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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第19章 卵の欠片

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緒戦 ジナリーサイド

デグ視点です。

「デグよ。ウラヌスの丘を押さえよ」


 夜。


 天幕に集められた自分達の前で、サナがそう告げた。天幕内にはサナとそれを補佐するトゥフ。ハーフダークエルフのマレーネ。直掩百人長のクロス殿。千人長である自分と同じく千人長のエレヒト殿。千人長のそれぞれの副長2人の8人が居た。


 自分の副長は傭兵隊長のファンテ。「狂人茸隊」とは縁があるらしい。食い詰めていた以前とは違い人数は直属で100名を越える。他の傭兵達にも顔が利く傭兵の纏め役。自分は実質ただの飾りだ。


「丘ねぇ〜。て、事はクリーナの奴らは渡河済みか?」


「うむ。少し遅かったようだな」


「数は?」


「五千と言ったとこかの」


 ファンテの問いにサナは問題ないかの様に答える。が、トゥフ以外の面々は自分も含め眉を顰めた。河を盾にすればともかく、平地で倍する敵と争うのは困難だ。


「で、この丘じゃ。ここに防御陣をひけば、街道に睨みが利く」


 サナの説明では本隊と同じく時間は味方だと言う。こちらは守っていれば良いのだと。だがその為には拠点が必要になるらしい。


「デグ、ファンテ。頼むぞ。エレヒト。丘を確保出来次第、街道を押さえるからの」


 自分とファンテは了承して天幕を出た。エレヒト殿は先陣をもらえぬ事が不満であるようだった。馬鹿らしい。後でも先でも戦う事に違いはないだろうに……。


☆☆☆


早朝。


「デグの旦那。大将が先鋒百人隊で出るのはお薦め出来ねえ」


「自分に指揮は取れない」


「……必ず引き笛には従って下せぇ。ご武運を」


 ファンテの馬が自分から離れて、部隊の中程に戻った。騎乗大蜥蜴に乗った自分の周りには傭兵には珍しい数騎の騎馬。それ以外は皆、かちでそれぞれの得物を構えている。


 後から打ち鳴らす太鼓の音が聞こえ、自分が「前進!」と叫んだ。部隊は前進し、しばらくして問題なくウラヌスの丘を登り始めた。


すぐに伝令が来る。


「敵軍が約一千が急進してきます」


 自分は打ち合わせ通り先鋒百人隊を急かして丘に登った。敵もほぼ同時に現れる。タイミングを計った様に[昇龍号]が吠えた。


[咆哮](使1残19)


 味方の馬も含め近くの馬が全て棹立ちになる。騎乗大蜥蜴が[咆哮]する事があると先に伝えてあった味方は何とか持ちこたえたが、敵には落馬する者もいた。馬に乗っていたからには貴族なのかもしれない。


「かかれ!」


 自分が叫ぶ。何故か他人が叫んでいるかの様に実感が湧かない。自分の率いる百人隊は丘を登りきった。丘を登ったからには後はおりるしかない。


[主デグ。戦斧を水平に構えて支えるだけで良い。後は任せよ]


 騎乗大蜥蜴の昇龍号が話かけてきた。レイカ様が竜桃様の治療をする際、共に竜の血を浴びた。それ以来話かけてくる動物の意思が分かる時がある。特に騎乗大蜥蜴とは会話が出来るレベルだ。


 自分は手綱から手を離し、戦斧を両手で水平に構えた。あぶみがあるとはいえ普段はこんな事はしない。


と。


 [昇龍号]が数人の敵兵の横を駆け抜けた。戦斧で両断された敵兵が転がる。人の体がチーズの様に抵抗なく切れてゆく。一騎打ちとか叫んだ敵の騎馬の横をすり抜けた。敵の騎士が両断され落馬する。


 退却の笛が鳴った。斧を構えるのを止め、手綱を手に取り踵を返す。敵が追ってきたが、第二、第三の百人隊が斬り込んでゆく。一度丘の上に戻った。先鋒百人隊のうち数人は負傷したが死者は少ない。


「デグの旦那。勝ち鬨を」


 自分が叫ぶと、兵士皆がそれに応えた。敵は逃げ去り、追撃で多くの兵を討った。どうやらウラヌスの丘は押さえられた様だ。


☆☆☆


「日暮れ迄に陣地を作れ!」


 傭兵達が手慣れた様子で穴を掘り、杭や柵を作ってゆく。運んできた資材からしてあり合わせの陣地だが、何もないよりはマシだ。ファンテによれば戦場での土木工事も傭兵には良くある仕事らしい。


 敵軍は部隊編成を変え約二千強づつの二軍に分けた。連れてきていた貴族が死んだ為、農民兵には脱走者も出ている様だ。


「敵地で脱走したって、村で捕まりゃ捕虜奴隷。野盗になっても冒険者の糧になるのがオチだろうによ」


 傭兵達がせせら笑う。サナに捕虜は取るなと言われた。こちらの方が兵数が少なく面倒を見る事が出来ないからだ。


 サナが本陣を丘の上に置いた。自分は丘の中腹に陣を張る。無傷のエレヒト殿の隊は街道に陣を張ったが少し前すぎる気がする。


「押し返されたら丁度良い。気にするな。明日は今日とは違い、持久戦となる。押し引きを誤るな。ファンテ」


 本陣に呼ばれた自分とファンテを前にサナが告げた。ファンテが短く返事をする。やはり兵の指揮は自分には期待されていない。


「デグは首を取られぬ様にな。されど敵は引きつけよ」


「サナ将軍。そいつは()()難題じゃねぇか?」


「そうだの。だが先手大将には必要なことよ」


 自分は黙って頷いた。自陣に戻ると百人長達に主な作戦を伝えた。兵士達の間では[昇龍号]が噂になっているらしい。あれは蜥蜴ではなく竜だと。後、自分の騎乗を人竜一体の騎乗術だと騎兵が述べたらしい。


[我も地竜のすえなればな。明日も暴れようぞデグ]


 世話をした[昇龍号]が、そう呟いた。



ねぇマドウ。騎乗大蜥蜴って吼えるの?喋るの?龍星号は静かだけど……。

(個体差だな。イザとなれば助けてくれるだろう)

むぅ。そうかぁ


(何故かレイカの前では猫を被っているが、[龍星号]も吼えるぞ。レイカも竜の血を浴びたから喋れもするが……)

[我は戦利品での貰われだからな。主に驚かれては困る。デグ殿に愚痴った事はあるが……]


私の黒歴史がまた1ページ。

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