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ギルマスワークス!外伝.戦場の花を捕まえて  作者: 真宮蔵人
花束を掲げて
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A004.え?ドジっこでぼんやりしている妹がニンジャに!?

「いや、無理でしょ。」と俺は素直な感想を口にした。「ニンジャとアサシンはちょっとね…」コラーダも俺の発言に同調する。

事の発端はエリーンとジノーが将来どういうプレイスタイルにする?という話から始まった。ジノーは堅実に「私は初心者だから、初心者にオススメなのをお兄さんに選んで欲しいな。」と媚び100%フルスロットルの上目遣いをしながら言う、あざといわ!


そんな中で妹は突然「いや!私はニンジャになる!アイエアイエ!ニンジャニンジャ!」と奇声を発し始めた、やっぱり子供にインターネットを与えるのは駄目だ説を少し信じてしまう。


俺は出来るだけ嫌そうな顔を作り妹を諭す「いいか、ニンジャやアサシンっていうのはこのゲームをマジで極めた人間がなるような職業だ、あいつらと同じになるのは心も暗黒面に落ちることになるぞ。」と言う。

コラーダが隣で「地獄にようこそ。」と他人事の様に呟いているがスルー、後でお前にも手伝って貰おう。


「ジノーにはそうだな、信仰魔法と元素魔法と召喚魔法と投擲と音楽を取って貰おうかな、これが一番モンスター相手で強くて楽な構成だ、信仰する神様は変えてもデメリットが無いから自分にあった神様を見つけるといい。」


「お兄ちゃん!ニンジャは!?ニンジャロードはどうやって進めばいいの!?」しつこい妹の発言にコラーダと俺は顔を見合わせ「おい、お前が説明しろよ準アサシン型だろ?」「いや、先輩が良い所見せてくださいよ。」とアイコンタクトをした後に嫌々説明する。


「暗殺系は大雑把に二つある、暗闘のスキルでファストハイディングを使いながら近寄るか、天然スキル10のしゃがみ歩きか天然スキル100の森羅万象光学迷彩を使って襲うかだ。両方取るのも有りだが、そうすると自分の手札が少なくなってしまうので、トリッキーな戦い方や一部のボスモンスター戦で詰む場合が多い。後は攻撃方法を遠距離か近距離にするかで変わる。魔法主体のアサシンも結構いるくらいだ。」


説明が長くなるな、こいつの知力で理解してくれるかどうか不安になる。


「後はニンジャとアサシンの違いだ、ニンジャは暗殺も出来るが城攻めや拠点制圧の時に活躍するステルスクラスで、アサシンは単純に対人特化のステルス職だ。同じ様なクラスだが、ニンジャの方がスキル構成が縛られるので使い所は難しい。」


「お兄ちゃん説明長い、短く!」

「ニンジャ、めんどい、総合的によわい、プレイヤーの腕の差が出る。」

「うん、わかった、アサシンになって自分をニンジャだと思えばいいんだね?」

!?複合クラスを捨ててロールプレイでニンジャだと…それ結構ハイレベルなプレイだな妹よ。


俺は妹の決意を折る試みの第一段階が失敗に終わったことを悟り二人を引き連れ、東方のゲーム開始町カコラトクの周辺に生息している巨大リスと戦わせてスキル上げをさせる。

この初心者スキル上げ作業での問題点は俺もコラーダも他人への回復技がポーション投擲と俺の補助スキルくらいしか支援が無い所だ、ポーション投擲は正直お財布にダメージを受ける。


分かってはいたが、妹はドン臭い。まず敵と戦うという行動に躊躇する、お前に渡した古いHMDとパソコンは今まで何に使っていたのだろう。ほのぼの系のゲームばかりやっていたのだろうか。


その点ジノーは優秀だ、フィールド上の巨大リスに対して開幕召喚のペットをぶつけた後に容赦の無い遠距離初級元素魔法を叩き込む、慣れているというより頭がいい。敵が本体に接近してきた場合はそのままDDえんきょりこうげきを連打せずに冷静にゼロ距離用の魔法にきっちり使い分け戦う。


二人にはモンスターと戦闘の合間に暗闘スキル0の『目潰し』と天然スキル0の『しゃがむ』を使ってもらいステルス系スキルの底上げもする、将来このスキルは上限の都合上落とす可能性もあるが、序盤であげるととても便利なスキルだ。


二人の天然スキルが10に到達し『しゃがみ歩き』が出来るようになったのを確認したら、二人には「キャラクターチェンジしてくるから待ってて。」と伝えてコラーダにも「ロド出動。」と伝える。コラーダは「うっす、先輩。」と言いながら共にログアウトモードへ。


その後待っていた二人の下へリスの様な獣人と秋田犬の様な顔とカラーリングのでかい獣人が走ってきた。リスの方は無論ロドリコ、そして秋田犬獣人の頭上の名前表示は『びーたん』と表記されている。


「もしかして、お兄ちゃん?」と妹が珍しく察してくる。

ジノーは「お兄さんかわいい!モフモフしていいですか!?」と許可も無く抱きつこうとしてくるが俺はそれを緊急回避ダッジで後方に避ける。


このキャラは俺の生産用キャラだ、スキル構成は金属加工と木工と服飾と装飾とエンチャントと暗闘と天然が100のトータル700狙いの戦闘はまったくできない完全ステルス生産タイプ、を目指している途中のキャラだ。


ゲームに付いているボイス変換機能で少し野太くなった声の俺は「君達に暗殺職がどういうものか実際見て貰おう。」と二人に伝え、まずはウォーデルタへの参戦の仕方を教える。そして慣れ親しんだ戦場へ出発。


ウォーデルタの戦況は大きく変わった、まずマップ中央にある皇帝城の支配権が東方ギルド『ノーザンライツ』から西方ギルド『ピータンパーズ』へ移った為に西方は東方へ攻撃を仕掛ける戦況を確保した。

万年弱小かと思われていた西方王国連合が大逆転を果たしたのだ。


皇帝城は西方からの武力陥落ではなく、条件付きの引き渡しであった為に西方の国としての実力ではないが戦況は大きく動いた、この皇帝城の引渡し劇の理由に対するコメントは控えさせて頂きたい。


ウォーデルタで4人グループを組み、初心者二人にマップの移動の仕方を教える。これが意外と面倒臭い。言葉や文字で説明しにくいので「ここで」「こうすると」「こうなる」と言いながら走り回らなければならない。説明の途中でエリーンが最前線に飛んでしまい「お兄ちゃんこれどうやって戻るの?」と言われた時には流石に「もおおおおおお!」と野太い雄叫びを上げてしまった。「先輩、牛型の獣人の方がよかったんじゃないっすか?」とロドリコが茶化してくる。


大体の説明が終わったので俺達は最前線から一歩前の城へ転送施設で移動し、城壁を出て最前線へ向かう道の途中でピタリと止まり。「よし、ここからみんなしゃがみ移動で俺に付いてきてくれ。絶対にしゃがみ状態は解除するなよ。」と指示と念を押した。


そして俺はのったらくったらステルススキル無しで堂々と最前線へ向かい歩き始めた、後ろから来るしゃがみ状態の3人が付いてこれる様にゆっくりと道中の採取品を集めながら進んだ。


すると、『これはとても襲いやすいだろ』と言わんばかりの岩山と平地の複合地点を通過する瞬間、俺は突然チャージスキルからのスタン攻撃と恐ろしいくらいのダメージを一瞬で受けて瀕死に追い込まれる。

「お兄ちゃん!」と妹がグループVCで叫ぶが構っている余裕はマジで無い。

敵は西方の種族コビット、典型的なアサシン種だ、とてもその小柄な外見からは想像できない恐ろしいDPSを繰り出してくる。


それを見ながら飛び出してきそうな二人にロドリコが「しゃがみ解除して出たら駄目っすよ。」と釘をちゃんと刺してくれる。


敵の暗殺攻撃に瞬殺されるのもリアリティーが出ないので俺は必死にダッジとステルススキルを使用するが敵はすぐにステルス看破スキルを発動させ追撃の手を緩めない。モチベ回復ポーション、アクアビッテ等の回復手段と暗闘と天然スキルの限りを尽くして逃げ回る。敵も俺もステルススキルで出たり消えたり殴られたり避けたり。


全力で逃げに徹したとしても俺は貧弱な生産キャラクターだったのであっさりと戦闘不能になった。そこへロドリコへ合図を送る。「ロドだけで、やれ。」と。


そう伝え終わる前にロドリコは敵のアサシンにペットライドチャージと格闘技の限りを尽くして叩きのめしに行く。しかし、敵のアサシンの判断は早かった。

さっき俺をボコった後だからリソースが足りないと判断したのだろう。ステルススキルを使いながらロドリコから逃れようとするがロドリコもそれにステルス看破スキルを使いながら追いすがる、敵は諦めずに逃げ続ける。そして、その逃げ道には迷いが無さ過ぎる。


「ロド、下がれ。別のアサシンがいる逃げ方だ。」と伝えるとロドリコは森羅万象光学迷彩を使用した後に縮地でエリーン達の所へ戻って「さっきの城まで全力で走るっすよ。」と二人を連れて快走し始めた。

「それでいい。」と俺は言い再出撃リスポーンの選択をした。

リスポーンを押す瞬間には俺の死体の周囲に敵が3人集まってきていた、恐らくあの三人が逃げるの遅れていたらそのまま全滅だっただろう。


「というわけで、あれがアサシンやニンジャのプレイスタイルだ、あれでも強くない部類のアサシンだぞ。」

城の中で合流した俺は「質問はありますか?」といった感じに肩をすくめるモーションを取る。

エリーンはポケーっとしたマヌケ顔で「全然分からなかった。」というこれまたマヌケな感想だが、ジノーの方は「本当にアサシンやニンジャって闇に生きる人達なんですね。」という発言をし本質に理解を示してくれた、案外こいつの方がアサシン向きかもしれない。


そうだ!それなんだ!このゲームはそんじょそこらのRPGとは違いアサシンやニンジャがマジでそういうスタイルなんだよ、裸の方が防御力高いとか即死攻撃が得意、とかそういうんじゃないんだ!本当にニンジャなんだよあいつら!戦術的にアサシンなんだ!それを知って欲しかった研修なんだこれは。


妹は相変わらずのマヌケ猫顔で質問をしてくる。

「お兄ちゃん、さっきの戦い全然見え無かったけど、あれって私にも出来る様になる?」と妹は力ある言葉を口にするが俺はここでその決意を折りに行く。


「ヤムチャがサイヤ人に勝てるか?答えはNOだ、まずは自分に合ったプレイスタイルから始めろ。」


その突き放しと愛の篭った俺の言葉にエリーンは「できらぁ!」と展望の無い勇気を示した。

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