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『救済ではなく、継承の物語』― アストラル継承記 ―  作者: 龍の末裔
■第67章|『揺らぎ』
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(5)贈られたもの

理永が訪ねてきたのは、

数日後のことだった。


「由良、あのね」


いつもより、

そわそわと落ち着かない様子だった。


手には、

小さな包みを持っている。


「これ……試作で作ってみたんだけど……」


そう言って、

理永は由良の前に差し出した。


「試作?」


「うん。魔石を使って、作ってみたの」


包みを開くと、

小さなペンダントが現れた。


丸みを帯びた魔石を、

細い銀のワイヤーが精巧に包んでいる。


石の奥には、

淡い金色の光が宿っていた。


「……綺麗だな」


素直にそう口にすると、

理永の表情がわずかに明るくなった。


「本当? よかった」


安堵したように笑う。


けれど、

すぐに視線を泳がせた。


「まだ試作品だから、魔石として使えるかどうかも分からないんだけどね。アクセサリーとしては使えるかなって」


「それに、天然の魔石と何が違うのか、由良にも見てもらいたくて」


そう言いながら、

理永は由良の反応を窺っていた。


その様子に、

由良は小さく目を細めた。


相談のため、か。


それも、

嘘ではないのだろう。


けれど、

それだけではないことも伝わってきた。


由良は、

ペンダントを手に取った。


指先が、

魔石に触れる。


その瞬間。


石に宿る魔力が、

指先を通して伝わってきた。


淡く、温かな金の魔力。


間違えるはずがなかった。


かつて、

何度も触れたことのある力。


長い時を経ても、

忘れることなどできない感覚。


この金の魔力は、

由良にとって特別なものだった。


原初の時代。


種に宿った金の炎は、

由良が正気を保ち続けるための支えとなった。


そして、あの少女は。


吸血鬼となった由良を、

今の姿へと戻してくれた。


自分を支え、

自分を変えた力。


それが今、

目の前の理永の手によって形となり、

自分のもとへ届けられた。


「……由良?」


理永の声に、

由良は顔を上げた。


「どうしたの?」


「いや」


由良は、

ペンダントをそっと握り直した。


「綺麗な魔石だと思ってな」


嘘ではない。


けれど、

それだけでもなかった。


目の前の理永は、

自分が何を形にしたのか、

まだ知らない。


彼女にとっては、

自分の魔力を込めた小さな魔石。


そして、

由良に贈るために作ったペンダント。


それだけなのだろう。


けれど、

由良にとっては違った。


その力は、

今の彼女の中にも確かに息づいている。


その事実を、

由良は胸の内に静かに留めた。


今はまだ、

伝えるべきではない。


「ありがとう。大切にする」


そう告げると、

理永は一瞬、目を見開いた。


それから、

照れたように笑った。


「……うん」


その笑顔を見つめながら、

由良はペンダントを手の中に収めた。


理永が込めた魔力の温もりが、

指先に残っているような気がした。


淡い金色の光が、

石の奥で静かに揺れていた。




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