表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ギルマスワークス!外伝.戦場の花を捕まえて  作者: 真宮蔵人
花束を掲げて
PR
19/95

A002.ギルマスワークス本編断章4.ノーザンライズオブネイションズ

「うっそだろ?」俺はコンビニのATMから預金残高を見て驚いた、銀行員の職を失ってから再就職もせずにゲームばかりをして失業手当が先月尽きた後にこの謎の振込みである。振込み履歴を何度見ても『給与振込みノーザンライツ㈱』と書かれている。


しかも20万円だ、ゲームしているだけで20万円振り込まれていて更に雇用保険と厚生年金の加入もされているらしい。それは先日ハローワークへ赴いた時に判明した、妙に心の曲がっていそうな受付のおねーちゃんが「貴方はもう就職されていますよ?大丈夫ですか?」と心配されたくらいだ、大丈夫か?頭が大丈夫か?大丈夫な訳ねえだろ、こんな訳わからん状況だぞ。


急いで安アパートの自室へ戻りギルド専用の外部音声チャットでサブギルドマスターに連絡を取る。「ハッチさん、お金が振り込まれてるけどマジだったんですか?」と正直に聞いてみると「いや、だって振り込まれるんだからしょうがないじゃん、細かい手続きは会計士がやってくれるし顧問弁護士まで付いてるぞこの会社。」その言葉を聴く限りハッチさんもこのカラクリが完璧に分かっていないらしい。


「え?ギルド全員ですか?結構な額じゃないですか、どこから湧いてくるんです?」と矢継ぎ早に質問をするがハッチマンは面倒くさそうに「もうりゅーちゃんに直接聞けば?」と投げやりな返答をする。


天帝☆黄龍、あいつは本当に訳がわからん。ギルド創始者にしてマスターだが、「寝るおやすみ。」と言った時間以外の19時間は常にログインしていて、更に残りの「寝ているはず」の5時間にも目撃情報や呼び出しに応じたりするといった事がある筋金入りの廃人だ。


正直戦い方を見ても人間を超越したBotにしか見えない。俺が子供の頃に見たプロの将棋士を圧倒するAIの延長に思えてくるくらいだ。


だけど、誰もそれを追及するギルメンがいない原因はこれ。、金が振り込まれる、しかもボーナスまで出るという、社員旅行もあるというが一体何処に連れて行かれるんだよ。


謎だ、俺もこれでも元銀行員だ、企業の足取りを探るなんざ個人でも出来る、海外にある企業データバンクへ多少のお金を使い入りノーザンライツ㈱の情報を得る。本社はマレーシアで日本支部とロサンゼルス支部、モスクワ支部、サンパウロ支部、重慶支部、ハノイ支部、セブ支部があり。取引先銀行は中国新世界銀行、北米ネットコイン銀行。サンパウロアミゴス銀行とどれも新興銀行ばかりだ。日本支部の所在地は品川区内。


しかし、肝心な黄龍とはどうやって連絡を取るのだろうか、ゲーム内チャット以外で彼の肉声は聞いたことがない。そして支部は以前届いた書類の届け元と同じく品川か、遠い訳でも無いから見に行くくらいはしても良いだろう。


すると丁度良くハッチマンから「がりるん、そんなに会社が気になるなら支部においでよ。りゅーちゃんとの直通電話があるよ。」と言う。


「ペーパーカンパニーじゃないんですか?実在する事業所があるんですか。」


「んだよ、それに出社してもいいのは当たり前じゃないか。社員なんだから、郵送された書類にハンコ押したでしょ?」

その時点でめっちゃ怖いんですけど。

「そもそもなんでゲームしてたら住所が割れて書類が届くんですかね。」

その質問に少し沈黙の後ハッチマンは「さあ?」と答えた。


電車に揺られる事50分で品川駅へ到着、満員電車は嫌いなので丁度正午を狙って移動する。

品川駅よりやや西に向かうと目的地のマンションが有った、そこの519号室らしい。

大昔の建設ラッシュ時に作られたような古めかしいマンションのエレベーターがチーンという古風な到着音を響かせる。


519号室、ここのはずだ。自身の鼓動が早鐘の如く響くのを感じる。意を決してインターホンを鳴らすと一瞬で「入ってどうぞ。」という黄龍の様な声が聞こえてからカチャンと鍵が開いた音が聞こえた、監視カメラがあったのか?そもそも何時この顔を俺だと『認識』された?


俺は恐る恐るドアノブを捻り玄関に入り靴を脱いで社員用と書かれて並んでいるスリッパに履き替え進む。

玄関から居間であろう入り口の中ドアを引いて開けると、そこにはHMDを被った人々が7人くらい並んで専用のコンソールに座っていた。


俺、こんな光景昔の映画やゲームで見たわ。しかもディストピア系で人間が架空世界で幸せに暮らしていて現実ではすっごいまずそうなドロっとしたメシが出てくるアレだよ、そんな作品はいっぱいあるな。そして、フィクション未来人が並ぶその部屋の中心には小さい台とその台の上には大昔に存在した黒電話という物がちょこんと乗っている。


未来人の一人がHMD搭載の外部カメラ越しでこちらを見て「もしかして、がりるんか?」と尋ねてきたから「そうです。」と答えた。

「私はハッチマン、ここの実質管理人だよ。」ハッチさんは恐らく自分より年上男だろう、顔はHMDを頑なにはずさないので見えない。


「随分未来的な会社ですね。この他にピチピチした銀色のスーツや光線銃はどこにあるんです?」

「そんなものはないよ、私もこの状況を作るのに加担したとはいえちょっとアレかなーとは思っているさ。」

ここまで着たら色々踏み込みたくなるのが人間の性ってもんよ。

「他の方々は勿論ギルメンで、誰が誰ですかね?」と質問するも。

「悪いがそれは秘密だ、個人情報は出来るだけりゅーちゃんと私だけで握るようにしている、じゃないと怖いだろ?」んなこと言われても最初からこええよ。


「黄龍さんはどこでしょうかね?」と質問をするとハッチマンは無言で台の上の黒電話、ひらがなで『しゃちょう』と書かれたシールの張られている電話を指で示した。


その指先に従い、俺は恐る恐る受話器を取り、そのでかい通信機器を耳に当てる「あれ、番号入力どうやんの!?」と言いそうになった瞬間に受話器から声が聞こえてきた。


「もすもす」とゲーム内と同じ黄龍の声で言われた、怖い、ちょっと無言でいよう。

「・・・」「マックマック」

モスもマクドもねえよ、てめえの頭はハッピーセットかよ。


「がりるん、喋らないと寂しい。ハッチマンとは喋ってたじゃないか。」

「え!?え!?」「その部屋、盗聴器と監視カメラ付けてる。」マジかよ。

「俺の個人情報はどうやって抜いた!?」

通信傍受えしゅろん

自分の顔が青ざめるのを感じる。「うっそだろ。」

「細かい話聞きたい?寿命縮まると思うけど。」


後ろからハッチマンが「やめとけ、やめとけ、闇が深いから最悪死ぬぞ。」と忠告してくれる。

しかし!俺はそんな脅迫にすぐ屈したりしない所を見せ付ける為に虚勢を張ってみる。

「お前のやっている事は後ろ暗い事だ、警察に通報されれば一巻の終わりじゃないか?」


その逆脅迫に対し受話器は少し沈黙を取った後にぼそりと呟いた「手形小切手法フォルダ。」と。

その言葉に俺から冷や汗がどっと流れるのを感じた。馬鹿な、あれは俺の、俺の!!


「このフォルダをIPと一緒にポリスメンにシュートしてプリズンでスメルライスを満喫しマインドブレイクするのも人生経験?」

「後、いかがわしいファイルを保存する人ってなんでそう知識系フォルダに偽装するんだろうね。賢者モードなの?」


俺の敗北はこれで確定した。しかし出来るだけ食い下がりたい、これは元銀行員の意地だ。

「畜生、俺の完敗だと言いたいが、安全性の確保と今後の給与支払い継続の見込みはあるのか?」

と俺の心はこいつとの和平交渉へ転じることを決意した。


「日本国内ならポリス沙汰も大丈夫、各国政府関係者にはもうある程度渡りは付いてる。でも電子系以外の犯罪はしないでね、弁護士は用意できるけど前科は『まだ』消せないから。お金の事は心配ないよ。」

まずどうして金が湧いてくるかだよ、そこが気になる。

「資金の調達方法を聞いても良いか?」と質問すると受話器は「んーっ」と考えてから答えた。


「例えば人類の歴史には何度も飢饉が訪れているじゃない、その飢饉の時に先祖代々から蓄えた備蓄を消費したとしてもそれは悪い事かな?」


言っている意味の規模がでかすぎて分かり難い。

「つまり何を言いたいんだ?」

「今の時代では結構な数の人間はもう無意味な労働をしているからそれはもうゲームみたいなもんで、じゃあ実際ゲームして労働対価を貰ってもあんまり変わらないよねって言いたいの。これで『自己正当化プロセス』は承認できるでしょ?」


「社会的な立場ってもんがあるだろ。」

「だから会社立ち上げたのよ、表向きはそうだなー。調査員とでも名乗っておけば良いよ。」

「なんの調査員だよ。」

「そこは3歩目かな、合法的に人間観察を深くする為の実験データ取りだと思えばいいよ、案外それでもお上からの評価は出るから。ニーズに適した調査員のお仕事。お、かっこいいじゃん。ローン審査も楽々通りそうだね。」

ネットゲームから得られるデータが優れている理由があるのか?パソコンもHMDも何か怖い物に思えてきたな。


しかし、これ以上は駄目だ、もう怖すぎる。

でも最後に一つ、やられっぱなしではない事を示したい。


「ところでここの警備って少し甘くないですか?危ない組織にいきなり突入される様な内容ですよここ。」


「警備かあ、固定自動機銃セントリーガンでも置こっか?」

そのジョークか本気かわからない発言に対して俺は受話器を黒電話に戻す事で返答を控えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ