5話 滞在
本日5話目。
楽しんでいただければ幸いです。
紹介してもらった宿を訪ねると、一軒目は空きがなく、二軒目は想定より宿代が高かったため、三軒目まで足を延ばすことになった。三軒目は、候補の中で最も小さい店だが、よくサービスが行き届いているし、何より食事が美味しいということで、評判が良かった。宿に入り、宿泊の希望を伝えると、滞在の目的を聞かれた。イレイシアが素直に受験のためと応えると、相場より宿代を値引いてくれた。
「はい。お代は確かに受け取りました。これは、部屋の鍵です。ごゆっくりお過ごしください。食事は一日二度までお出ししますので、三食以上食べたかったら、別にお代をいただきます。お時間は好きな時で構いません。それと、二日ほど前に一人、受験生だとおっしゃってる方がいらしゃったので、もしかしたら会うこともあるかもしれませんね。では〜。」
にこやかに手を振ってくる受付の娘に、感謝を伝え軽く手を振り返してから、イレイシアは2階の部屋へ向かった。
部屋について荷物を下ろすと、イレイシアはベッドに飛び込んだ。
「ふかふかだ〜。ごろごろするだけで疲れが取れるよ〜。いつか村のみんなに使って欲しいな。」
満面の笑みでイレイシアがため息をつく。普通、村では藁などを布で包んでクッションにして、その上に寝るため、イレイシアにとっては初めてのベッドなのだ。
ひとしきりベッドを楽しむと、イレイシアは、来ていた法衣を上着掛けに掛け、部屋の中を軽く見て回った。部屋は、横3m、奥行き5m程で、ベッドの他に、クローゼットや化粧台があった。また、化粧台の上に加熱口というものがあり、様々な対応器械をつなぐことで、温風を使ったり、温水を使ったりすることができる。イレイシアは早速、備え付けの湿らせてある布を温め、顔や首を拭いた。とても気持ちよかった。この加熱口や、湿った布の保管器は、家書と呼ばれる魔導書の一種を利用した道具であったが、学園に入学してすらいないイレイシアには分からなかった。
まだ明るい時間帯のため、イレイシアは、一度街を散策することにした。階下に降りて、受付の娘におすすめの場所などを聞くと、「レルア観光散策地図」なるものを渡してくれた。貸し出しはするが、金をかけて作ったものなので、失くしたりしたら弁償です、と軽く脅されたが、イレイシアは娘に礼を言って宿を出た。
レルアの街は、縦横に大きな通りがあり、大通りからは何本も小路が出ているタイプの街で、道沿いに店や住宅がある。イレイシアは、まずは大通りに沿って、歩いて見て回ることにした。
お読みいただきありがとうございます。
家書は手紙の意ではないです。神咲式造語。家具の本バージョン。
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