。




それからまた、しばらく経ったある日、我はある出会いを果たした。


その"人間"は図々しく我のテリトリーに侵入してきて、テントを立てていたので深夜、撃退しようとバレない程度に近づいたら、中から変なスライムが出てきて攻撃してきたのでとりあえずあっちのほうにぶっ飛ばしておいた。

テントの中の人間を見てみると、なんというか強くないとはすぐに分かった。この辺りは決して強くはないが危険なモンスターが夜でも出現するのに警戒心が無くぐっすり眠っている。その時、襲おうと思えば襲えたがなぜか我は目の前のこの男に何を求めていたのか着いていきたいと思ったんだ。

不思議なものだ。あんなにまで我は人間を恐れていたのに。


それからはあっという間だった。

このエデルという人間と我は仲よくなった。最初はエデルは我を見て驚いて樹海中を逃げたりと色々あったが、今ではエデルの家に住まわせてもらっている。


我の両親はすでに死に兄者も行方不明。だがそんな見ず知らずの我をエデルは家族と言ってくれた。

ただそれだけ、ただそれだけで我はとても嬉しかった。救われた。もう独りではないと分かった。

図々しいかもしれないが、我はエデルと一緒にこれからいかなる時も過ごしていきたいと思った。


もう我は孤独ではない。だってエデルがいるのだから。



… いつかまた兄者と会えたらエデルと合わせて紹介してあげたい。そして兄者とも一緒にエデルの家でワイワイ夕食を食べたい。


いつからかそんなちっぽけなことが我の夢となっていた。






次回更新予定

2018/2/21

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