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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第19章 卵の欠片

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見たな……

視点サナです。

 風にあたりたいとの口実をつけ、我は天幕を出た。少し考え事がしたかった。デグは良い戦士ではあるが、下級貴族としては未熟。下級騎士とはいえ、ただ戦うだけでは便利に使われて終わる。話を聞くに冒険者の時は表は魔術師、裏は忍びの仲間が、そのあたりは対応していたらしい。


 そういえば我が師や姉妹弟子も神官、研究者としては有能であったが、政治や裏の事には無頓着であった。破門されたクレオと我、シーフギルドの鼠とで裏表の事を支えていた。鼠が欲をかかなければ破綻せず、もう少し軟着陸出来たであろうに。


 まぁ、我も未熟であった。当時、軍務卿であった父が、あっさり我を見限り口封じに裁判無しで首を刎ねてくるとは読めなんだ。お陰で捕らえられても、屈辱的な事はされずに済んだが、死にきれず[永遠の神]に魅入られた。


 しかし、神は懐が深い。てっきり大地母神には見限られたと思っていたが、聖印の簪をつけても問題なく、更に神聖魔法も使える。流石に退魔の術は無理であろうが、治癒魔法が使えるのは大きい。


 しかも調べると6だった神力が18に増えていた。[首だけ聖女]と呼ばれしはどうやら伊達ではない。魔力も60あるし、月灯りを浴びれば何故か、どちらも回復する。「不死者アンデッドとは、新月の時に戦え」と言うのが、正しかったと実感出来たのは皮肉だ。


 ただそうなると、文字通り()()()()()のが不便だ。薬を調合するにも先程の様に地図を眺めるにも、デグに頼むか魔力を使い念動しなければならぬ。


 裏仕事の出来る盗賊シーフと我の()()()()()従者。しかも我を見ても怯まぬ口の固い者……。なかなかの難題である。手足については街で奴隷を見繕うとして……。そんな考え事をしていると、幾つかの気配が我を囲んでいた。


☆☆☆


「神官様、小便かい?」


「ハゲだけじゃなく、俺らも相手してくれよ」


「おりゃ!」


 見るからに金の無い、貧相な装備の傭兵達が、獣欲を漲らせ襲いかかってきた。この商隊にも妓女と称する娼婦達を乗せた馬車が追随しているので、金さえ払えば困らぬだろうに。困った輩共だ。


 で、後から抱きついてきた男が、()()()()()を抱きしめ見事に転ぶ。それはそうだ。我は首だけが浮いておるのだから。ここに至っては仕方ない。売られた喧嘩は買わねばならぬ。


「見たな……」


 我はそう呟きつつ魔力を想起し、イメージを投射する。不死者アンデッドになり、自然に中魔法が使える様になったが、生前、家庭教師から習った魔術知識は今更、役にたっていた。お陰で無駄なく魔術が行使出来る。「学ぶとは大切な物なのですよ。お嬢様」と語っていた家庭教師に感謝だ。


[死の燐光](使1×3残57)


 近くに居た男共3人にイメージが投射されると、3人とも胸を抑え苦痛に顔を歪ませながら倒れる。いや、1人は倒れたままであったか。やはり心臓を強制停止されると苦しいのだな。


 だがしかし呆気ない。正面きった戦いなら、そこそこ戦えるであろう傭兵も魔術には無力と見える。と、近くの茂みが揺れた。我は視線をそちらに向ける。魔力を想起した我はボンヤリ光って見えているはずだ。


「見てません!あたいは何も見てません!」


 そこには年若い娼婦が腰を抜かして座っていた。臭いからして小用をたす為に茂みにいたが、我と()傭兵共を見て隠れていたのだろう。下手に見つかればタダで好きにされてしまう。そして着ている服からして、こやつは馬車付きではなく夜鷹フリーであろう。


「嘘を申すな。今、現に我を見ておるだろう?」


「ひぃ!た、たす……」


 恐怖が限界に達したのか、若い娼婦は気を失った。心臓が止まった訳では無さそうだが……。はてさて、面倒になった。取り急ぎ()傭兵共の死体をスケルトンウォリアーに変え、携帯用の骨片にする。


[ゴーレム作成](使1×3残54)

[骨片変化](使1×3残51)

[隠形](使1残50)


 そして、我は姿を消し急ぎデグを呼びに天幕に戻った。


☆☆☆


 首だけで戻った我を見て、デグは何も言わなかった。ただ少し溜息が漏れた気がする。そして珍しく予備の片手剣だけ帯剣すると天幕を出た。今の我は我が話しかけたデグと我より魔力が高い者にしか見えぬはず。


 現場に着くとデグは、まだ気を失ったままの夜鷹を抱え、骨片3つ、我の神官着を手際良く回収した。男共の武器はゴーレムの一部になったので、残っているのは粗末な防具と服、小銭が入った財布だけ。神官着には男が死んだ際に漏らした糞尿が付いてしまっているので、後で洗浄魔法をかけねばならぬ。


「行くぞ」


 デグは我に声をかけた。男共の魂は[永遠の神]に魅入られている。どうやら[鬼火]になりそうだ。彼らを従える[死霊]でも現れぬ限り、近づかねば害はない。我が[祈祷]すると、通常とは逆に[永遠の神]の印が付き必ず不死者アンデッドになる。


 不死者アンデッドの軍団でも作るなら便利だが、そんな事をすればすぐさま討伐隊なり退魔師なりが派遣され滅ぼされてしまうだろう。不死者アンデッドは生きとし生けるもの全ての敵なのだ。


 我が言うのも変な話ではあるがな……。


 

 クレオは貧民を助ける為には金と権力がいると考え販売を続けようとした。その為、得た金をサナのを通じ有力貴族にも配った。

 サナは新薬[英雄]に問題があると途中気づいたがムゲットには知らせず、徐々に供給を絞り対応しようと考えた。自身が有力貴族への贈賄窓口になっていた事もあり、すぐには止められなかった。

 鼠はムゲット一門だけが知るレシピを盗み大々的に生産し、シーフギルドの幹部に成り上がろうと画策した。

 だが主な販売相手が冒険者達だった為、シーフギルドと冒険者の店ギルドは血みどろの抗争を起こし、国も巻き込んだ大問題となったあげく、大半の関係者は処分されようやく沈静をみた。


私の黒歴史がまた1ページ。


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