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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第19章 卵の欠片

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お待たせしました。

ニルト視点です。

 俺は確信していた。晒し札は0。今しがた明かした、手持ち札も0。そして偶然にべにで[ガン付]された場の伏せ札も0。半月骨牌の最高の役[満月]は5倍役。銀6枚が30枚になる。これで俺は戦場に行かずに済む。


「惜しかったですね」


 夜啼鳥ナイチンゲールの少し低い声が響いた。明けた場札は「1」


「0」ではなかった。


 馬鹿な!確かにべにのついた[ガン札]だったはず。俺は場札の「1」を手に取った。裏返すがべにはついていない!


 と。


 夜啼鳥が手札を明かした。「0」だった。


 やられた!木札の[すり替え]とは……。このあまの技は[ガン付]だけじゃなかった。夜啼鳥は俺の技を返して寄越したのだ。恐らくは、()()()()()()あの一瞬の隙に。


 クソ。色香に迷って勝負への気が逸れた。全く持って、俺って奴は……。


 俺の手は1。夜啼鳥の手は5。勝負は夜啼鳥の勝ちだ。明確な証拠を示し、証明しない限り、イカサマを叫んだところで勝負は覆らない。半月骨牌の賭場は、そういう場所だ。


「終了です」


 夜啼鳥は、そう告げると場の銅貨を銀貨に両替させた。しょぼくれ爺さんが、手際良く変えた銀貨と残りの銅貨を小袋に入れ、わざわざ手渡す。


 俺は夜啼鳥が飛び去るのを呆然と眺めていた……。


☆☆☆


「おい。勝負しないなら出ていきな」


 ソバカス兄ちゃんではない店員が声をかけてきた。がっしりした体格。用心棒も兼ねているのだろう。現金勝負の賭場では負けて強盗に早変わりする奴もいる。他人のボウルを覗う奴もいる。シーフギルドが、ひと手間かけてチップで賭けをさせるのはその為だとも、言われている。


 俺は席を立った。俺には強盗に変われる力も盗賊に変われる技もない。あるのは半月骨牌でのイカサマ技だけ。それが通じず敗れたなら、黙って去るぐらいの矜持はある。


「兄さん。待ちなよ。忘れもんだ」


 俺は店を出た。どうしようかと思っていると、しょぼくれ爺さんに呼び止められる。店に忘れる様な物などないはずだ。


「[おのぼり]の兄さん。この裏通りの先の路地に銅貨2枚で酔える店がある。そこなら街の門が開く迄居られるさ。隠しがねぐらいあるだろう?」


「俺に情けをかけに来たのか?」


「あんた以前、南街の骨牌屋にいただろう?手入れに遭って潰れた店にさ。あんたは[おのぼり]じゃない[玄人]だ」


 女将さんに世話になっていた賭場は確かに南街にあった。しょぼくれ爺さんは同業の繋がりで知っていたのだろう。覚えちゃいないが、俺も爺さんを見た事ぐらいはあったのかも知れない。


いくさが終わって気が向いたなら、訪ねてきな。今、大負けしているソバカスよりは使えそうだ」


 俺は黙って言われた路地に向かった。悔しさが込み上げてきたが、どのみち朝まで街からは出られない。まだ夜は冷えるし、衛兵に見咎められても面倒だ。


 クソ。こんな夜は飲むしかない。


イカサマを咎められ、フード付きシーフに刺される展開も少しだけ考えました。

が、夜啼鳥もイカサマしてますし……。


私の黒歴史がまた1ページ。

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