6話
なんか、うーん。すみません。また、拙文警報かもです。
楽しんでいただければ幸いです。
時は遡り、イレイシアが魔洞へと入っていってすぐ。トーラは、レノイの張った境界の中で、他の2人と一緒に周囲を警戒していた。
「それにしても、イレイシアさんの使う魔術は全部不思議だ。今まで見たことがないし、聞いたこともないようなことばかり。」
「それに、魔力の許容量も底が見えないわ。」
「・・・あれ?俺、口に出てた?」
心の中で呟いていたつもりが、どうやら口に出てしまっていたらしい。一応警戒中の身なのに、危機感が足りないぞ、と自分を戒める。
「本当にそうなのよね。私も、魔術には少し明るいつもりだけれど、イレイシアさんのやっていることは殆ど説明できない。レノイはどう?」
ライカの問に、レノイは首を振る。3人の中では魔術に詳しい2人の模糊とした言に、トーラはガルトとの会話を思い出す。出発前、イレイシアが来るまでの間、組合で彼と話したのはイレイシアの素性だった。
「そういえば、トーラ。もうイレイシア殿から、きちんとした自己紹介は受けたか?」
「自己紹介なら昨日したじゃないですか?」
「その分だとしていないみたいだな。全くあのお方は・・・。イレイシア殿には悪いが、知っておいた方がいいから話してしまうぞ。」
「いいんですか?確認しなくて。」
「あぁ、流石にな。イレイシア殿の家名はマグス・スザロアリア。またの肩書きを魔導卿だ。」
「魔導卿・・・。」
思い当たらなかったトーラは、しばらく考える。ややあって、1人の冒険者の逸話を思い出す。
「!まさか。」
「あぁ、イレイシア殿こそが、数々の武功により若くして王から名を賜った、名うての冒険者だ。」
驚きを隠せないトーラに、それを聞いていたライカとレノイ。3人の衝撃を横目に、ガルトは続ける。
「イレイシア殿の武功は、多く語られるものが2つ。1つは、先の大陸全土を巻き込んだ教国の内紛を収めるのに大きく働いたこと。そしてもう1つが、単身で帝国からの侵略軍の精鋭1個師団を壊滅させたことだ。更に言えば、その際には上陸すら奴らに許すことはなかった。他にも、様々な魔術理論や魔術の発表など研究にも寄与している。」
連々と並べられるイレイシアの功績に、トーラ達が完全に固まる。
「な?知っておいた方が良かっただろう。」
「それ、はそうです、けど。は、はは。すご、いんですね。」
衝撃のあまり辿々しく返すトーラ。今〈蒼の爪牙〉は完全に動きを停止していた。
その後、イレイシアがやってきた後も平静を取り繕っていたが、それは功を成していたのか。トーラは不安でならなかった。
トーラは、ふと魔洞の中で何が起こっているのか気になり始めた。魔導卿の戦いとはどのようなものなのか。冒険者として、それを強く見てみたかった。
「なぁ、ライカ、レノイ。魔洞の中って、見えないかな。」
「見えはするけど、ここからだと奥までは見えないわよ。」
トーラが、何か方法はないかと考えていると、不意に地面が大きく揺れる。
「きゃっ!」
「なんだ!?」
この状況で起こりそうな要因など、魔洞の戦いより他ない。トーラは、境界を飛び出て魔洞の方まで駆けて行った。
「ちょっと、トーラ!?」
ライカが驚いたように声をかけるが、構わずトーラは駆ける。ライカは、少しの逡巡の後彼を追いかける。レノイもまた、その後ろを駆けて行った。
魔洞の入り口に着いた3人は、境界越しに中の様子に目を凝らす。しかし、何らかの魔術が働いているようで、中の様子は変わりなく見えた。
「境界のせいで中で何が起こってるか見えないのか。レノイ?」
「・・・無理。魔力。桁違い。」
レノイは、境界をしばらく観察していたが、やがて何かに気づく。
「意思?」
「意思って?」
「この境界。意思。ある・・・かも?」
レノイの言に、トーラとライカは瞠目する。意思を持った魔術など、殆ど聞いたことがなかった。レノイは、少し考えると胸に手を当て、境界に向かって礼をする。呆気にとられる2人をおいて、彼女は口を開く。
「偉大なる魔導書よ。どうか小さき我々にこの中を見せてはくれないだろうか。」
普段の口数の少なさが嘘のように、レノイはすらすらと喋る。レノイの言を受けた境界は、しばらく悩むように揺らいでいたが、やがてすっと中の様子がはっきり分かるようになった。
中では、トーラ達の想像を絶する出来事が起こっていた。まず、一里四方はあったはずの洞窟が、すべて崩れている。そして、どのような原理なのかイレイシアが空に浮いている。また、彼女が相対しているものも異様。遠目にはその姿がはっきりとわからないが、人型にも関わらず片腕がひどく歪で大きい。
「あれが、神・・・。」
「すごく、歪な人のよう。悍ましいわね。」
トーラ達が、イレイシアの戦っている神に驚いていると、それは腕を捉えきれぬほどに速さでイレイシアに伸ばす。イレイシアは、魔術で防御をしたようだったが、どういうわけかその防御が破られ、腕を避けたイレイシアは落下し始めた。
「イレイシアさん!」
トーラが思わず声を上げる。しかし、イレイシアは空中で停まると、多数の魔導書を飛ばし始めた。
「あぁ、よかった。それにしても、何で防御が・・・。まさか、あれがイレイシアさんの行っていた自然法則を無視する能力なのか?」
「そうかもしれないわね。・・・それと、イレイシアさんは一体幾つの魔道書を持っているのかしら。あれだけの量の魔導書を〈図書鑑〉に保管するなんて、一体どれくらいの魔力を使っているのか、想像すら出来ないわね。」
トーラ達の疑問がいくつか浮き上がる中、イレイシアは一度地面に降り立つ。そして、何か特殊な魔術を形成し始める。眩い輝きの後、イレイシアは1本の長剣を持っていた。
「あれは、一体・・・?」
再びの理解を超えた術に呆気にとられていると、イレイシアが中断で剣を振る。すると、神の身体は空間を隔てて両断された。
「今のは、まさかあの剣術の奥義!?イレイシアさんは、魔術士だったはずじゃ!?」
「そもそも、魔術の使い方もおかしいわ。いくら魔導卿だからといって、普通には全く知られていない技術のみで戦うなんて。魔術っていうのは、最適化されて市井に広まっているのよ。それに、魔導書を飛ばして攻撃に使うなんて。」
「イレイシア。不思議。・・・おかしい?」
〈蒼の爪牙〉の驚きは無理もないことだった。一般に、魔導書は魔術の記録媒体として使われる。魔術を使う際には、魔導書から魔術を構成する要素ーー例えば、陣や詠唱など。を引き出し、魔術を使う人自身で再構成する必要がある。しかし、イレイシアは魔導書から直接魔術を出力しているようだった。さらには、物を形成する魔術など聞いたこともない。魔力にできることは他の種の力に変わることであり、物を形成することはできないはずだ。また、最後の剣戟もおかしい。本来は、西の森に道場を構えるある流派の奥義の1つとして知られるそれは、剣に身を捧げるようなものでなければ会得することはできない。それほどの難度と威力を誇っている。それなのに、身体能力が十分に見えないイレイシアが使えるのは不思議な話だった。
「本当に、イレイシアさんは何者なんだ・・・。」
3人が大きな疑問を抱いていると、剣を振るった後座っていたイレイシアが立ち上がる。トーラ達は、慌ててもといた地点まで下がって行った。イレイシアが戻ってくるのを待ちながら、トーラは思う。
(イレイシアさんに普通に接する自信がない・・・。)
お読みいただきありがとうございます。
なーんか、うまく書けなかったんですよ。今回。すみません。体調ですかね?
それはそうと、ぴったり3000字になったので、これを読んでいる方は、これから幸運に見舞われることでしょう。
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