↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第19章 卵の欠片

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

399/412

半月骨牌

ニルト視点です。

「聖女グレーテ様が、お呼びです」


 王都に近づくと、早々に王城から使者がきた。どうやら俺の雇い主であるハゲ、いや下級騎士デグは有名人だったらしい。聖女グレーテと言えば俺でも知っている女王陛下の側近。ただの下級騎士に上位者である貴族を飛び越してお呼びがかかるのは異例だ。


「わかった」


 ハゲはデカいトカゲを駆り、いけ好かない神官のサナと見習いという名の下女トゥフを連れ、一足先に王城に向かった。俺だけは引き続き部隊と共に行軍し、数刻後に王都郊外の陣に入った。張られた天幕に空きがあるのは、集められた貴族軍の、すでに半数以上が王都を発った後だからだそうだ。


 王都から鐘の音が聞こえてきた。久しぶりに聞く鐘の音だが、後半刻で城門が閉まる合図の音だ。郊外の陣にも夜鷹は来るし、酒保商人から酒も買える。だが俺には借金という名の枷が嵌められていて、金を増やして銀貨30枚を叩き返さない限り自由はない。


「やっぱり馴染みの[半月骨牌はんげつかるた]だな……。」


 決められた天幕に装備を預けると、俺は王都内に繰り出した。


☆☆☆


 粗末な木の板に半分だけ描かれた月の絵と下には0〜9の数字。[半月骨牌]の遊戯所の看板。繁華街の外れにその店はあった。王命で賭けは禁止だが、誰も守る者はなく、事実上の賭場として機能している。


 賭場と言ってもシーフギルド直営店ではなく、ギルドに上納金を納め経営している場末の賭場だ。以前、冒険者で行き詰まっていた時に似た様な店で下働きしていた事がある。


 雑用と頭数が足りない時の勝負の相手。早朝から宵、もしくは宵から早朝まで働いて日当が銀貨1枚。なかなかの日当に見えるが勝負は自腹。負けると日当など吹き飛び足が出る。勝てば良いのだが安定して勝てるなら苦労しない。


 それでも数年は王都で粘って働いていた。店への借金があったのと、冒険者では食えなかったからだ。だが大負けした客の誰かが当局に刺したのだろう。店が手入れを受けた際に、それまでの借金を踏み倒して故郷に逃げ帰った。


 その時に世話になっていた女将おかみさんの首が晒された話は後日、行商人から聞いた。下働きには日に一度は飯を食わせてくれたし、下働き数人で雑魚寝だったが部屋も用意してくれていた良い人だったんだが……。


「いらっしゃい。見ない顔だね」


 狭い階段を上り中に入ると、しょぼくれた爺さんが声をかけてきた。王都に着いたばかりの[おのぼり冒険者]だと答えると、爺さんは気味の悪い笑い声をだした。鴨が来たと考えているのかもしれない。


「[半月骨牌]は分かるね。役は満月が5倍、三日月が3倍、一二三が倍だけ。田舎者のローカル役はなしだよ」


「場代と回数は?降りきんとドローの賭け金はどうなる?」


「あんた、場慣れしてるね〜。本当に[おのぼり]かい?場代は銅1枚で10回のトビ辞めあり、降りも銅1枚。ドローは場残り。ちなみに担保あっても一見に回銭はしないよ」


 前に働いていた店と条件は、ほぼ変わらない。ただドローが場残りなのは、なかなかに熱い。持っていた銀貨を銅貨にある程度両替すると、俺は卓に向かった。


☆☆☆


 卓に着くと、俺は種銭を木のボウルに入れた。銀貨2枚を両替した銅貨60枚と両替していない銀貨を4枚。そして場代の銅貨1枚をついてきていた店員に渡した。ソバカス顔のまだ若い青年で顔色が悪い。恐らくロクな物を食べてないのだろう。


 すると対面にいた歯並びの悪いデブも場代を店員に渡す。この銅貨2枚の場代が、この賭場の利益。シーフギルド直営店の様に店と客の勝負ではなく、客同士が対戦する場を貸すのが、この賭場だ。この賭場は銅1枚の場代で10回勝負が出来る。


「場代。頂きました。良い勝負を!」


「チッ!毎回うるせぇ!おい兄ちゃん。その席ゃ冷えてるぜ」


 デブが口撃をしてきたが、俺は無視した。そしてソバカス兄ちゃんに告げる。


「札を交換してくれ。改める」


「手間かけるなよ!始めようぜ」


「すぐ用意します。お待ち下さい」


 デブはまた舌打ちしたが、それ以上の文句はつけなかった。ソバカス兄ちゃんが卓にあった木札を数えて回収し、新たな木札を持って来て卓にひろげた。間違いなく30枚ある。


 もちろん新品ではなく洗って使っている再利用品だが、描かれた数字が薄かったり、木札の状態が悪かったりした物はない。裏にしても問題ないと分かると木札を山にしてソバカス兄ちゃんは卓から離れた。頼りなさそうだが必要になった時、この卓の裁定者は彼だ。親決めの札引きはデブが6。こちらは0。幸先が悪い。


「その席は冷えてるって言ったろ」


 半月骨牌は運がないと勝てないが、運だけじゃ勝てない。俺はイカサマ技は()()使()()()()が、それでも数年は腕を磨き、半月骨牌こいつで食ってきた。種銭を5倍にするのは一苦労だが、一晩あれば不可能じゃない。


 世話になっていて、処刑された女将さんはシーフ崩れだったらしく、働いていた俺らに[度胸]と[確率]という勝負の奥義を授けてくれた。


「子供の頃から色々な技を仕込まれ、それを頼りに生き延びてきた本職シーフに[おのぼり]の()()()が勝てる訳ないだろ?冒険者ろくでなしだって人生勝つ奴らは積み重ねてる。でもね、手立てがない訳じゃない」


 俺は積み重ねる事が出来るタチじゃないが、勝負を降りちゃいない。借金を返して成り上がるんだ。



 [半月骨牌はんげつかるた]は0〜9までの木札を3セット。つまり30枚使う1対1で行う卓上遊戯。木札の大きさは掌に隠れるぐらいで、厚みも薄い。


 まず親を決め、親は山から自身に2枚、子に2枚、場に2枚、木札を数字のない裏のまま配る。結論から先に言うと勝負は手札の2枚と場のどちらか選んだ1枚の数字を足して大きい方が勝利する。(役があれば、役がある方が勝利。共に役なら強い役の勝利)


 ただ半月骨牌の半月たる由縁に駆け引きの要素がある。まず親は場のどちらか1枚を表にして、数字が分かる様にする。また自身の手札1枚を表にして卓に置く。次に子も1枚手札を表にして卓に置く。


 そして、この時点で親子それぞれ表にしなかった札1枚を捨てて、山から引いて交換するか、そのまま勝負するかを決める。次に親が場の明かされた札か、伏せられた札かを選んで決めて賭け金を場に出す。(子は自動的に親が選ばなかった場の札になる)


 後は子が賭けを受けるか、降りるか、賭け金を増すかを決めて、賭け金が折り合ったら勝負。降りるなら勝負せずに降りた方が降り金を支払う。


 勝負の後は勝った方が親になり、次の勝負になるが、賭け金の精算は1回毎。

木札は全て山に戻し、親が良く混ぜる。ボウルの賭け金が無くなったら強制終了。


半月骨牌の役解説

一二三

3枚の札が1.2.3となる。

役のなかでは出やすい。

負けた方は賭け金の2倍の支払い。

三日月

3枚の札が3.3.3となる。

負けた方は賭け金の3倍の支払い。

満月

3枚の札が0.0.0となる。

確率は三日月と変わらない。

負けた方は賭け金の5倍の支払い。


 札の半分を明らかにするので半月の名がついたと言われている。



半月骨牌おまけ話


君は子だ。

配られた札は9.1

親が場の札をめくると3

親の表情が僅かに歪んだ。

親が見せてきた札も3


君は選択を迫られる。


1を見せて一二三狙いにするか、9を見せて普通に勝ちにゆくか?

君は役は狙わず手堅く9を見せた。

親は札を交換せず、君は1を捨てて7の札を引いた。

一二三狙いにしなくて正解だ。


すると親は3の札を選んでなんと銀貨をかけてきた。

君は選択を迫られる。


親は3+3+〇。持ち札が例え9でも15にしかならない。

対して君は9+7+〇。例え場札が0でも16。

親が三日月でない限り君の勝ちだ。


勝負を受けて勝てば銀貨1枚。

だがもし三日月なら銀貨3枚の支払いになる。

親の態度はハッタリか?

あの表情の意味は?

マズイと見るなら銅貨1枚を払って降りれば良く、ハッタリと見るなら銀貨を賭けて勝負。


君は賭け金の入ったボウルに手を伸ばした。



貴殿ならどうするか感想にご記入いただいても良いのですヨ

私の黒歴史がまた1ページ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。