3話
本日2話目。前書きだけ修正しました。
楽しんでいただければ幸いです。
「ん・・・ぐ・・・。」
イレイシアが〈蒼の爪牙〉の3人を寝かせてから、さほど経たずにくぐもった声と共にトーラが目を覚ます。
「あれ・・・?一体、何が起こって・・・。確か壁を壊そうとしたら爆発が起こって・・・。」
「あ、おはようございます。トーラさん。」
状況を飲み込もうと声を発するするトーラに気付き、イレイシアは声をかける。
「あ、イレイシアさん。一体、何が起こったんですか?俺が覚えているのは、壁を撃ったら爆発が起こった所まで何ですけど・・・。」
「そうですね、説明します。その前に、他の2人もそろそろ起きると思うので待ちましょう。」
2人が待っていると、すぐにレノイが身を起こし、周りを訝しげに見始めた。
「レノイ、身体は大丈夫?」
「ん。」
「何が起こったのか、ライカの目が覚めたらイレイシアさんが説明してくれる。少し待とうか。」
レノイは黙って聞いていたが、何を思ったのかおもむろに立ち上がる。そして、ライカの横に立つと彼女を蹴り飛ばした。
「え?」
「あの・・・?」
トーラとイレイシアが戸惑っていると、レノイは無表情で言う。
「起きた。」
「起きた、じゃないわよ!叩き起こしたの間違いでしょ!」
叩くというよりは蹴り起こされ、いや、自発的に起きたライカが、イレイシア達の心中を代弁する。
「えっと、大丈夫ですか?ライカさん。」
「ふぅ・・・。えぇ、問題ないわ。それで、一体何が起こったのかしら?私が矢を放ったら、爆発が起こったわよね。」
ライカの問いかけに、トーラとレノイの視線がイレイシアに向く。3人の視線を受け、イレイシアは口を開いた。
「おそらく、先ほど起こったのは過多な魔力を含んだ空気の膨張です。」
イレイシアの端的な説明に、3人が疑いの眼差しを向ける。イレイシアは1つ頷くと、再び話し始めた。
「もちろん、それだけでは皆さんが気を失うことはありません。実際、爆発の規模も大したものではなく、件の薄い壁を壊す程度にとどまっていました。皆さんを蝕んだのは、空気に含まれていた魔力の方です。私が少し観察したところ、あの奥はやはり儀式場になっていました。」
そこで、イレイシアは言葉を止めておもむろに地面に何やら描き始める。ややあって完成したのは、様々な図形が複雑に配置されている模様だった。
「これが、実際に儀式を成立させるため書かれていた陣です。魔法や魔術をはじめとした、魔力を用いる様々な様式を混合させたもののようです。これは、私が細部を補完したものですが、おそらく書かれている内容は間違い無いと思います。そして、この陣により行われる儀式、それは」
ーー神の喚起、あるいは創造です。
「「神・・・。」」
「・・・邪神?」
3人の反応に、イレイシアは首を振る。
「すみません。言葉が足りませんでした。あそこで行われていたのは、命を犠牲にして膨大な魔力を操作し、特定の自然法則を無視する、あるいは捻じ曲げる能力をもったものを生み出す儀式です。それにより産まれるものを便宜的に神と呼ぶことがあるのです。そして、あそこでは既にその儀式が成立しており、皆さんは産まれた神の放つ特殊な型の魔力にあてられたのだと思います。」
途轍もない話に、トーラたちは言葉が出ない。少し経って衝撃から解放されると、トーラは他の2人に変わり、イレイシアに尋ねる。
「それって、放って置けない、とんでもない話ですよね。俺達で解決するんですか?というより解決できるんですか?」
「放って置けないのは確かです。しかし、境界がしっかりと機能しているので、そう急ぐ話でもありません。それに、そんなに気負う必要はありませんよ。問題なく倒せると思います。なにせ、たかが産まれたばかりの神ですから。」
人が作ったとはいえ、仮にも神と呼ばれる上位の存在。それに対し、たかが。再び驚きを味わう〈蒼の爪牙〉の面々に構わず、イレイシアは話し続ける。
「とはいえ、組合に報告した方が良いのは確かです。それに、今日はもうすぐ日が落ちますから。何かをするなら、明るい方がいいでしょう。」
イレイシアの言に、今度は驚きもなく納得し、トーラ達は一度組合へ引き上げることにした。
組合へと戻った一行は、受付に丁寧に迎え入れられる。イレイシアに対する、周りからの奇異の視線はあったものの、不躾に見てくるものは今度はいなかった。〈蒼の爪牙〉が実力を周りに認められている証拠と言えるだろう。行きに集合した部屋と同じ部屋で待っていると、ガルトが少し経ってからやってくる。
「お疲れ様です、イレイシア殿。それから、お前達も。して、どうでしたかな?魔洞の方は。」
「魔洞自体は大したことはありません。規模は小さく魔力もそう多く溜まっているわけでも無い。しかし、それとは別の問題がありました。なんというか、火のないところに、という話です。」
イレイシアの言に、ガルトが険しい顔をする。察した様子の彼に、イレイシアは言う。
「ガレイア教のものとみられる儀式場が最奥にありました。そして、そこでは神の創造と呼ばれる類のものが行われています。いえ、正確には行われていました。既に儀式は成っており、今は私の境界で魔洞全体を覆っている状態です。」
「なんと・・・。最も危惧していたことが起こっているとは・・・。」
頭痛を覚えた様子でこめかみを抑えるガルトに、イレイシアは言う。
「ガルトさん、王都の使者にお伝えください。うちの影を動かします。」
「!使者殿がいると、何故?」
「状況と時機を考えればわかります。それに、特に秘匿されていなければ、魔力もわかりますから。」
2人の後ろで話を聞いていた〈蒼の爪牙〉は驚いた雰囲気を出している。ガルトは、またも別種の頭痛を覚えたようだったが、イレイシアにはその原因は分からなかった。
「わかりました、イレイシア殿。では、これからの動きを教えてもらえますかな?」
「はい。まず、私から証をお渡しするので、使者殿には申し訳ないですが、すぐ発ってもらいます。そして、明日早速私が魔洞の方を潰しに行くので、後方支援として〈蒼の爪牙〉の皆さんをお借りします。」
「・・・分かりました。イレイシア殿が言うのですから、問題ないのでしょうが、しかと頼みます。」
イレイシアは頷き、後ろを振り返る。
「今聞かれていたように、明日魔洞を潰します。皆さんには、念のため後ろで控えてもらいたいのですが、よろしいでしょうか?」
「はい。それは全く問題ないのですが、俺達は何をすればいいでしょうか。」
「いえ、特には。万が一境界を超えて、余波が出てしまった場合は対処してほしいです。」
3人の理解を得ると、イレイシアは再びガルトの方へと向き直り、懐から小さな紋章を出す。
「これを見せれば問題ないはずです。よろしくお願いします。」
ガルトが紋章を受け取り、部屋を出て行くと解散の運びとなった。明日の朝、初めの鐘の刻に組合に集合することにし、4人はそれぞれの場所へと帰っていった。
組合を出て、宿に帰ったイレイシアは身軽な格好になる。部屋を出て、扉を備え付けの家書ーー手紙ではなく、一般に普及している魔導書。の魔術で施錠し、一階の食堂へ行く。食堂には、ちらほらと人がいる程度で、閑散としていた。イレイシアは、厨房と繋がっている窓から、食事を注文する。少し早いが、夕食を食べてしまうつもりだった。
お読みいただきありがとうございます。
本当はね、魔術とか魔導書とかの設定書き連ねたいです。でもそれは、この事件?異変?が解決した後の話に書きます。
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