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錬金術師のポーション屋。疲れたときはやっぱりこれ  作者: ChaCha


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41/112

親の声は止められないが、距離は取れる

「店主! もう限界なんです!」


扉がカラン、と勢いよく鳴った。

入ってきたのは、肩で息をする若い男。


「トイレはあっち」


「ありがとう。じゃなくてですね!

母ちゃんがウザいんです!!」


勢いそのままに続く。


「過干渉というか!

朝から晩まで口煩いんです!

起きろ、食え、働け、結婚はどうする、

服がだらしない、靴が汚い、

あと“あんたのため”ってやつ!!」


……はい、長期戦の匂い。


クリム「きゅ……(重い)」

ルゥ「わふ(逃げ場なし)」



俺はカウンターに肘をついた。


「同居?」

「はい……」

「年齢」

「二十六……」

「自立は?」

「金はあるけど、

出ていくって言うと泣く」


「あー……」


これは“悪意ゼロ・圧マックス”のやつだ。


「確認するぞ」

俺は淡々と言う。


「母親を黙らせたい?」

「……正直、はい」

「無理だ」

「ですよね!!」



俺は続ける。


「お前の問題はな、

“干渉される”ことじゃない」


男が顔を上げる。


「え……?」


「自分の境界線が、

家の中に存在してない」


クリム「きゅ(境界線)」


「言われるたびに反応して、

説明して、反論して、

そのたびに消耗してるだろ」


男は黙って頷いた。



俺は棚から小瓶を三本、並べた。



最初の一本。


「これは、

言葉を真正面から受け止めすぎないやつだ」


「無視できるんですか?」

「違う。

“全部が重要じゃない”って

身体が判断する」


男は深く息を吐いた。


「……それだけで助かるかも……」



二本目。


「こっちは、

会話の途中で感情が爆発しにくくなる」


「キレなくなる……?」


「キレないんじゃない。

“間”ができる。

一拍置いて、

“今は答えなくていい”って選べる」


ルゥが「わふ」と低く鳴く。

“その間が命綱”の合図だ。



三本目。


「これが一番重要だ」


俺は一番小さい瓶を指で弾いた。


「自分の時間を

“許可なく確保できる”やつだ」


男が首をかしげる。


「……どういう……」


「外出、部屋にこもる、

返信を遅らせる。

罪悪感が減る」


男の目が、少し潤んだ。


「……俺、

自分の時間取るたびに

悪いことしてる気分で……」


「それが一番削られてる証拠だ」



男は三本を見つめ、

しばらく黙ってから言った。


「……母ちゃん、

悪い人じゃないんです」


「知ってる。

だから余計きつい」


クリム「きゅ(それ)」


俺は最後に言う。


「親はな、

子どもが“大丈夫そう”だと

安心して口を出す」


男が目を見開く。


「……え?」


「だからまず、

“一人で回ってる姿”を

見せろ。

説明じゃなく、状態でな」


ルゥが男の膝を鼻先で押す。

「わふ(出ろ)」


男は瓶を受け取り、

小さく笑った。


「……今日、

まっすぐ帰らず

散歩してから戻ります」


「それでいい。

帰る時間を

自分で決めろ」



扉が閉まる。


俺は棚を整えながら、ぼそっと言った。


「……過干渉はな、

愛情と不安の合体事故だ」


クリム「きゅ……」

ルゥ「わふ(距離は大事)」


さて次は――

「親の期待が重すぎる」か、

「親の老いが怖くなってきた」か。

……どっちも、

逃げ場を用意してやらねぇとな。



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