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7話

なんか段々余裕が無くなってきた気がしますね。今夜の更新はちょっと未定です。

楽しんでいただければ幸いです。

 神を斬滅し、しばらく座り込んでいたイレイシアは立ち上がる。もう必要のなくなった境界を閉じようとして、ふとその内容が書き換わっていることに気づく。


「あれ?内の様子が誤魔化されなくなってる。」

『カルコスかしら。一体なぜ?』


 マグサリアの問に、わからないと首を振りイレイシアは境界を全て解く。そして、境界を張るのに使っていた魔導書を周りに散らばった魔導書とともに手元に集める。イレイシアは、境界の魔導書ーー名をカルコス。を開くと口を開いた。


「カルコス、どうして境界を書き換えたの?」


 イレイシアが尋ねると、魔導書はぱらぱらと頁を送り、謝意を示す。そして、厳かに声を響かせ始めた。


『彼の者等は、純真にして己が成長の為中を見たいと丁重に申して来た。応えるのが礼儀となろう。』

「そうなんだ。まぁ、あんまり気にしてないんだけどね。一応なんでなのか聞いておこうと思って。」

『汝が深慮に感謝する。』


 カルコスは、壮年の男を思わせる声でイレイシアに応えた。イレイシアは、カルコスを閉じるとマグサリアに手を伸ばす。


「マグサリア。悪いんだけど、また仕舞わせてもらうね。」

『えぇ。次に開かれる日を楽しみにしているわ。』


 イレイシアは、自分の魔導書全てを〈図書鑑〉(リベル・イァム)に仕舞い込む。一気に消えた周りの気配を少し寂しく思いつつ、イレイシアは〈蒼の爪牙〉の待つ場所へと歩き出した。




 イレイシアが、洞窟の残骸を抜けてトーラ達の元へと戻ってくると、3人は自前の境界の中にいた。


「無事に終わりました。皆さんも、お疲れ様です。組合へ戻りましょう。」


 イレイシアが、境界のことについてあえて何も言わないでいると、3人も特にその話題に触れなかった。一行は、再び言葉少なに組合へと帰る。はたから見れば、随分と奇妙な集団にも思えただろう。4人は相変わらずぼんやりとした気まずさを抱えて歩を進めるのだった。




「いやぁ、ありがとうございました。取り敢えずの問題が片付いて良かったです。昨日着いたばかりなのに、もう解決されるとは、ありがたいやら申し訳ないやら。イレイシア殿、本当にありがとうございます。」

「いえいえ。気にしないでください。これも私の仕事ですから。」


 組合に戻ったイレイシアは、ガルトに事の次第を報告していた。神を倒したこと、洞窟を崩落させたことを掻い摘んで伝え、後の対応を委託する。イレイシアは、これから今回の首謀者、つまりガレイア教について追うつもりだった。


「では、報告とガレイア教については、イレイシア殿にお任せしてよろしいのですな。魔洞の跡の方は明日以降視察しに行き、具体的な対応を考えます。」

「はい、お願いします。では、私はそろそろ宿に帰りますね。少し 、消耗いたしましたので。また明日以降伺います。」

「えぇ、お待ちしております。では、お気をつけて。」


 ガルトと今後の動きについて確認したイレイシアは、組合を辞して宿へ戻ることを伝える。イレイシアは、後ろで聞いていた〈蒼の爪牙〉を振り返ると、口を開いた。


「皆さんも、ありがとうございました。また何かあれば、よろしくお願いいたします。」

「こちらこそ、ありがとうございました。またお会いしましょう。」

「えぇ、また会えるのを楽しみにしているわ。」

「イレイシア。ばいばい。」


 イレイシアは、軽く笑むと荷物を持ち直し、扉を開けて正面の出入り口に向かおうとする。しかし、扉を開けた後足を止めて裏口へと向かった。

 騒ぎを起こさないようにと、裏口から組合を出たイレイシアはその足で宿へ戻る。ガルトに言ったことは、半ば事実で半ばそうでなかった。消耗はしたが、それ以上に1人になって今後の動きを考え、情報をまとめたかったのだ。宿に着いたイレイシアは、荷物を降ろし法衣を脱いで身軽になる。鞄の中から手帳と筆記具を取り出すと、備え付けの椅子に腰掛け膝の上に手帳を広げた。


「ガレイア教・・・。信仰・・・。喚起・・・。最近の依頼の動向に、市場の動き・・・。」


 イレイシアは、1人ぶつぶつと呟きながら手と頭を動かし始める。半刻ほど過ぎた頃、ふと気配を感じて、立ち上がって伸びをする。扉にかけていた鍵を解くと、丁度扉が外から軽く叩かれた。


「空いているから、入ってきて。」


 イレイシアがそう言うと、扉が開いて3人の男女が入ってきた。3人は、扉を魔術で閉めるとイレイシアの前に膝をつく。


「只今、到着致しました。状況を鑑み、勝手ながら3名で馳せ参じましたこと、お詫び申し上げます。」


 そう1人が言うと、3人は顔を下げたまま礼をする。


「問題ないよ。じゃあ、早速で悪いけど仕事を振るね。」


 3人は、魔導卿の影ーー貴族家の当主の手足となって諜報その他を担当する精鋭。だった。イレイシアは、3人に軽く状況を説明した後指示を出す。


「4人で手分けして痕跡を追い、明け方までに首謀者を絞ります。その後、アリとロイは私と一緒に首謀者を追い、ユトは王都へ届け物を。療養院のシャーラに、実物を届けて協力してもらいます。その後、陛下に報告を。いいですか?」


 3人は是と応え、準備を始める。アリは黒い短髪に切れ長の瞳の女性で、年は20半ばといったところ。ロイは長い黒髪を後ろで束ねている細身ながらよく鍛えられた身体の男性で、20後半に見える。ユトは、2人に比べると幼く見える女性で、黒い長髪を編み込んで上半分を結んでいる。全員髪が黒いのは、地毛ではなく目立たないよう染めているためだ。

 準備が整った3人と自身に、イレイシアは魔術を使う。遠距離での連絡を可能とする魔術だが、維持に多くの魔力を必要とするため、イレイシアでも使えるのは半日といったところ。今は昼頃のため夜までは活動できる目算だ。一行は、各々丁度いい頃合いで宿に戻ることにして出発した。


 3人と別れたイレイシアは1人考える。おそらく、儀式を行った人物と儀式を準備した人物は違う。そして、儀式を行った人物は既に消えているが、準備した人物はまだ生きている。よってイレイシアは、儀式、もっといえば陣を用意した人物を探ってみることにした。

 儀式で使われる陣に使われる塗料は、ただの地面に使うとすぐに空気中の魔力と反応を起こし陣の働きを阻害する。そのため、地面に対し魔術で加工を施すのが一般的だ。しかし、魔術を用いて変質させた地面は、時間とともに元の状態へと戻ろうとする。更には、魔洞のような特殊な環境ではその期間はさらに短くなる。イレイシアは、これらのことを加味し、儀式場が完成したのはここ数日の話だと仮定した。また、出会った時の神の様子から考えるに、儀式が始まったのは3日前。完成が昨日だろう。

 イレイシアは、さらに考える。陣を用意した者はいつからいたのか。陣を描く道具はそう長持ちするわけではない。また、常に入手できるのも王都に限られている上、この時期にこの地方への入荷はないはずだ。つまり、ここではない本拠地から物を持って最近この街に入ってきた可能性が高いように思われる。


「よし。そうと決まれば、この街の人の出入りを調べないと。多分領主館に保管してあるかな。」


 イレイシアは考えを整理するようにそう口にし、街を治める領主の居館へと足を向けた。

お読みいただきありがとうございます。

そろそろ人物まとめを作るか・・・。うーん。

By the way 今の所紀行要素が薄いんですけど、ちゃんとこの後出しますよ。えぇ、もちろんですとも。((

よろしければ、ブックマーク、評価等々お願いします。m(_ _)m

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