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『救済ではなく、継承の物語』― アストラル継承記 ―  作者: 龍の末裔
■第64章|『二人の間』
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(1)魔力の扱い

それから。


理永は、

朝から庭の手入れをしていた。


伸びた草を整え、

畑の野菜を収穫する。


採れた野菜を籠へ入れると、

理永は街へ向かった。


必要なものを買い、

家へ戻る。


そして。


理永は、

空の魔石を手にした。


以前なら、

魔力を入れるだけでも、

少し時間がかかった。


けれど。


今は――


「……」


手のひらに、

魔力を集める。


淡い金色の光が、

指先へ集まっていく。


そのまま、

魔石へ。


すっ。


魔力が、

魔石の中へ入っていった。


「……入った」


しかも。


ほとんど、

意識する必要もない。


理永は、

もう一つ魔石を手に取った。


同じように、

魔力を流す。


すぐに、

淡い光が宿った。


「……」


理永は、

少しだけ首を傾げた。


前より、

ずっと簡単だった。


魔力がどこにあるのか。


どう動かせばいいのか。


以前よりも、

はっきり分かる。


それを見ていたのは、

理永だけではなかった。


窓辺に、

妖精たちが集まっている。


いつの間にか、

数が増えていた。


小さな身体を寄せ合いながら、

魔石を覗き込んでいる。


精霊たちも、

近くにいた。


いつもより、

少しだけ賑やかだった。


「……どうしたの?」


理永が尋ねる。


妖精の一人が、

魔石へ近づいた。


その光へ、

小さな手を伸ばす。


触れることはない。


けれど。


嬉しそうに、

笑っている。


「……これが好きなの?」


妖精が、

こくんと頷いた。


理永は、

魔石を見る。


淡い光。


その中に、

ほんのりと混じる金色。


「……そう」


理永は、

もう一つ魔石を手に取った。


魔力を入れる。


淡い金色の光が、

また宿る。


すると。


妖精たちが、

一斉に近づいてきた。


精霊たちも、

静かにその光を見つめている。


どうやら。


自分の魔力は、

妖精や精霊たちに好かれているらしい。


「……私もみんなのこと好きよ」


理永は、

小さく笑った。


けれど。


嫌ではなかった。


むしろ。


窓辺に集まった妖精や精霊たちを眺めながら、


「……綺麗ね」


そう呟いた。


魔石の中で、

淡い金色の光が揺れている。


その周りには、

妖精たちが集まっている。


理永は、

もう一つ魔石を手に取った。


そしてまた。


自分の魔力を、

静かに流し込んだ。


淡い金色の光が、

魔石の中で揺れる。


理永は、

その光をしばらく見つめていた。


「……」


ふと。


由良のことを思い出す。


以前、

由良から受け取った力。


あのときも。


自分の中へ、

静かに力が入ってきた。


温かくて。


不思議なくらい、

身体に馴染んだ。


今なら、

少しだけ分かる。


魔力が、

身体の中をどう流れるのか。


魔石へ入れるとき、

どんな感覚なのか。


だからこそ。


「……あれは、何だったんだろう」


理永は、

小さく呟いた。


自分の魔力とは、

明らかに違う。


けれど。


拒むこともなかった。


むしろ。


初めて触れたはずなのに、

ずっと前から知っていたような。


そんな感覚だった。


「神聖力……」


以前、

由良はそう言っていた。


けれど。


それだけなのだろうか。


神聖力とは、

一体何なのか。


どうして由良は、

あんな力を持っているのか。


そして――


どうして自分は、

あれほど自然に受け入れられたのか。


理永は、

自分の手を見る。


けれど。


答えは、

分からなかった。


「……由良って、何者なんだろう」


その言葉は、

誰にも届かない。


窓辺では。


妖精たちが、

金色の魔石を囲んでいる。


理永は、

もう一度だけ魔石を見る。


今はまだ。


分からないことの方が、

多かった。





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