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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第19章 卵の欠片

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入城と退場

デグ視点です。

タイトルは誤植ではないですよ。

 ファンテは数日前に兵二百を纏めて疾く去り、エレヒト殿は逆に村に陣取り伯爵と交渉の為の使者を出した。


 サナを始めとする自分達は街道を河に沿って移動し始めたばかりだったが、後方から伝令の急使が来た。数日前に分かれたばかりのファンテからの使者だ。


 部隊を止めサナと話を聞く。敵軍に何か動きがあったのだろう。だが急使は予想外の事を告げた。


「ファンテ隊。風見鶏城に無血入城。ただ男爵一家は撤退した敵軍に子供まで処刑され広場に晒されておりました」


「酷い事を」


 珍しくトゥフが呟いた。サナは一瞬の思案顔をしたものの、直ぐに指示を出す。


「デグよ。男爵領を押さえる。ファンテには『我らが参るゆえ、もし敵軍が来ても支えよ』と使者を出せ」


 自分達は取って返し、まだ冷たい河を渡った。馬車はファンテに対岸に用意させこちら側に残す物は渡河しない酒保商人に売り払う。ここ数日楽しんだ焼印の子爵令嬢は金貨3枚になった。娼館で稼いで手紙を出せば、実家が買い取ってくれるかも知れないと別れ際に告げた。


☆☆☆


「待ってましたぜ。デグの旦那」


 自分が[昇龍号]に乗って城門を潜ると、ファンテ達が出迎えてくれた。男爵一家を処刑して城に居た至高神司祭達は、ファンテ隊が入城すると同時に全員吊るしてしまったらしい。


「城門を喜んで開く様な節操のない司祭など生かしといても害にしかならねぇ」


 司祭や神官を殺すと神罰があたるとも聞くが、傭兵稼業の長いファンテ曰く、神官や司祭なら何人も屠ってきたが問題ないそうだ。


「中には殺すとヤバい()()も居ますがね。聖女レイカ様の時は肝が冷えましたよ」


 と、ファンテは笑ったが。


 サナは直掩隊を連れて大地母神殿で男爵一家の葬儀を行なっている。サナ自身は体調不良を理由に部屋に引き篭もり儀式は行わないそうだ。もしサナが弔いの儀式を行なえば死者は不死者アンデッド化してしまう。


「敗走した敵軍は瓦解。ドワーフの山脈に向かった。備蓄してあった大量の物資は城に運ばせてる。でも勝ち過ぎだぜ旦那」


 サナには言いづらい事をファンテは自分に告げた。補給と帰路が断たれた敵本隊は死に物狂いで攻め寄せてくる可能性がある。風見鶏城と街でその暴風が凌げるのか?と。


「使者を送り、『通過を見逃す』と伝えれば良いとサナが話していたが……」


「敵の御貴族様が『はい。そうですか』とはいかねえでしょうが」


「その為の男爵の葬儀らしい」


 サナの考えは自分には分からない。が、ファンテは、それで納得したらしい。籠城戦の準備を百人長達と詰めるという。日が暮れるまで自分はうまやで[昇龍号]の世話をしていた。


 千人長、近衛騎士、などと言われても出来る事は戦斧を振るうぐらい。ただ前よりは色々な考えが浮かぶ様になった。ただ取り留めのない考えの中で、思い浮かぶのはアリスの事ではなく、聖女レイカ様の事だった。


☆☆☆


 夜中。


 爆発音で目が覚めた。悲鳴と怒声。サナが執務に使っている城の広間の方だ。兄者の剣と戦斧を持って走る。途中血塗れの伝令兵ニルトが倒れていた。トゥフが止血を試みている。


「何があった?」


「サナ様を狙った刺客達が……」


 どうやら刺客の一人が[魔族殺し]を使って自爆したらしい。知らぬとはいえ馬鹿な事を。サナは[首だけ聖女]は、そんな事では滅んだりしない。


「被害は?」


「デグよ。そこは我が無事か?と心配するところぞ」


 ぼんやりと光ったサナの首が、ふわりと飛んでくる。どうやらスケルトンウォリアー製の胴体部分は吹き飛ばされてしまったらしい。困った。自分達は良いが、爆発音を聞いて集まる者に不死者アンデッドとバレるのはマズイ。


「取り急ぎ、トゥフの部屋に」


「うむ。[隠形]は使っておるがの。広間で城の事務官と伝令兵が数人が殺られておる。その臆病者は真っ先に逃げたから背に刺さった短剣だけで済んだがの」


「大地母神よ。この者の毒を消し、致命傷を癒し給え」(使8残10)


 サナが神聖魔術を使った。だが伝令兵ニルトは、呻きはするが倒れたままだ。


「血が足りぬが、死にはせぬ。部屋まで参ろうぞ。デグよ」


 自分達はその場を去った。襲って来た刺客はサナの魔術で一掃されているそうだ。だが話は簡単には収まらなかった。


「サナ様が爆発に。吹き飛ばされて首だけになるのを見た」


 と、言い出す神官見習いや侍女がいたからだ。サナの周りには昼夜を問わず人がいたのが仇になった。ここで何事もなかった様にサナが出てゆくのは無理がある。


「デグよ丁度良い。少し早いが我は表舞台から降りるとしようぞ」


 サナはそう語り……笑った。どうやら前から何か計画があったらしい。ただトゥフは眉を顰める。


「無理があります。敵軍の動きもありますし、もし不死者アンデッドとして討伐などとなったら!」


「その時は消ゆるまで」


 自分は、そうなったら約束どおり、サナと共に旅に出ると告げた。サナは再び笑う。何故か楽しそうに見えるのは気のせいだろうか?


「トゥフには舞台に立ってもらう。デグよ。まだしばらくは英雄を演じてくれぬか?」


 英雄を演じているつもりは無かったが、確かに何かの役割を担わされている実感はあった。それも分不相応な役割を。


 それでも自分は黙って頷いた。必要とされるならば、それを演じるのも悪くないと気づいたからだ。少なくとも村の役立たず。愚鈍なデグだった時よりはマシだろう。


 兄者から、もらった剣が僅かに鳴った気がした。


サナがいなければニルトは死んでましたね。

冷夏やサナで感覚が狂いがちですが、普通の神官、司祭は平均6の神力しか持ちません。


私の黒歴史がまた1ページ。

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