(5)魔石を探しに
約束の三日後。
理永は由良と一緒に森を歩いていた。
向かう先は、川の上流。
以前、魔石を見つけた場所。
「この先です」
理永が前を指差す。
「ああ」
由良は理永の少し前を歩いている。
足元の悪い場所では、自然と歩く速度を落とした。
理永もその後ろをついていく。
しばらくすると。
木々の向こうから水の音が聞こえてきた。
「……川」
やがて。
森が開ける。
川が岩の間を流れていた。
その先には崖がある。
以前も二人で訪れた場所。
理永は周囲を見回した。
「この辺りだったと思うんだけど……」
「魔石を見つけたのは?」
「はい」
理永は川辺へ近づいた。
しゃがみ込み、
水の中を覗く。
いくつかの石が、
水に濡れて光っている。
けれど。
「……違う。これじゃない」
「そうか」
理永は、
立ち上がった。
少し上流へ向かう。
その途中。
「あっ」
足を止めた。
「どうした?」
「……あそこ、見て」
崖の下。
岩と岩の間に、
小さな洞窟が見えている。
以前は、
気づかなかった場所だった。
「入ってみますか?」
由良が、
洞窟を見る。
「暗いな」
「ここなら、
中に魔石があるかもしれません」
「行くか」
理永が、
少しだけ由良を見る。
「足元に気をつけろ」
「はい」
由良が先に入る。
理永も、
その後をついていった。
洞窟の中は、
ひんやりとしていた。
外の光が届かなくなると、
辺りは急に暗くなる。
けれど。
理永は、
魔力の気配を探した。
「……」
目では、
まだ何も見えない。
それでも。
岩の奥。
何かが、
小さく揺れている。
「……由良」
「ん?」
「こっちに、
何かある気がします」
由良が、
理永の隣へ来る。
「魔石か?」
「まだ分かりません」
二人で、
岩の隙間を覗き込む。
そこには。
淡い光を宿した石が、
いくつか転がっていた。
「あっ……ありました」
理永が、
嬉しそうに呟く。
ひとつ拾い上げる。
淡く透き通った光。
「前に見つけたものと、
同じです」
「そうだな」
理永は、
もう一つ拾った。
さらに奥にも、
大小いくつかある。
「わぁ……たくさんありますね」
「必要なだけにしておけ」
「はい」
理永は、
小さな籠へ魔石を入れていく。
ひとつ。
またひとつ。
その様子を、
由良が静かに見ていた。
「……十分か?」
「もう少しだけ」
「分かった」
理永は、
奥へ進む。
その手には、
拾ったばかりの魔石。
淡い光が、
洞窟の暗闇の中で揺れていた。
その光を見ながら。
理永は、
なぜか少しだけ嬉しかった。
魔石が見つかったからなのか。
それとも。
隣に、
由良がいるからなのか。
けれど、ふと。
理永は、由良を見る。
どうして。
由良は、こんなにも魔力について詳しいのだろう。
どうして。
これほど長い時間を生きているような言葉を、
時々口にするのだろう。
それに――
どうして。
自分の魔力に、あれほど自然に触れられるのだろう。
「……由良」
「ん?」
呼んだだけだった。
けれど。
理永は、少しだけ由良を見つめた。
まだ知らないことが、
たくさんある。
由良という人のことを。
その力のことを。
そして――
その長い時間のことを。
「……なんでもないです」
「そうか」
由良は、それ以上聞かなかった。
ただ。
いつものように、
静かに理永の隣にいた。
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