(2)いつもの時間
それから。
理永は、
ほとんど毎日のように、
由良の家へ通っていた。
朝、庭へ出る。
伸びた草を抜き、
野菜の様子を見て、
土を整える。
最初の頃は、
庭の手入れをするためだった。
けれど。
いつの間にか、
それだけではなくなっていた。
野菜や花を持ってくる日もある。
パンを焼いて持ってくる日もある。
何も持たずに来る日もあった。
「今日は、何をする?」
理永は、
少し考えた。
「えっと……なんとなく、来ちゃったから」
「そうか」
由良は、
それ以上は聞かなかった。
ただ。
「茶を入れるけど、飲むか」
「うん」
いつものように、
二人で庭に出た。
理永が土をいじっている間、
由良は少し離れたところで、
伸びた枝を切っている。
ミケは、
二人の間を行ったり来たりしていた。
妖精たちも、
いつの間にか庭へ集まっている。
精霊の気配も、
以前より近くなっていた。
そんな時間が、
いつの間にか当たり前になっていた。
しばらくして。
理永の手が、
止まった。
「……」
小さく息を吐く。
土を掘る動きが、
少しずつ遅くなっていた。
由良は、
すぐに気づいた。
「そろそろ休憩しよう」
「ん?」
「少し休め」
「まだ平気だよ。大丈夫」
そう言ったものの。
理永は、
その場にしゃがんだまま、
肩の力を抜いた。
由良が近づいてくる。
そして。
何も言わず、
理永の手を取った。
「……由良?」
手のひらから、
温かなものが流れ込んでくる。
腕を伝い、
ゆっくりと身体の奥へ。
いつもの、
静かな神聖力。
理永は、
もう驚かなかった。
目を閉じる。
「……あったかい」
「そうか」
しばらくして。
身体に残っていた疲れが、
少しずつほどけていく。
「……楽になった」
「なら、もう少し休め」
「うん」
由良は、
理永の手を離した。
けれど。
理永は、
すぐには手を引かなかった。
ほんの少しだけ。
その温もりが残っているような気がして。
「……由良」
「ん?」
「ありがとう」
「礼はいらない」
そう言って、
由良は立ち上がる。
そして。
理永が立ち上がるのを、
待っていた。
二人で、
また庭へ戻る。
さっきまでと同じ庭。
同じ朝。
けれど。
理永は、
少しだけ嬉しかった。
疲れたことに、
由良が気づいてくれたことが。




