(4)魔力操作
理永は、
窓辺に並べた魔石を眺めていた。
どれも、
自分の魔力が入っている。
魔石は淡い光の中に、
ほんのりと金色が混じっていた。
理永は、
そのうちのひとつを手に取る。
「……」
魔石の中にある魔力へ、
意識を向けた。
自分の魔力。
それは、
ちゃんと分かる。
以前は、
ただ入れるだけだった。
けれど。
今は――
魔石の中にある魔力が、
どこにあるのか。
少しだけ、
感じ取れる。
理永は、
そっと指先を魔石へ添えた。
入れるときとは、
少し違う。
魔石の中にあるものを、
こちらへ引く。
そんな感覚。
「……戻せるのかしら」
試してみる。
ほんの思いつきだった。
魔石の中から、
淡い金色の光が動いた。
指先へ。
そこから、
手のひらへ。
「……」
理永は、
目を見開いた。
入ってくる。
由良の神聖力を受けたときと、
少し似ていた。
外にあったものが、
自分の中へ入ってくる。
ゆっくり。
静かに。
理永は、
その感覚を追った。
手のひらから、
腕へ。
そして――
身体の中へ。
魔力が、
戻ってくる。
「……戻ったわ」
理永は、
自分の手を見つめ驚いた。
魔石の中にあった魔力は、
減っていた。
その分だけ、
自分の中に戻っている。
「……こんな事までできるなんて」
誰に言うでもなく、
呟いた。
もう一度。
今度は、
少しだけ多く。
魔石の中から、
魔力を引く。
淡い金色の光が、
ゆっくりと手のひらへ集まる。
そのまま、
身体の中へ。
「……」
理永は、
静かに目を閉じた。
不思議だった。
魔石へ入れることは、
分かっていた。
けれど。
入れたものを、
戻すなんて。
そんなことを考えたことはなかった。
魔力は、
使うもの。
あるいは、
魔石へ入れておくもの。
それだけだと思っていた。
けれど――
「まぁ、戻せてもね」
理永は、
魔石を見つめた。
「とりあえず、置いておけますか」
魔力を戻して空になった魔石へ、
自分の魔力を入れる。
魔力が必要になることも、
もしかしたらあるかもしれない。
理永は、
もう一度魔石を手に取った。
今度は、
迷わなかった。
淡い金色の魔力が、
手のひらから魔石へ流れていく。
少し。
また少し。
魔石の中に、
自分の魔力が溜まっていく。
そして。
理永は、
その魔力をまた自分の中へ戻した。
何度か繰り返す。
入れる。
戻す。
入れる。
戻す。
そのたびに、
感覚が少しずつはっきりしていく。
自分の魔力が、
どこにあるのか。
どう動かせばいいのか。
少しずつ。
理永は、
それを覚えていった。
やがて。
魔石を机へ置く。
「……面白いわね」
理永は、
小さく笑った。
そして――
ふと、
手を見た。
その手には、
まだあの感覚が残っている。
由良の手。
あのとき、
自分の中へ入ってきた神聖力。
あの感覚がなければ。
きっと、
魔石の中の魔力を戻そうなんて、
思わなかった。
けれど。
理永は、
そこまで考えなかった。
ただ。
魔石をひとつ、
窓辺へ戻す。
そして。
「……」
少しだけ、
考える。
もう、
魔力の動かし方は分かっている。
それでも。
なぜか。
明日は――
由良と川上へ行く
「……由良」
また会える。
そう思うと、 なぜか少しだけ――
嬉しかった。




