(5)贈られたもの
理永が訪ねてきたのは、
数日後のことだった。
「由良、あのね」
いつもより、
そわそわと落ち着かない様子だった。
手には、
小さな包みを持っている。
「これ……試作で作ってみたんだけど……」
そう言って、
理永は由良の前に差し出した。
「試作?」
「うん。魔石を使って、作ってみたの」
包みを開くと、
小さなペンダントが現れた。
丸みを帯びた魔石を、
細い銀のワイヤーが精巧に包んでいる。
石の奥には、
淡い金色の光が宿っていた。
「……綺麗だな」
素直にそう口にすると、
理永の表情がわずかに明るくなった。
「本当? よかった」
安堵したように笑う。
けれど、
すぐに視線を泳がせた。
「まだ試作品だから、魔石として使えるかどうかも分からないんだけどね。アクセサリーとしては使えるかなって」
「それに、天然の魔石と何が違うのか、由良にも見てもらいたくて」
そう言いながら、
理永は由良の反応を窺っていた。
その様子に、
由良は小さく目を細めた。
相談のため、か。
それも、
嘘ではないのだろう。
けれど、
それだけではないことも伝わってきた。
由良は、
ペンダントを手に取った。
指先が、
魔石に触れる。
その瞬間。
石に宿る魔力が、
指先を通して伝わってきた。
淡く、温かな金の魔力。
間違えるはずがなかった。
かつて、
何度も触れたことのある力。
長い時を経ても、
忘れることなどできない感覚。
この金の魔力は、
由良にとって特別なものだった。
原初の時代。
種に宿った金の炎は、
由良が正気を保ち続けるための支えとなった。
そして、あの少女は。
吸血鬼となった由良を、
今の姿へと戻してくれた。
自分を支え、
自分を変えた力。
それが今、
目の前の理永の手によって形となり、
自分のもとへ届けられた。
「……由良?」
理永の声に、
由良は顔を上げた。
「どうしたの?」
「いや」
由良は、
ペンダントをそっと握り直した。
「綺麗な魔石だと思ってな」
嘘ではない。
けれど、
それだけでもなかった。
目の前の理永は、
自分が何を形にしたのか、
まだ知らない。
彼女にとっては、
自分の魔力を込めた小さな魔石。
そして、
由良に贈るために作ったペンダント。
それだけなのだろう。
けれど、
由良にとっては違った。
その力は、
今の彼女の中にも確かに息づいている。
その事実を、
由良は胸の内に静かに留めた。
今はまだ、
伝えるべきではない。
「ありがとう。大切にする」
そう告げると、
理永は一瞬、目を見開いた。
それから、
照れたように笑った。
「……うん」
その笑顔を見つめながら、
由良はペンダントを手の中に収めた。
理永が込めた魔力の温もりが、
指先に残っているような気がした。
淡い金色の光が、
石の奥で静かに揺れていた。




