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ギルマスワークス!外伝.戦場の花を捕まえて  作者: 真宮蔵人
花束を掲げて
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A003.お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん

こんな日は絶対に来ないと思っていたが、運命は残酷さ、訪れてしまったのだ。ああ、愚昧よ。兄はお前を見くびっていたよ。浪費癖のある奴だとは思っていたが、まさか蓄財の技術を発明していたとは。


「えへへ、新しいパソコンとHMD買っちゃった、お友達と一緒に揃えたから、これでお兄ちゃんと一緒にマギラ2ってゲームが出来るね!」

我が妹ながらに可愛らしい奴だと思うがこいつはそのステータスに人生スキルポイントを全振りしているような奴だ、将来モテるだろうが将来設計は出来ない妹のはず。妹よ、特化型は難しいんだぞ、ゲームも人生でも。


諸君は分かるか?自分がドハマリしているゲームに身内が乗り込んでくるという心のモヤモヤを。しかも、ちょっと不安になる行動を取る肉親がだ。


ただ、ギルマス曰くの「ワシも兄貴と一緒のネットゲーやってた時代あったけど絡みは悪さをする時くらいしかなかったよ。ボスモンスター召喚して初心者領域プロみなみ滅ぼしたり、城攻めのMAPを負荷でサーバごと落としたりよくしたな。」との事。つまりゲーム内では肉親はそれまで絡むことが無くて、おつむがちょっと低スキルな妹の面倒は見なくても良い可能性が出てくる。


でも妹に変な虫が付いたら嫌だなあ、お兄ちゃん許しませんよ。そこで「お兄ちゃんと一緒にプレイしたいなら東方草原帝国って勢力で獣人っていう種族を選びたまえ!」と念を入れておいた、とくに獣人の所をだ。


不安だな、妹が言うそのオマケで付いてくるお友達に期待したい!と思ったこの時の発想は実に甘かった、だってそのお友達の方が厄介だったんだもん。


雨恵の月8日

東方首都のデイハンでそわそわしながら個人やギルドショップを覗きつつ妹を待つ。大方見終わって「今日もしけたもんしか流れてないっすね。」と隣から声が聞こえた辺りで。


「おにち-んきゃらくた--つっくたよ-」という囁きチャットが届いた、妹はキーボードと20ボタンコントローラーからの操作環境だから文字チャットがアレなのは目を瞑る。


現代っ子はキーボード操作が年々出来なくなっているとギルマスから聞いた。理由はスリムフォンと音声入力の発達の為らしい。しかし、せめて長音符くらいは記号のマイナスから直すように指導しておかなければこれからの人生が困るだろう。


集合場所は、キャラを作った直後に飛ばされるチュートリアルダンジョンを経て最初の待ち町『カコラトク』へ漂着する。なので「まずチュートリアルを進めておいて。」と囁きチャットで返事をしてから転送施設を使いカコラトクへ飛ぶ。カコラトクに到着するも人影はNPCと誰かの新規サブキャラがチラホラとしか見当たらない、流石にサービス開始から数年が経ち、マギラ3の開発も既に発表されている今では新規参入はあまりないか。


そう考えると妹に有料サービスを薦めるか止めるか悩ましいな。ネットゲームもいつかはサービスの終わりを告げるとはいえ、余命をどこまで楽しめるかが重要なのだからお金の使いどころは大事である。最近ではもうこのゲームは基本無料みたいな物だからお布施としてスキル上限30上げるくらいはなあ、と考え込む。


しかしスタート地点の町は暇だな。「ロド、アドオンにあるトランプでもするか。」と隣に座り込んでいるリスの様な獣人少年に話しかけると。「うっす、ババ抜きとポーカーは先輩めっちゃ弱いから今日はスピードでもするっすかね。」と言うや否や俺の前に立ち<ロドリコがカードゲーム『スピード』勝負を要請してきました。>と表示されるので<承認>を選択。


このカード遊びは意外とこのマギラ2の戦闘システムと合致する、正直に言うとMMORPGっていう物はターン制度ではなく、個人差の行動速度に差があるカードゲームみたいな物で、どれだけ自分と敵のスキルと動きの傾向を熟知するかと、周囲の環境を見渡せる観察力が必要になる。ゆえに早打ちモードの麻雀が強ければMMORPGも強いとギルマスは言う。


シュババババ!と現実ではありえない速度でカードが消費されていく、現実のスピード遊びで必要な手を動かすという動作がコンソールで簡略化されているのでもはやこの勝負は思考回転と反応速度の勝負である、この二つの能力はどちらが掛けていても成立しない。何か後ろで「あのー」とボイスチャットで話しかけられるが気にしない、油断したらやられる!ロドリコは俺にとっての人生最大のライバルである。


「ああああああ!」とロドリコが奇声を上げながらペースを上げる。よし、キ○ガイゲージが溜まったみたいだぞ、それに対してこっちは冷静に対処だ。思考力で勝て、反応速度ではロドリコに勝てん。

「うっしゃ上がった!」「ひーん、負けたっすー。」ウハハハハ!と心で勝利をかみ締める、ロドリコにゲームで勝った事なんて滅多にないからな。

「先輩のその勝ち誇った顔をまた絶望の底に叩き込んでやるっす!」とロドリコは再戦の構えを見せるが。


「「すみません!!」」と後ろから大きな声が二重で聞こえて来てびっくり振り返ると獣人の女の子とノーマッドの少女が立っていた。


獣人は頭の上にツンと尖った耳に黒い毛皮で猫の様な長い尻尾に足も体も全体がすらりとしていて瞳は黄色で大きく、口元はωの形をして長いヒゲがツンツンと生えてる、猫娘だこれ!頭上の名前表記は『エリーン』となっている。


ノーマッドの少女は金髪ポニーテールで顔は目元も唇も薄く全体的にすっきりしている美人さん、どことなく流行のアイドルに似ている気がする。頭上の名前表記は『ジノー』


身長は両者とも160cmくらいかな。誰かのサブキャラにしては作りこみが真面目するぎるからもしかしたらこの二人が?


「ライチお兄ちゃんだよね!?」と猫娘が俺に向かって叫んできた、そういえばさっき届いた囁きのログで名前表記がエリーンだったからこいつが妹か。猫娘が妹か、しかも黒猫。


「マロン、頼むから実名で呼ばないでくれ、ここではビータと呼んでくれ、下さい。」

「お兄ちゃん!後そっちのかわいいリスさん、私はエリーン!ビータさんの妹です!」

種族的におかしい設定だとは思わないかね妹よ。

「ウッス!妹さん、ボクはロドリコ!ロドって呼んで欲しいっす!先輩の相棒でさあ!」

「よろしくねロド君!」と言いながらロドと妹はお互いにエア握手コマンドを使った、エモーションは何気に高等スキルだぞ妹、侮りがたし。


そんなやり取りをノーマッドの少女は猫娘と俺を素早く交互に見た。この子が妹のお友達だろうか。

その少女はニコリと俺に微笑みかけ「エリーンちゃんのお兄さん、私はエリーンちゃんの親友のジノーです。初心者で分からない事だらけなので手取り足取り教えてください。」


と彼女が言ったその瞬間にロドリコがビクリと一瞬痙攣してから。「ちょっとキャラチェンジするっす。」と言って目の前から消えた。


「あれ?リスさんが消えちゃったよ。」と妹とジノーは周囲をキョロキョロと見回した。「ああ、あいつならメインのキャラに姿を変えて来るんだよ。」と説明すると妹は「リスさんかわいかったのにな、あんなぬいぐるみ欲しいな。」と言い出した、口を開かなければ俺だって欲しい。


そんな時にジノーが「お兄さんのお話はエリーンちゃんからよく聞いてます、かっこよくて優しい人だってエリーンちゃんから聞いてました。私ちょっと憧れてたんですよね。あ、私もお兄さんって呼んでいいですか?お兄ちゃんって一度言ってみたかったんです、言っていいですか?」

と言いながらめっちゃ詰め寄ってきた、これが女共の本能的チャージスキルか、ここでCCゆうわくを食らう訳にはいかない、一歩下がる。


「ジノーちゃん、お兄ちゃんを取っちゃ駄目だよ、私のお兄ちゃんなんだから。」

妹よ、今まで馬鹿にしてきてすまなかった、お兄ちゃんが悪かったからこの状態をやんわりと解除してくれ。


そんな最中に転送施設の方角からすごい速さでコラーダが突進してきた。あれは戦術スキルの戦術撤退と中央突破の陣と天然スキルの縮地キャンセル連打!さらに時空魔法の速度UPまでかけていてそれは通常の3倍以上の移動速度になる、無論スタミナもエーテルも消費しまくりだ、戦場でこんなんがいきなりきたらチビリそう。


疾風怒濤という表現が似合う移動速度で妹達の背後から迫ってきたコラーダはピタリと自分の隣に付き何事もなかったかの様に。「どうも妹さんとそのお友達さん、私はコラーダ。ロドリコのメインキャラで本当の姿です。ビータ君とはいつも一緒に冒険しているからこっちの姿の方がいいかなと思い変えてきました。」おい、コラーダと一緒に活動した事はあまりないぞ。


コラーダの紺色の長い髪、優美な装飾の白い鎧と端整な顔立ちに妹は「うわぁ、リスさんが美人さんになっちゃった、お兄ちゃんの彼女さんだったの?」と容赦のない会話のデッドボールを投げてくるがコラーダが。

「まだそういう関係じゃないけれど、仲は良いし私からは告白はしたよ?」と言い出した。え?されたっけ?決闘は告白じゃないぞコラーダ君!!


妹はもじもじとしながら「ええー!すごいなーお兄ちゃんに彼女さんかあ。」と言い出したが、

ジノーが「お兄さんが返事をしてないならまだ付き合ってないんですよね?」とこいつもデッドボールを投げてくる。昔こんなデッドボールで選手を潰していき勝利を目指す漫画あったなあ。


「先輩!私との事は遊びだったんですか!?あんなに一緒だったのに。」とコラーダが本気か冗談か分からない投球を繰り出す、お前も追い討ちスキルがうまくなったな。


そんなコラーダの発言にジノーはスルーをして、

「そんなことよりお兄さん、このゲームを案内して頂けませんか?」とジノーが俺に『手を引く』のモーションを使い俺を急かしに来る。こいつ出来るぞ!お前も初心者騙りってオチはないよね?


「そんなこー!?」と言いながらコラーダは固まっているが、それを放置して二人をまずカコラトクの町を案内する事にしよう、この二人は初心者さんという事なので『効率』という単語には出来るだけ触れさせないようにしないといけない。あれはゲーム寿命が縮む言葉だからな。


そういえばギルマスが以前言っていたな「リア充はいつか爆発破綻する、これは世界の法則。」

という言葉が脳裏を過ぎった。

余談

・長音符がマイナスだった人

俺だよ!高1だった頃の俺なんだあああ!恥ずかしい。クロスゲートっていうMMOで職業『医者』になるクエストで『ボローミア』と話しかけるトコ4回も失敗して発覚した、それでゲーム内借金も初体験したくらいだよ!それ以前のPSOとUOとDia2で気づけよ俺!あ、コントローラー入力と半角ローマ字ばっか喋ってたから無理か。


設定

・エリーン レース:獣人女

中身は武藤マロン14歳


ESOやってたら気の狂ったアルゴニアンタンクが「エリーン!お父さんだよー!」と叫びながらスピンドルクラッチへ突っ込んで行った事を思い出したので採用、エリーンは下水2だしここは「もう休めプラクシン」が名台詞だ。

ちなみにマロンの発音は栗のマロンじゃなくてバーチャロンをチャロンと略したときの発音。


・ジノー レース:ノーマッド女

中身は国奧紅葉14歳

金髪キャラ!と考えてふっと頭に浮かんだのは戦国ターブのじのちゃんだったから採用。なんで!?


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