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『救済ではなく、継承の物語』― アストラル継承記 ―  作者: 龍の末裔
■第67章|『揺らぎ』
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(2)想い

翌朝。


理永は、

窓辺に並べた魔石を眺めていた。


いくつかの魔石は、

淡い金色に光っている。


自分の魔力を込めたものだ。


けれど、

光るようになった以外、

特に変わったことはない。


「この魔石、何かに使えないかな……」


小さく呟くと、

近くにいた妖精が顔を覗き込んだ。


理永が魔石を手に取る。


すると、

別の妖精も寄ってきた。


精霊たちも、

興味を引かれたように集まってくる。


「これ、どうしたら使えるんだろう?」


問いかけても、

答えが返ってくるわけではない。


けれど。


妖精がひとつの魔石に触れ、

理永の手元を指し示した。


「こっち?」


理永は、

その魔石を持ち上げた。


何かを試してみようとして、

ふと手が止まる。


窓から差し込む朝の光が、

魔石の中で淡く揺れていた。


その光を眺めていると、

なぜか由良の顔が浮かんだ。


胸の奥が、

きゅっと締めつけられる。


昨日、別れたばかりなのに。

それなのに、もう会いたいと思ってしまう。


由良は今、

何をしているのだろう。


もう朝食を済ませただろうか。

それとも、

仕事に出かける支度をしているのだろうか。


由良の声や、

ふとしたときに見せる表情まで思い出されて、

理永の指先が魔石を包むように強くなる。


気づけば、

由良のことばかりを考えている気がする。


考えるたびに胸が温かくなるのに、

同時に、そばにいられない寂しさが込み上げてきた。


理永は、

ふと考えた。


自分の周りには、

いつも妖精や精霊がいる。


困ったときには助けられ、

何かを知りたいときには、

彼らがきっかけをくれることもある。


けれど。


由良の家では、

どうなのだろう。


普段から妖精や精霊がいるのかどうかも、

理永は知らなかった。


由良がいつも、

どんなふうに暮らしているのか。


自分の知らない時間を、

どう過ごしているのだろう。


考えてみると、

知らないことばかりだった。


もっと由良のことを知りたい。

由良が見ているものを、自分も見てみたい。


そんな思いが膨らむほど、

理永は自分の知らない時間が惜しくなった。


「……由良にも、魔石が使えたら便利よね」


ぽつりと呟いてから、

理永は手の中の魔石を見つめた。


自分の魔力を込めた魔石。


これを使って、

由良の役に立つものが作れたら。


由良が困ったとき、

少しでも支えになれたら。


次に会うとき、

渡すことができるだろうか。


そう考えると、

まだ何もできていないのに、

少しだけ心が弾んだ。


頬がわずかに熱くなり、

理永はそれを隠すように魔石へ視線を落とす。


由良がこれを受け取って、

嬉しそうに笑ってくれたら。


その姿を想像するだけで、

胸の奥に柔らかな光が灯った。


理永は、

魔石を窓辺に置き直した。


「……よし。試してみよう」


今度は、

何に使えるかを考えながら。


由良の役に立つものを作るために。


妖精が嬉しそうに周りを飛び回り、

精霊たちも、

その様子を見守っていた。




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