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『救済ではなく、継承の物語』― アストラル継承記 ―  作者: 龍の末裔
■第62章|『可能性』
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(9)相談

その日も。


理永は、いつものように魔力石をいくつか並べていた。


最近は、石を眺めるだけではなく。


中にある魔力が、

どのくらい残っているのか。


そんなことまで、

少しずつ気になるようになっていた。


けれど。

分からないことの方が多い。


理永は、一番近くにあった石を手に取った。


「……うーん」


しばらく眺めて。


ふと思い出す。


――由良なら。

沢山の事を知っているし、

魔力石のことも、

自分よりずっと知っているかも。


そう思うと。

理永は、机の上に置いてあった紙を引き寄せた。


最近では。

ミケが手紙を届けてくれることにも、

すっかり慣れていた。


『魔力石について、聞きたいことがあります』


そう書いて。

少し考える。


『魔女は、魔法を使うんですよね?』


そこまで書いてから。


理永は首を傾げた。


自分も魔女だと分かっている。


けれど。

魔法を使った記憶はない。


正確には。

使い方が分からないのだ。

――もしかすると、無意識に使っているのかもしれない。


妖精や精霊がいれば、

困ることがなかった。


水が欲しければ水が現れる。

火が必要なら火が灯る。

暗い夜道を照らしてくれる。

重いものがあれば、

いつの間にか動いている。


だから。

魔法というものを、

実際に使ったことがあるのか。


理永には分からない。


思い切って、


『私、魔女なのに魔法の使い方を知らないんです』


そう書いてから。


少し恥ずかしくなった。


けれど。

せっかくなので、そのまま続ける。


『本には、魔力を使って魔法を発動させると書いてありました』


『でも、魔力をどうやって動かすのかは分かりません』


『魔力石の魔力は感じられるんですけど』


そこまで書いて。


理永は、もうひとつ疑問を付け足した。


『魔力って、使うことしかできないんでしょうか?』


書き終える。


「……これでいいかな」


紙を折る。


いつものようにミケに託すと。




しばらくして。


返事が届いた。


『魔女が魔法を使うこと自体は間違っていない』


『だが、魔法の使い方を知らない魔女がいても、不思議ではないだろう』


理永は、その一文を読んで。


少しだけ笑った。


「……そうなの?」


続きには。


魔力についての簡単な説明が書かれていた。


魔力は、

決まった形を持つものではない。


魔法を使う時には、

身体の中にある魔力を外へ出し使用する。


けれど。


それ以上のことは、

あまり詳しく書かれていなかった。


理永は、その文章を何度も読み返す。


「……外へ、出す?」


小さく呟く。


そして。

自分の胸元へ手を当てた。


魔力。

ずっとそこにある。


初めて感じた、

あの温かな感覚。


それを。

外へ動かそうとする。

が……


「んー。ぜんぜんわからないわ」


理永は少しだけ考えてから、

紙を取り出した。


『由良は、魔力を動かす感覚が分かりますか?』


しばらくして。


返事が来る。


『分かる』


短い答えだった。


理永は、

その紙を見つめる。


「……そっか」


それなら。


ひとつ、

頼んでみてもいいかもしれない。


『今度会った時に、少しだけ教えてもらえませんか?』


書いてから。


理永はペンを止めた。


「……教えてもらう、っていうのも変かな」


魔法そのものを教えてほしいわけではない。


ただ。


自分の中にある魔力が、

どう動くものなのか。


それを知りたいだけだった。


けれど。


他に聞ける相手もいない。


理永はそのまま、

ミケに手紙を託した。


――――――――――――――――――――


その日の夜。


由良は届いた手紙を読んでいた。


最後の一文。


『今度会った時に、少しだけ教えてもらえませんか?』


その文字を、

しばらく見つめる。


由良は、

小さく息を吐いた。


「……そういうことか」


理永はまだ。


自分の魔力がどう動いているのか、

ほとんど知らない。


妖精や精霊がそばにいることで、

それを意識する必要もなかったのだろう。


なら。

少しくらいなら。


由良は、

紙を丁寧に折った。


「……分かった」


次に会った時。


ほんの少しだけ。


理永に、

その感覚を知ってもらえばいい。


それ以上は。


理永自身が、

見つけていけばいいのだから。





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