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ギルマスワークス!外伝.戦場の花を捕まえて  作者: 真宮蔵人
花束を掲げて
22/95

A005.銃、防弾チョッキ、愛のフライパン

「え?マギラ2じゃなくて?」俺は困惑した。ひょんなはずみからスチームのセールで値引きになった割りと新作の『アヴァルオンライン』というVRFPSゲームをやるぞとギルマスが言い始めた。


おい、このゲーム、マギラ2の寿命を延ばしたいと日頃言っているのはお前だろ。

せめて新規加入したギルメンのジノーとエリーンをレイドやウォーに連れてくとかさあ!

みたいなバッシングを案の定ギルマスは全方位から受ける。

しかし曰く「同じゲームばっかしてたら馬鹿になるよ?マジで。」と言うがあんたもう馬鹿大人だろ。


「カラシ、ゲーム内で別ゲーの宣伝をするのは基本的にノーマナーだぞ。」とキールさんが厳しく批判するが。「お前も持ってる癖に。」とギルマスは未練たらしい。


それでもめげないギルマスの3国裏通話回線やsympaxiへの扇動スキル使用の甲斐が有り、ちらほらとアヴァルオンラインを買ったりこっそりプレイしていた奴等が三国中から集まった。その数はあっさりと100名以上揃った。


このゲームは高くも無いソフトだったので、以前ノリで俺もロドリコも実は買っていてプレイ済みである、今回の扇動のお陰で妹もジノーの中身も新規で買ったらしい。二人もやっぱり「ノリで。」みたいな事言っていたが正直FPSは情操教育に悪い気がするんだよなあ。


ギルマスはその結果にホクホクとした顔で「じゃあ、サーバ立てるから希望者は参加してくれ。」と宣伝とサーバ開放を設定した。すると、もりもりと人が入ってくるではないか。参加者枠が埋まってしまう前に俺達も急いで4人チームを組み参戦する、ギルマスのサーバのルールはレギオンバトルロイヤル制で4人チームのスクワッドルール。


レギオンバトルロイヤル制はゲームマップ上の安全エリアとされている領域が時間により段々と交戦エリアと呼ばれるNPCの兵士やドローン達に攻撃を受けるゾーンに侵食されていく。

基本的にプレイヤーは安全エリアに追い立てられて行き、プライヤー同士が安全エリアを巡って戦うルールだが。腕と弾薬に自信があればNPC兵士を迎撃しまくり安全エリアをガン無視して戦っていても良い場合もある。


交戦エリアに入ればNPC兵士から激しい攻撃を受けるので、その戦闘音で自分達のチーム位置が他のチームにばれてしまう。そこへ更に他のプレイヤーから襲撃されると状況はとてもまずくなる、よって大量の兵器を備蓄してNPCと戦いながらプレイヤーを襲うか、安全エリアを必死に逃げ回るか、最終安全エリアの当たりをつけてから篭城をするかの選択が迫られる。


まぁ、結局は最後まで生き残ったチームが優勝なので無理に英雄ランボープレイする必要も無い。


と、説明したものの俺もFPSはあまりやらない、だってハンドコンソール使えないんだもん。しぶしぶとスティック付きの20ボタンコントローラーを引っ張りだす。


ゲーム開始の待機画面で「お兄ちゃん。」と赤髪モヒカン黒人男が話しかけてくる、見た目と声のギャップが酷いし妹のセンスはちょっとずれてる、キャラ名もマギラ2と同じエリーンである。その見た目でエリーンは無いだろ。お前の様な妹がいるか。


「宜しくお願いします、お兄さん。」とジノーの中身がポニーテールの女性キャラで話しかけてくる、こっちはなぜか強盗がよく使う覆面をしている、名前もそのままジノー。


「先輩、カツ丼狙うっすよ!」とロドリコのアバターが話しかけてくる、見た目はブラウンの髪にブラウンの肌色、ブラウンのズボンに緑色のシャツの女。こいつ初期から森林迷彩にしてやがる、女キャラなのは体の線の都合上男キャラより見え難いからだ。こいつプロか。


<ゲーム開始まで後50秒です>

「ナゴヤナンバーワーン!ヤットカメー!」

「グンマナンバワーン!」

(謎のラップソング)

「こんにちはー!死ねーー!元気ですかー!」

ここは本戦開始前のプレイヤー集合地点である、ここでプレイヤーはゲーム開始まで無敵状態で元々4人参戦じゃなかったぼっちな人達の顔合わせと作戦計画時間になるが、その時間はまず有効活用されない。


大体の人間が各々に好き勝手叫びまわり、火炎瓶を自分に投げて「エンチャントファイア!」と叫びまわる狂人がいたり、パンチで殴り合いをしたりしている人達がいる。

ストイックな奴はその辺に転がっている銃と弾丸を拾い、スコープ無しのアイアンサイトで弾を当てる練習を黙々とこなしている。

たぶんこの時間が一番おもしろい。


今回のサーバでゲームマップタイプを確認すると表記は『アマクサ』となっている、このマップは東に森林と山岳ばかりの中型の島と間に瀬戸を挟み西にも広いがやはり森林と山の多い島マップである。


俺はボイスチャットをチームモードに切り替えて4人へ指示へする。

「ゲーム開始はマップ中央にいきなり落とされるから慌てずに俺に付いて来る様に。」

プランはロドリコと予め決めておいた、まずは東の山岳島中央のやや南にある町、通称タケクラを目指した後に車両や船を見つけ大きく移動する作戦だ。


<ゲーム開始まで後10秒です>

周囲は相変わらず喧しい、その中にどこかで聞いた声もちらほらある、マギラ2のコミュニティーから来た奴が多いから当然か?


ゲーム開始、直後にその場にいた全ての人間が突然空中に放り出された、このリアリティの無い演出は何度体験しても心臓に悪い。


眼下には美しい緑の森と紺碧色の海、そこへゴミの様に人々が空から散らばって吸い込まれていく。


プレイヤーはこの時点でそのまま自由落下とはならず、ムササビスーツとも言われる滑空用ジャンプスーツとパラシュートを装備しているので、滞空降下時間中にマップの移動が出来る、俺達4人が目指すは東の島。

この時点でプレイヤー達は皆素手で地上へ降り立つので、着陸後は真っ先に家屋や施設を漁り様々な武器を入手したり仲間と交換したり、弾薬や回復アイテムの分配を考えなければならない。


周囲を見渡すと自分達の方向へ同じ様に滑空してくるプレイヤーが3チーム、つまり12人ほどいた。

「まずいな!思ったより敵が多い!」

「先輩!港側に降りてボートで逃げましょう。」

「あそこのボートのPOPしゅつげんは確定か?」

「大体乗り物はある所です、こちらの出だし装備次第ではすぐ逃げましょう。」


俺は駄目もとのヤケクソ声で周囲の奴等にオープンチャットで声をかける「どっかいけー!頼むからどっかいってくれー!」すると素直に1チームが自分の方角より真北に進路を変えた、言ってみるもんだな。


ムササビスーツの滞空時間が過ぎて背中のパラシュートが自動的に展開される。周囲をもう一度確認する、敵は北東の消防署に4人、南東の海を挟んだ先の港に4人。味方は、あれ?ジノーがはぐれて一人で真北の農家へ落ちたぞ。


「ジノー、もうちょっとこっちに近寄れなかったか?」

「え?お兄さん、これでも近くはないんですか?」

そうか、距離感がまだ掴めていないのか。しかし、銃の射程知識やキャラクターの移動速度を覚えない事にはFPSは始まらないぞ。


「もう少し固まって行動したかったが仕方ない。ジノー、アイテムを拾いながらこちらへ向かってきて欲しい。もし車両があったら最優先で拾ってこっちに来てくれ。」

「わかりましたお兄さん。」

「お兄ちゃん!ペレッタって名前の鉄砲見つけたよ。」とエリーンが発言したので妹の位置をマップで確認するとそこは俺より北東にある家屋、まずい!

俺は急いで周囲を確認し手近な家屋で装備を探す、防弾チョッキ、包帯。そしてフライパン。銃がねえ!


しかし、ド素人ヌーブである妹を敵の真っ只中に置いておくと間違いなく殺される、一瞬で負ける。

「マロン!俺が行くまでその家から出るな!」とVCで叫ぶと「うん、わかった。この小部屋に隠れるね。早く助けに着てね。」と無難な選択をしてくれた。


ゲームログに

<エールートが村田銃でがりるんを気絶させました。>

<セブンスカーがガバメントでアイドリングファンを気絶させました。>

<シヴァがパンチでオークンシールドを気絶させました。>

<ゴリラゴゴウがRPG-7でマグミを殺害しました。>

という表示が流れ始める、もう銃撃戦(?)は始まっている!


北東へ向かう道の途中、エリーンのいる家の向こう側にチラリと人影が数人見えた。まずい、敵はやはりソロじゃない動きか。

その直後にエリーンの居る家から「ヒャアアアア!」「キャアアアア!」という叫びと銃声が交差した。

パンパンパンパンパン!ドッカンドッカンドッカン!物凄い乱射だが見事に気絶ダウンログが出ない。

急いで家屋に突入すると小部屋の中でお互いにショットガンとハンドガンを持ち、二人向かい合って必死な顔でリロードしあうマヌケなプレイヤー達が立っていた。悠長にリロードしてないで殴るか逃げるかしろよ。


そこへ俺は走りながらショットガンを構えた女プレイヤーの頭上へフライパンを叩き込む。

パィーン、とマヌケな音を響かせた後に敵は俺のフライパンヘッドショットにより膝を付いた。


<ビータがフライパンでアイビショウを気絶させました。>


俺は内心「フライパンでダウン取ったの初めてだわ。」と思いながら追加でフライパン殴り連打を敵に食らわせとどめを刺しにいく。

「あああ!フライパンで倒されるのやだあああああ!」と敵は泣き叫んでいるが。有無を言わさず殴り続ける。


<ビータがフライパンでアイビショウを殺害しました。>


道徳がうんぬんなんて言ってられない。俺は急いでこいつの死体からショットガンを回収しリロードを開始、弾がまだ2発しか装てんされていないポンプアクションのショットガンをすぐに俺の後背にある家屋入り口のドアに向かって発射する。この発砲は牽制でしかないが効果はマチマチだ。


ここでこの牽制に敵が気にせず突撃してきたら負けるパターン。しかし、このゲームの序盤で仇討ちなんてプレイは優勝への道のりが閉じる、間違いなく無駄だ、敵もそう判断してくれ。


もう遅い手だが、念の為に「ロド、援護射撃頼む!」と頼れる相棒に支援要請を送ると。

「敵さん、逃げてったっすよ。」と嬉しい報告を送ってくれる。

しかし、でもとロドリコは嫌な続報を続けた。「敵さん北西に向かったから近くにいるジノーちゃんが死ぬんじゃないっすかね。」とめっちゃ他人事の様に言う。お前ジノーがそんなに嫌いか。


「先輩、まずいっす。」「どうした?」「南東の奴等がこっちに狙撃開始し始める気です。めっちゃ見てます。」「ジノー!こっちにこれそうか?」

「あ、あ、あ、お兄さん武器がエオカピストルしかなくて。あ、乗り物だ!これに乗って逃げればいいんですね!」

と言ってきたので「ああ、それに乗って真西へ向ってこちらの上陸地点に来てくれ。」と頼んだ。

恐らく低くない確率でジノーは死亡するだろうが、これが今出来る最善の手だと思う。しかし、ジノーの見つけた乗り物の種類はなんだろうか、それを確認する余裕は今の俺にはなかった。


「よし、マロン、ロド、船で逃げるぞ。アイテムは諦めろ!」

「ライフル持ちだろうフルチーム1に3人の復讐心持ちチームに挟まれたら戦えないっすね。ボートはこっちっす。」

とロドリコは言い先陣ポイントマンを引き受けてくれる、俺はショットガンを構えながら後方を見張るが最後尾の守備がショットガンではとても心もとない。

さっき倒した敵のショットガンによる瀕死の重傷を負っても元気に動き回る妹を守りつつ俺達は漁船に乗り、東の島を後にした。

設定

・アヴァルオンライン

命名の元ネタは押井守監督作品映画のAvalon。VRFPSと言えばAvalonでしょ!Log-inまじ名曲。

ただし今回のルールは大体PUBGだ、最近のスチームサマーセールでPUBGが値引きになってないのは残念だな。


・レギオンバトルロイヤル制

現在の回線と技術力じゃできないシステムだろうから考えた、毒ガスで安全エリアを削るのは最近ブームだが個人的にこれはリアリティが無いので採用しない。もうあったらその会社すげえよ。ゾンビも認めない。


・なんで急にFPS?

他のVRMMOラノベがFPS回出したがるからノリで。後はPUBGのリプレイ小説を書いてたけどそれを流用した。水着回も入れないと駄目かな、じゃあノーザンで。

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