29話 練習
遅くなってしまいました。
楽しんでいただければ幸いです。
アイリエルに連れられて入ったのは、学園の第3実験室だった。アイリエル曰く、この部屋はアイリエルの担当で、比較的自由に使えるのだという。
「じゃぁ、さっそくで申し訳ないけどぉ、魔力を感じるところからぁ、始めよっかぁ。時間もないしねぇ。」
イレイシアたちを椅子に座らせ、その向かいに自分も腰掛け、アイリエルは言う。魔力を感じるには、魔力が別の力に変換され続ける場を作り出すと良いとされる。そのため、アイリエルはイレイシアと両手を繋ぎ、自身の魔力を流し始めた。成功すれば、手を繋いだところから、じんわりと温かさが広がって感じる。
「だんだん、先生の手が温かくなってきました。成功、ですか?」
「おぉ、それは順調だねぇ。じゃぁ、自分で自分の手をあっためられるぅ?」
アイリエルに言われ、イレイシアは手に熱を集めようとする。全身に満ちている何かを想像し、それを手のひらへ送る。だんだんと手が温まる様子を想像する。最初は上手くいかなかったが、だんだんと慣れるにつれ、途切れつつも魔力を熱にして感じることができた。
「おぉ、大成功だねぇ。イレイシアちゃん才能あるよぉ。」
「ありがとうございます。これが、魔力・・・。」
「うんうん。じゃぁ、試しに温度を上げられるぅ?」
イレイシアは、今まで以上に力を手へ送り込んでみる。少し力むように、握る手に力を込めると、一気に出力が上がった。
「っ!熱っ!」
「イレイシアちゃぁん、大丈夫ぅ?まだ慣れてないからねぇ。怪我はなぁい?」
アイリエルに、驚いただけだと答え、イレイシアは再び力の制御に意識を傾ける。だんだんと加減がわかり、自在に温かさを調節できるようになってきた。
「早速ぅ、コツを掴めたみたいだねぇ。すごいよぉ、イレイシアちゃぁん。」
「先生のお手本が良かったんです。ありがとうございます。」
イレイシアは、半分本心、半分世辞といった気持ちで謝意を伝える。しかし、続くアイリエルの言葉に少し後悔する。
「あぁ、やっぱりわかっちゃうぅ?なんたってわたしはぁ、ぷりちーアイリエル大先生だからねぇ。敬いたまえー。」
イレイシアとシャーラに、なんだこいつは、という目を向けられながら、アイリエルは自賛する。
そんな軽い茶番を挟みつつ、イレイシアは魔力制御を上達させた。存外、イレイシアの習熟が早く、時間に余裕ができたのことで、明日の予定だった練習を先取りすることとなった。
「じゃぁ次はぁ、魔力をそのまま何かにぃ、流し込む練習でぇす!わぁーい!」
「わ、わーい?」
「じゃぁまずはぁ、この石を持ってねぇ。」
アイリエルが渡したのは、表面に象徴と陣が彫られた苦土橄欖石だった。その効果は、安定した魔力供給が一定時間続くと、石の先端部分で小さな爆発が起こるというものだ。爆発は一瞬しか起こらない上に、規模も小さいため、比較的安全性の高い実験だ。
イレイシアは、最初こそ魔力をそのまま流す、という感覚が掴めなかったが、20分ほどかけて上手く安定した魔力を流せるようになった。
パチッ
魔力を流していると、やがて小さな爆発が起こる。シャーラは1人、大きく反応したが、他の面々は面白そうに結果を見やるだけだった。
「よぅし。無事成功だねぇ。じゃぁ、今日はここまででいいかなぁ。また、明日の授業後にねぇ。質問とかなければ、ばいばぁい。」
「特にはありません。今日はありがとうございました。また明日、よろしくお願いします。」
部屋を辞し、寮に戻って貰った本を読む。夕食時には、3人で寮の階下の食堂へ向かう。身を清め、明日の支度をしておやすみを言う。
こうして、イレイシアの学園生活1日目は幕を閉じたのだった。
お読みいただきありがとうございます。
作中の苦土橄欖石は、カンラン石=ペリドットのことです。実験器具の仕組みはこんな感じ。
魔力によって、石の周りが電気的に理想状態(=原子すらも変わる?)となり、蛇紋岩化反応で水素を生み出します。で、そこに空気中から無理やり連れてこられた酸素が結びつき、水素爆発を起こします。けれど、それらは本来起こり得ないので、世界の修正力で事象はすぐに後退します。なので、一瞬小規模な爆発が起きます。
まぁ、ファンタジーのご都合設定ですね。魔力は万能。
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