(2)想い
翌朝。
理永は、
窓辺に並べた魔石を眺めていた。
いくつかの魔石は、
淡い金色に光っている。
自分の魔力を込めたものだ。
けれど、
光るようになった以外、
特に変わったことはない。
「この魔石、何かに使えないかな……」
小さく呟くと、
近くにいた妖精が顔を覗き込んだ。
理永が魔石を手に取る。
すると、
別の妖精も寄ってきた。
精霊たちも、
興味を引かれたように集まってくる。
「これ、どうしたら使えるんだろう?」
問いかけても、
答えが返ってくるわけではない。
けれど。
妖精がひとつの魔石に触れ、
理永の手元を指し示した。
「こっち?」
理永は、
その魔石を持ち上げた。
何かを試してみようとして、
ふと手が止まる。
窓から差し込む朝の光が、
魔石の中で淡く揺れていた。
その光を眺めていると、
なぜか由良の顔が浮かんだ。
胸の奥が、
きゅっと締めつけられる。
昨日、別れたばかりなのに。
それなのに、もう会いたいと思ってしまう。
由良は今、
何をしているのだろう。
もう朝食を済ませただろうか。
それとも、
仕事に出かける支度をしているのだろうか。
由良の声や、
ふとしたときに見せる表情まで思い出されて、
理永の指先が魔石を包むように強くなる。
気づけば、
由良のことばかりを考えている気がする。
考えるたびに胸が温かくなるのに、
同時に、そばにいられない寂しさが込み上げてきた。
理永は、
ふと考えた。
自分の周りには、
いつも妖精や精霊がいる。
困ったときには助けられ、
何かを知りたいときには、
彼らがきっかけをくれることもある。
けれど。
由良の家では、
どうなのだろう。
普段から妖精や精霊がいるのかどうかも、
理永は知らなかった。
由良がいつも、
どんなふうに暮らしているのか。
自分の知らない時間を、
どう過ごしているのだろう。
考えてみると、
知らないことばかりだった。
もっと由良のことを知りたい。
由良が見ているものを、自分も見てみたい。
そんな思いが膨らむほど、
理永は自分の知らない時間が惜しくなった。
「……由良にも、魔石が使えたら便利よね」
ぽつりと呟いてから、
理永は手の中の魔石を見つめた。
自分の魔力を込めた魔石。
これを使って、
由良の役に立つものが作れたら。
由良が困ったとき、
少しでも支えになれたら。
次に会うとき、
渡すことができるだろうか。
そう考えると、
まだ何もできていないのに、
少しだけ心が弾んだ。
頬がわずかに熱くなり、
理永はそれを隠すように魔石へ視線を落とす。
由良がこれを受け取って、
嬉しそうに笑ってくれたら。
その姿を想像するだけで、
胸の奥に柔らかな光が灯った。
理永は、
魔石を窓辺に置き直した。
「……よし。試してみよう」
今度は、
何に使えるかを考えながら。
由良の役に立つものを作るために。
妖精が嬉しそうに周りを飛び回り、
精霊たちも、
その様子を見守っていた。




