第13幕
朝霧が立ち込め、朝の光が暗かった夜の闇を侵食し始めた早朝5時。いつもなら確実に僕がまだ寝ている時間だが、今日は唐突に目を覚ました。いや、正確には起こされた。なぜなら
【レベルが上がりました】
頭の中に突如流れる一つのアナウンス。せっかく安眠していたのに、見事にそれを阻止され僕は驚いた拍子にベッドから落ちててしまった。それにとんでもない勢いで心臓がバクバク鳴ってるし、こんな体に悪い目覚まし時計をかけた覚えももちろんない。こんなことする犯人は一人…いや、1匹しかいないだろう。
「まったくフルはどこまで散歩に行ったのやら…」
昨日の就寝前、フルが『我は毎日朝の散歩をするのだ!それは我一人でするのが好きなので、貴様は絶対付いてくるなよ』とか言っていた。その際、街の人々には見つからない様にということは口酸っぱく言っておいたので大丈夫だとは思うけれど…
まさか最初のスライムみたいに逃げたとかはないよね?まだフルとは会ってから全然経ってないけれどそれはさすがに悲しすぎる。でもよくよく考えてみたらテイムが切れてたら寝ている間にレベルは上がらないか!心配したけどそれは必要なさそうだね!
それにしても良くみたら枕元に置いておいたアイテムボックスも無いし、本当にどこまで散歩に行ったかね?そんなことをぼんやり考えていると
【レベルが上がりました】「!!?」
【レベルが上がりました】
【レベルが上がりました】
…
…
…
そのアナウンスは5分ほど続いただろうか………。本当に心臓に悪いからやめてほしいなこれ。
じゃない!いやいや待て待て!さっきから僕はここにいるから今のも犯人はフルで間違いないのだろうけど本当にあの子何してるの?何したら散歩だけでこんなにレベルを上げられるの!?
恐る恐る僕は自分に向けてステータス閲覧をかけてみる。すると僕の頭にとんでもない情報が流れてくる。
●名前 エデル
●職業 モンスターテイマー
● HP 2200/2200 SP865/865
●レベル 43
●スキル 自己回復 与ダメージ倍増
被ダメージ半減
●装備 寝衣
●???? なし
●テイムモンスター 子神狼 フル
あれ〜?何これ?もしかして寝ぼけてるのかなこれ?うんそうだ。絶対そうだよね!よし、もう一回寝よう。
僕が混乱から逃げる為に寝ようとした瞬間、家の玄関が開く音がした。フルが帰ってきたのだろう。僕はもう一度体を起こし玄関に向かうとそこには予想通りアイテムボックスを口に咥えたフルがいた。だがツッコミどころがある。まず最初に目につくのがフルの全身に血が付いていることだろう。だが、これは出血ではないね。返り血だねこれ。
でも目を引くのはのはこれだけフルが返り血を浴びているにも関わらず、アイテムボックスはまったく汚れていないのだ。やっぱり高性能だね!仕組みはわからないけど
『え、えーっと、貴様に我から言いたいことがあるのだが…』
「その前にまず寒いかもだけど水浴びだね」
『あっ…あぁ…そうだな』
そして、早朝で誰も出歩いていないので透明化はしていないフルに対して、僕は井戸水を頭から思いっきりぶっかけて乾かしてから家に入れた。
で、その最中にフルのステータスを見てたらなんか大変なことになっていました。
●名前 子神狼 フル
● HP5435/5433 SP1874/1874
●レベル62
●スキル ????
???? ????
????
OH〜 ほんとになにをすればこんなことになるのでしょうかね?自分のステータスを見たときでも腰を抜かしかけるほど驚いたけど、フルはもう何かよく分からない。言葉を失うとはまさにこのことだね。
それから僕たちはお父さんを起こさないように僕の部屋に移動し、フルがいう自称"散歩"の最中一体何があったのかを聞こうとしたら、フルが開口一発目に
『すまなかった!』
と謝罪してきた。何のことを謝っているのか分からなかったので聞いてみたら、昨日の家に帰ってきてからのフルと僕のお父さんとの会話の中で樹海マラソンという名の僕の黒歴史を言ってしまった事を謝ろうと夜のあいだ中考えており、さらに、許してもらおうと思って慰謝料ではないが僕のために何か役立つものを寝ている間に取ってこようと思い散歩と称して外に出てたということを聞いた。
もちろん僕はその件については恥ずかしかったけどあまり気にしてなかったし
『許してくれるか?』
なんて目をウルウルさせてくるんだもん。即答で許したよ。その際フルがよほど嬉しかったのか年相応にキャンキャン尻尾を振って喜んでくれたし一件落着…な訳がなく本題の散歩の内容を聞くとあのおかしなレベル上昇の理由がわかった。
『レベルが上がったのはおそらく我がロックエレファントやエレメンツドラゴンやらを倒したからだろうな!』とのこと。僕はもはや驚かないけど、当たり前のように今の僕では倒せないであろうモンスターを狩ってきたと言ってくるフルはやっぱり規格外だね。
どうやらそれらのモンスターを朝から殺戮してきて、そのドロップ品を拾ってきてご丁寧にアイテムボックスに入れてきてくれたとの事だ。というか多分だけど今日と昨日の2日分の収穫だけで僕の家の年収の4倍くらいはいくだろう。やれやれ…本当に凄いね…
さて、フルも勇気を持ち僕との関係を良くする為に一歩踏み出したのだ。僕もそろそろお父さんにあの"提案"をしてみるかな。
僕とフルとで歩く最初の一歩となる提案をね。
次回更新予定
2018/2/20




