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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第19章 卵の欠片

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悪党達

デグ視点です。


人によっては気分の悪くなる描写があります。ご注意下さい。

 サナの天幕にファンテと共に入ると、エレヒト殿は既に待っていた。エレヒト殿の副官は戦死したと聞いている。外ではクロス殿が敵軍が集積所に残した物資を回収し整理している兵に指示を出していた。


「ご苦労だったなデグよ。被害はどうかの?」


「死んだのは五十ぐらい、怪我はその三倍はいる」


 自分のかわりにファンテが淀みなく答える。エレヒト殿の方は死者約百人。負傷者は約三百人。敵軍がウラヌスの丘だけで千人近く死んでいる事から見て勝ちはした様だ。


 そして敵軍の死者は落ちて行く過程で更に増えるとファンテは言う。どんな勇猛な兵でも逃げる時はゴブリンにも討たれてしまう程、弱ってしまうそうだ。


「勲一等はマレーネ、いや[ピヨちゃん]よな」


 決戦兵力として機能したコカトリスは外で、のんびり草を喰んでいた。魔獣使いのマレーネに世話をされている姿は蛇の尾があるとはいえ、大きな鶏にしか見えない。


「部隊を再編し追撃を」


 エレヒト殿がサナに進言したが、サナは却下した。一応百人隊を二つ追撃に出す許可はしたが、深追いは禁じると命じた。


「勝ちはしたが、こちらの損害も大きいのでな……相手が渡河して逃げるなら、見逃す事とする」


 サナの近くにいた司祭や神官は怪我人の治療にあたっている。神聖魔法ではなく傷口を洗い糸で縫う、薬草を塗る事が主な治療法。普通の神官は効率良く使っても、日に五〜六回治癒魔法を使うのが精一杯なのだから。日に何度も治癒魔法を使われた聖女レイカ様とは違う。


 そして軍議で近くの村まで進軍し、陣を張り敵軍を監視する事が決まった。死者への祈祷は行う余裕がなく、出来る範囲でしか行われない。


「我が祈祷すれば、不死者アンデッドで一軍が作れてしまうが、不味まずかろう?」


 軍議の後、サナが自分とトゥフにだけに不気味な冗談を告げた。


☆☆☆


「追撃隊帰還。敵軍は渡河し退却の模様」


 翌日。


 村の近郊で陣を張った自分達に報告が来た。サナは捕虜は取るなと命じていたが、降伏した兵を奴隷にする為、縄で繋いでいる傭兵がいる。村外れでは奴隷の焼印を押す為の火が焚かれていたが、見て見ぬふりをしていた。厳しく取り締まれば、首を刎ねてしまうからだ。


 また、隠れて悲鳴とも嬌声ともつかぬ声が上がっている。至高神信者はエルフの価値観が強く、男女は共に戦場に駆り出される。女兵士で生きて捕らえられた者は悲惨だ。司祭なども見習いなら容赦ない。


 啓示を受けていれば、服従の宣誓さえすれば例外的に捕虜として扱われる。神の怒りを買うのは、どの神であろうと恐ろしい。ある程度の街まで行けば、保護手数料みのしろきんと引き換えに教団に引き渡される。それまでは回復役としてき使われ使われるが、服を剥かれ焼印を押し当てられるよりはマシだろう。



「エレヒト。兵二百と負傷者四百。傭兵達から買い取った奴隷達を任せる。この領を治める伯爵と強力して、この場で睨みをきかせよ」


「私がですか?」


「旨味のある立場じゃねぇか。なんなら俺が変わるぜ。戦利品ドレイ一財産ひとざいさんってな」


 生真面目なエレヒト殿にファンテが利を説く。財を持った近衛騎士なら下級爵位も狙えるだろう。エレヒト殿の悲願は没落しつつある自家の再興。ファンテはチャンスだと暗に告げているのだ。


「デグよ。我らは兵一千で陛下の元に取って返す。ファンテ。そなたは退却した敵軍が去り次第、兵二百で渡河し風見鶏男爵領を焼いてまいれ」


「!」


「そなた直参の傭兵共なら可能であろう?追加で金なら払う」


「かぁ~。確かに火付けに略奪ならお手のもんだが……いいのか?」


 風見鶏男爵は放っておいても、いや放って置きさえすれば味方に寝返る。だが、もし火を放ち略奪をすれば敵のままになるかも知れない。それをサナだけの判断で決めても良いのだろうか?


「敵軍の集積地に遠慮はいらぬ。だが欲をかき、引き際を誤るでないぞ」


「サナ将軍。あんた悪党だな?」


「否定はせぬよ」


 エレヒト殿は眉を顰めつつも、黙って天幕を出た。今は傭兵達が好き勝手にしている捕虜を奴隷として定額で買い取るそうだ。ファンテは[狂人茸]の主だった面々を集める為、招集をかけている。サナが切った傭兵手形は充分な金額らしい。


「デグ。そなたには捕らえた貴族の子女を遣わす。獣欲を晴らし英気を養え。戦場の事。妻子など気にするでない」


 日の暮れぬ内に自分の天幕に連れてこられたのは、肩への焼印も痛々しいクリーナ聖王国の子爵の娘。聞けば至高神司祭見習いとして従軍していたそうだ。サナは欲望を刺激し、人を使役するのが上手い。自分も分かっていても抗えない。


 その日はその焼印の女を相手に英気を養った。清楚で乙女だった娘も一刻もしたら、自分の天啓の為か楽しんでいた様だ。サナだけじゃない。自分も含めて皆、悪党だ。



クリーナ聖王国軍

推定死傷者並びに行方不明者3200名以上。

事実上壊滅せしめり。

ジナリー王国軍

死者150名強、負傷者450名強。

内50数名は神聖魔法により早期治療可

辛勝。


トゥフ記。


私の黒歴史がまた1ページ。

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