(4)贈り物
理永は、
手の中の魔石を光にかざした。
淡い金色の光が、
透明な石の奥で揺れている。
金色の魔石の魔力を使うことはできなかった。
けれど。
「……綺麗だよね」
思わず、
そんな言葉がこぼれた。
窓辺に並べた魔石を見渡す。
どれも、
自分の魔力を込めたもの。
光の強さも、
色合いも、
少しずつ違っていた。
理永は、
首元に手を伸ばした。
そこには、
魔力を入れる練習用にいつも身につけている魔石がある。
指先でそっと触れる。
これも、
魔石を身につけておく方法のひとつだ。
だったら。
「……アクセサリーにしたら、どうかな」
呟いた理永の顔が、
ぱっと明るくなった。
魔具として使えなくても、
身につけることならできる。
それに、
この金色の魔石なら、
きっと綺麗なものになるはずだ。
「よし、作ってみよう」
理永は、
魔石をひとつ選び、
机の上に置いた。
どんな形にしようかな。
紐を通すだけでもいいけれど、
せっかくなら、
もう少し工夫してみたい。
考えながら、
理永は魔石を指先で転がした。
ふと、
由良の顔が浮かんだ。
――由良にも、似合うかな。
そう思った途端、
胸の奥が少しだけ弾んだ。
由良がこれを身につけている姿を想像すると、
不思議と頬が熱くなる。
似合う形にしたい。
由良が手に取ったとき、
少しでも嬉しいと思ってくれたらいい。
そんな期待が膨らむほど、
自分から贈り物を渡すことが、
急に気恥ずかしく思えてきた。
いつも、
いろいろなことを教えてくれる由良。
命の危機から救い出してくれた。
自分の知らないことを知っていて、
困ったときには助けてくれる。
そんな由良に、
何か贈れたら。
きっと、
喜んでくれるだろうか。
想像するだけで、
胸の奥がふわりと温かくなる。
けれど、
実際に渡す場面を思い浮かべると、
今度は落ち着かなくなった。
由良はどんな顔をするだろう。
驚くだろうか。
それとも、
笑って受け取ってくれるだろうか。
考えれば考えるほど、
楽しみなのに、
少しだけ怖い。
「……ひとつ、作ってみようかな」
小さく呟く。
試作品ができたら、
由良にも見てもらおう。
魔石について、
聞きたいこともある。
だから。
これは、
相談のきっかけを作るため。
そう考えたはずなのに。
理永は、
もう一度、金色の魔石を見つめた。
由良が受け取ってくれるところを想像すると、
なぜか、
少しだけ嬉しくなった。
理永はそっと魔石を握りしめる。
期待していることを認めるのは、
まだ少し照れくさかった。
それでも、
由良のために形を選ぶ時間は、
思っていたよりずっと楽しかった。
理永は、
小さく、丸みを帯びた、
色の濃い魔石を選んだ。
細い銀の枠で魔石を包み、
淡い金色が胸元で揺れる小さなペンダントにしよう。
歩くたびに光がこぼれ、
その横顔をやさしく照らすようなものを。
理永は、
机の上に細い工具を並べ始めた。
魔石をそっと手に取り、
銀のワイヤーを当ててみる。
淡い金色の光が、
朝の光を受けて静かに揺れていた。




