21話 読書
結局風邪気味なのは治りました。(どうでもいい)
楽しんでいただければ幸いです。
3人は寮に戻り、食堂から備え付けの加温水筒を借りて、ミルアの部屋へ行く。ミルアが、汚いから恥ずかしいと言っていた部屋は、物が少なく、よく片付いていた。しかし、それ以上に驚くべきは、その広さだった。イレイシアたちの部屋の1.5倍はありそうで、イレイシアとシャーラは驚きのあまり、固まってしまった。ミルアが、申し訳なさそうな顔で、1人だと広すぎるんだ、と言う。ミルアに、適当に座ってくれ、と言われイレイシアとシャーラは、ソファに座った。尚、普通の部屋には、ソファを置けるようなスペースは無い。
荷物を置き、ようやく我に帰った2人は、ミルアがお茶を用意するのを手伝う。イレイシアは、その茶葉がかなりの高級品だった気がしたが、極力何も考えないよう努めた。それはひとえに、ミルア自身がこのような待遇に対し、あまり良い思いを持っていないと、分かっているからだ。それはそれで贅沢な話だが、イレイシアもシャーラも、友人に対し羨んだり妬んだりなど、決してしなかった。
温かい茶をカップに入れ、3人はそれぞれに読書を始める。イレイシアが借りたのは、王国の歴史と地政学についての本。気楽に読むのには、些か向いていないような気もしたが、読み出すとどんどん熱中してしまった。
イレイシアが読んでいる本に書かれた歴史の話では、今までに王国で起こった大きな出来事の、時系列と概要がわかるようになっていた。
最初に書かれているのは、今から298年前に起こった、大陸戦争だ。この戦争はもともと、大きな勢力であったラーシ王国内で、正統な血筋の王家と、傍流であるエラーシが対立して、大陸全体が政治的に不安定化していたところに、大飢饉に見舞われて、各国の民が反乱を起こすことで起こった。あらゆる国が自国内でも、他国間でも戦争をすることとなった、歴史上一番大きい戦争だ。この時に、もともと使われていた魔法という儀式を用いた技術が、戦争のために各国で研究され、魔法革命が起こった。また、王国内ではラーシをエラーシが打倒し、エラーシ王国を建てた。
次に戦争が起こったのは、50年ほど後のことで、今では西の森で隔たれている隣国の、ベリナ=ギリレッソが王国へ攻め入ってきた。戦争の契機は、ベリナの西部の海岸の方から砂漠化が進み、食糧問題が生まれたため、資源の豊富な王国を侵略しようと、ベリナが目論んだことだった。それに対し王国は、先の大戦で培った魔法技術の結晶である、地形干渉を用いて西の森を創り、物理的に国同士を隔てることで解決を図った。当時の王国は、ベリナと戦争をするメリットも体力もなかったため、消極的な対応となったのだった。
更に100年ほどが経過すると、南部の皇国で軍部が台頭し、王国との間で小競り合いを頻繁に繰り返すようになった。だんだんと規模が大きくなり、戦争にまで発展したが、皇国内で革命が起こり、正統な皇家から皇帝を立て、軍部の勢力は一掃された。この際、新政権は革命前に、王国と同盟の密約を交わしており、王国と皇国の結びつきは、戦前以上に強固なものとなった。
戦争が終結して皇国は安定したが、その国力は以前とは比べるべくもないほど、衰えていた。それを好機と捉え、海を隔てた帝国が皇国へと侵略を開始した。帝国は、周辺の島国を属国とする海国で、かつてから大陸への侵略を目指していたが、移動の手間の所為で手が出せずにいた。しかし、皇国が弱まったため、皇国を落として拠点として使おうとしたのだ。王国は、同盟を理由に皇国側へ立って参戦し、主に技術的な協力を行なった。この際、両国間の研究者を集めて行われた研究の成果が、魔術の誕生である。これを第1次魔術革命と言う。
そして今から99年前。教国内で反乱が起こり、それが各国まで飛び火した。教国は、皇国の東に位置する大国で、べリネイア教など複数の宗教の聖地がある。教国は、国教にユーペネリア教という様々な宗教の源流を定ていて、派閥争いが激しく政治色の強い、清濁併せ持つような国でもあった。教国で起こった反乱は、各国に信者の間にも広がり、民衆同士で緊迫感が漂うようになってしまった。結局、教国は大きな派閥ごとに国を4つに分け、王国と皇国を仲介に、互いに不可侵条約を結んで戦争を終結させた。現在一般的に教国と呼ばれるのは、ユーペネリア教の聖地がある、4国の中で最も小さく王国に近い国である。
また、地政学についての記述は、イレイシアにとって少し難しい内容だったため、学びとなったのは主に王国の地理についてだった。
王国は、大陸の最北、西寄りの位置にある大国で、面積は皇国の次に大きい。四季があり、海も山もあるため資源が豊富である。夏は海からの、暖流の上を通る風で温暖湿潤な気候となる。しかし西部では、西の森が風邪を隔てるため、他の地域に比べて湿度が低い。冬には、海へと吹く風で気温が低いが、湿度はある程度あり、雪が降ることもある気候となっている。
ふと、イレイシアが顔を上げると、ミルアとシャーラが顔を覗き込んでいた。どうしたのか尋ねると、もう夕方だからと声をかけたが、全く反応しなかったのだという。イレイシアは、よほど集中してしまっていたようだ、と思い2人に謝る。イレイシアは、本を閉じて小さな机に置く。代わりに手に取った茶は、すでに冷めてしまっていた。イレイシアは、それを一気に飲み干し、立ち上がって伸びをした。
「本当にごめん。熱中しちゃって・・・。」
「ぜ、ぜんぜん、大丈夫、だよ。わ、私もミルアに言われるまで、気づかなかった、し。」
「私は、途中で飽きてしまって、暇してたからな。ほら、それより夕食を食べに行こう。」
ミルアが、苦笑しながら言う。イレイシアとシャーラは同意し、3人は夕刻の街へと出発した。
お読みいただきありがとうございます。
設定回でした。これ考えるのすごく楽しかった覚えがあります。
それと、本日2話目は修正のため遅れての投稿となります。
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