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31 審判の水晶

 翌日。俺とルカ、そしてミリアは諜報活動の結果を聞くために本館へと足を運んだ。

 レイシアさんに連れられて応接室に行くと既にみんな集まっていて、やいのやいのと談笑をしている。

 この雰囲気だけ見たら成功したっていうのが分かる。


「お、ユズル君ルカちゃんお疲れ様っすー。なんか空気から察してるとおもうっすけど、無事幹部に嘘を報告することが出来たっすよー! ルカちゃんの服はもう渡しちゃったっすけど、爆弾はちゃんと渡さずに残してるっす!」


 ノアがすごく元気に爆破済みの爆弾を持ちながら手を振っている。

 楽しいのは分かるけど仮にも爆弾だよ!? あぶないよ!!

 ディッツさんもその様子を見ながらガハハと笑う。いや、笑ってないで止めてって!


「ノアお疲れ様。俺達の為に協力してくれてありがとう。大変じゃなかった?」

「いやもうすっごく大変だったっすよ。幹部の人達がエールと焼き鳥奢ってくれたんっすよね。だけど注文方法に暗号が含まれてて毒が入ってる可能性は限りなく0に近いんすけど、0じゃないのでエールは飲めない、焼き鳥食べられないで本当に生殺しだったっすよ……」


 エールを飲むジェスチャーを見てみんなが笑い、応接室は明るい声でいっぱいになる。

「今度一緒に飲みましょう」とフランさんが誘ったり「私はお酒が苦手なので飲めるようになりたいなぁ」と呟くミリア。

 え、ミリアお酒飲める年齢なの!? いや、そもそもこの世界でお酒が飲めるようになる年齢って決まってるのだろうか?


 そんな事を考えていると、ディッツさんが急に前のめりになり話しかけてきた。

 

「ところで、ユズル君とルカ君この後時間あるかな? 少しネイマール商会のやったことについて復讐をするから手伝ってほしいのだが」


 そもそも予定を立てること自体あまりないので俺とルカは承諾する。


「スムーズに行けばすぐに終わるさ」と笑いながら俺とルカの肩を軽く叩いて部屋を抜けようとする。


「そうだノア君、その爆弾を渡してくれないか? 今から衛兵詰所へ行って実際に起きたことを話に行くから証拠品として持っておきたいのだが」

「ん、どうぞっす~」


 ルカは爆弾をディッツさんに投げると、ディッツさんはそれを受け取る。

 俺達が安心して王都で暮らしていけるように便宜を計ってくれてるんだ。感謝しか無い。


「それじゃあユズル君、ルカ君行こうか。衛兵に話す関係でちょっと話したくないこともあるだろう。だけどなるべく話ししてくれると助かる」

「はぁい」

「わかりました」


 なんかこういうの少しワクワクするな。

 なんだろう、冒険に出かける勇者みたいな妙な高揚感が湧いてくる。

 冒険に出かける勇者になったことがないからこんな気分なのかは正直わからないが、気持ちだけでも……


「それと、詰め所には『審判の水晶』という魔道具がある。この魔道具は聞かれたことに対して正確に答えると青、嘘を伝えると赤く光る。裁判所でも有効な証拠品として扱われる物だから、もし本当に答えたくないことを聞かれたら嘘を付くのではなく『答えたくない』と言ってほしい」


――審判の水晶。また知らない魔道具の話が出てきた。

 しかし、確かにこれがあるとたとえヴォルフのやってきたことに対する証拠が不十分だとしても証言が証拠となる。

 復讐をするにはピッタリの魔道具だ。


 俺達は館を出て、地に足をつけ衛兵詰所へと向かう。

 晴れやかな気分だからか、はたまた高揚感からか、とても気持ちの良い風が吹いたように感じた。



 ◇ ◇ ◇


 大通りの石畳を歩き、衛兵詰所に向かった。

 ルカの尻尾も揺れている。ひどく緊張しているわけでは無いようで安心だ。


「すまない、誰かいるか」


 衛兵詰所に着いた。詰め所に入ると、奥から2人の衛兵がいそいそと出てきた。

 いや深夜のコンビニバイトかよ!


「これはこれはディッツさん。ご足労いただきありがとうございます。 過去に殺人未遂を犯した冒険者の件ですね。えっと……」


 衛兵の一人が何やら石板を取り出す。あれが資料なのだろうか?

 こういうのは紙ベースで資料を確認するものだと思っていたが、何やら石板のようなものを取り出してそこに魔力を通している様子が見える。

 青白く光る魔力を石板に当てると「ブォン」と音が鳴り、石板の上に本があるかのように手を動かしている。

 俺達には見えない本が石板の上にあるみたいだ。


「お待たせしました。ドレイクとバルザックの両名は犯罪奴隷に身分を落とし、魔石鉱山にて350年の強制労働に処されることとなりました」


 350年!? つまりこの労働は死ぬまでやるということが確定したというのは分かるが、やけに中途半端だな。

『死ぬまで』という制限ではだめだったのだろうか?

 それか『死んでも復活できる手段』があり、一度死んでその方法で復活すると刑期が終わる的なやつがあるのか?


「そうか、ありがとう。だが今日来たのは別件だ。ネイマール商会絡みというのは変わらぬがな」

「畏まりました。審判の水晶は必要になりますか?」

「あぁ、頼むよ」


 特に違和感のなかった空気が、ディッツさんの新規依頼の話を聞いた途端重くなる。

 そんな事を気に留めもせずディッツさんと衛兵は何食わぬ顔で会話を続ける。


 もう一人の衛兵が水色の透き通った水晶を持ってきた。あれが審判の水晶だろう。

 水晶が目の前の机に丁寧に置かれる。サッカーボールほどの大きさを持つその水晶は美しさとは別に、どことなく威厳を感じる。


「では改めてディッツさん。今回のお話を聞かせていただきたく存じます。どういった内容でしょうか?」


 ディッツさんが振り返り、俺達の反応を待つ。

 聞かれたことを答えることしか出来ないので俺とルカは静かに頷く。


「うむ。ではまず彼らを紹介する。彼はユズル君で、彼女はルカ君だ。2人ともネイマール商会の被害者で、会長ヴォルフについての告発をしに来た」


 俺とルカは少しだけお辞儀をし、次のディッツさんの言葉を待つ。


「まずユズル君についてだが、彼は我が娘のリースが逃げた護衛のせいで死の淵に追いやられていたところを助けてくれた人物だ。その情報を聞いたヴォルフが奴隷として売られていた彼女を購入し、ユズル君を暗殺しようとしたが反撃にあって今は和解している。

 この暗殺未遂については当人同士で解決済みであり、我々アルベルト家も深く事情を理解している。ゆえに、ルカ君の行いについては不問としていただきたい」


 衛兵のペンの音がカリカリと聞こえる。石板には後から追加するのか、石板に触れる様子はない。


「ここからが重要な話だ。ユズル君のスキルのお陰で今はなんとも無いが、もともとルカ君には爆弾のついた首輪が嵌められていた。ルカ君に聞いた所、ヴォルフにユズル君の暗殺に失敗したら殺すつもりだったそうだ。いや、もしかすると失敗しなくても殺すつもりだったかもしれない」


 ディッツさんが首輪を目の前の机にコトンっと置く。

 それを見た衛兵は驚き距離を取る。

 絶望感漂うその顔には「はやく仕舞ってくれ」と言わんばかりだ。そりゃそうだ。「既に爆弾としての効果はない」と説明してないからな


「つ、つかぬことをお伺いしますがその爆弾ってもしかして爆発が……」


 しどろもどろになりながらディッツさんに爆弾のことを衛兵が聞く。「心配するな、もうこちらで爆発させて爆弾としての機能はない」と説明すると、キンッと反応し、先程まで透き通っていた審判の水晶が青く光る。

 2人の衛兵は安堵し元の位置に戻る。


「例え購入した奴隷だとしても殺すことは違法だよな? 暗殺を依頼するのももってのほかだ。その首輪を調べてくれたら恐らくヴォルフの魔力 もしくはネイマール商会の人間の魔力が出るだろう。今言った証言が嘘だと思うなら二人に質問をしてくれて構わない。審判の水晶については既に話ししてある」


 恐る恐る衛兵は質問を出す。


「えっと……ユズルさん、ルカさんの2人に聞きます。今のディッツさんの証言に嘘や偽りは含まれますか?」

「含まれてません、事実です」

「嘘はついてないよ」


 キンッキンッと2度水晶が青く輝く。

 衛兵が驚く。無理もない、王都で2番目に大きなネイマール商会の不祥事だ。驚くなという方が無理だろう。


「ではルカさんに聞きます。貴方がここに来るまでの行動を教えて下さい」

「ボクは元々両親の尻拭いで奴隷に入れられたんだ。借金奴隷というものだね。それで冷たい牢屋の中を日々過ごしてたところにヴォルフが来てボクの事を買っていったんだ。その日のうちに首輪を付けられたよ。『アルベルト商会にいるユズルを殺せ。殺さなければこの爆弾を爆発させる』という脅し文句付きでね」


 水晶が青く光る。そんな水晶の結果に目もくれずルカは説明を続ける。


「その後なんとかユズル君を見つけ何度か尾行した。そしてスライムの群生地で彼と戦い敗北した。が、彼はボクの事を許してくれた。そしてスキルで爆弾を取り除いてくれたんだ」


 ルカは声が震えるのを誤魔化すように早口で言った。


「その後ボクは奴隷商に連れて行ってもらい、彼の奴隷になった。奴隷紋の強制上書きだ。強制上書きは奴隷商の規約でどこの奴隷商で行ったかは言えないけどね。そしてアルベルト家に彼と一緒に行ってみんなに説明した。条件付きだけどみんな許してくれた。仲間になってくれた。そして現状に至るというわけさ」


 勿論嘘をついていないので水晶は青く光る。


「では次はユズルさんに聞きます。リースさんを助けたところから今に至るまでどのような行動を取ったか教えて下さい」


 色々有りすぎるからどうしようか。とりあえず重要になりそうなところだけ話せばいいかな?


「リースを助けた後は俺のスキルでリースとその時の荷物をアルベルト家まで運びました。そしてアルベルト家で厄介になっており、知り合いとカルディアへ行ったり、王都を散歩したり、スライムを倒したりしてました。ある日スライムを倒しているとクナイが飛んできたので、その方向を見るとルカが居ました」


 ディッツさんもルカも真剣に話を聞いてくれる。

 衛兵は相変わらずカリカリと調書を取っており、もう1人の衛兵は水晶と俺の顔を何度も見つめる。


「突如ルカが襲ってきたので戦闘を始め、運よく勝つことが出来たので話を聞いてみると、彼女の半生と俺の過去が重なって見えたので助けたいと思った。そこで俺のスキルで首輪を外し、奴隷商で奴隷紋を付けてもらい、後はルカとずっと一緒にいたから同じだ」


 勿論水晶は青くなる。

 赤色を見たことがないから本当に嘘ついたら赤色になるのかが疑問に思うほどだ。


「青色……ですね。わかりました。本件につきましてはこちらで調査致しますのでお待ち下さい」

「あぁ、よろしく頼むよ」


 ディッツさんはそう言い残し外に出ようとする。

 俺とルカは軽くお辞儀を行い、陽の光を浴びた。

読了いただきありがとうございます。

本編投稿は毎週月水金の3日、閑話投稿日は前話の翌日投稿となります。

詳しい投稿日時については活動報告書を参照ください。


投稿時間については全編一括18時半となります

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