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『救済ではなく、継承の物語』― アストラル継承記 ―  作者: 龍の末裔
■第64章|『二人の間』
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(2)気づき

理永が、魔石へ魔力を流している。


その様子を、

由良は少し離れた場所から見ていた。


以前とは、明らかに違う。


魔力を集める動きに、迷いがなくなっている。


魔石へ流すときも、力が乱れていない。


淡い金色の光が、

静かに魔石の中へ入っていく。


由良は、それを見つめていた。


もう。

魔力の扱いを、教える必要はない。


理永自身が、

その感覚を掴んでいる。


由良には、

それが分かった。


けれど。

理永は、いまだに何も言わない。


顔を合わせても由良は、そのことについて何も聞かなかった。


――――――――――――――――――――


理永が、街から戻ると魔石を並べる。


妖精たちが、

その周りへ集まっていく。


「……」


由良は、

その光景を遠くから眺めていた。


以前なら。


魔力をどう動かすのか。


どこへ流すのか。


ひとつずつ、

教えていた。


けれど。


以前のように、

ひとつずつ教えることは……もうない。

そう思うと、少しだけ寂しかった。


それでも。


理永は変わらず、

自分のところへ来る。


魔石の話をする。

花の話をする。

ミケの話をする。


そして。


あの力を、

もう一度と言う。


由良は、

それを拒まなかった。


理由を、

聞くこともしなかった。


必要だから来るのか。


それとも。


別の理由があるのか。


そんなことは、

考えなかった。


ただ。理永が会いに来る。

差し出された手を、

受け取る。

それが今の由良の幸せだった。



由良は、

窓の外を見る。


森の木々が、

風に揺れている。


その向こうには、

理永が暮らす家がある。


そして。


理永は、きっと来る。

由良は、そう思っていた。


だから。

もう教えることがなくても。


理永が望むなら。


この手を、

離す理由はなかった。




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