↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
錬金術師のポーション屋。疲れたときはやっぱりこれ  作者: ChaCha


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
40/343

親の声は止められないが、距離は取れる

「店主! もう限界なんです!」


扉がカラン、と勢いよく鳴った。

入ってきたのは、肩で息をする若い男。


「トイレはあっち」


「ありがとう。じゃなくてですね!

母ちゃんがウザいんです!!」


勢いそのままに続く。


「過干渉というか!

朝から晩まで口煩いんです!

起きろ、食え、働け、結婚はどうする、

服がだらしない、靴が汚い、

あと“あんたのため”ってやつ!!」


……はい、長期戦の匂い。


クリム「きゅ……(重い)」

ルゥ「わふ(逃げ場なし)」


⸻


俺はカウンターに肘をついた。


「同居?」

「はい……」

「年齢」

「二十六……」

「自立は?」

「金はあるけど、

出ていくって言うと泣く」


「あー……」


これは“悪意ゼロ・圧マックス”のやつだ。


「確認するぞ」

俺は淡々と言う。


「母親を黙らせたい?」

「……正直、はい」

「無理だ」

「ですよね!!」


⸻


俺は続ける。


「お前の問題はな、

“干渉される”ことじゃない」


男が顔を上げる。


「え……?」


「自分の境界線が、

家の中に存在してない」


クリム「きゅ(境界線)」


「言われるたびに反応して、

説明して、反論して、

そのたびに消耗してるだろ」


男は黙って頷いた。


⸻


俺は棚から小瓶を三本、並べた。


⸻


最初の一本。


「これは、

言葉を真正面から受け止めすぎないやつだ」


「無視できるんですか?」

「違う。

“全部が重要じゃない”って

身体が判断する」


男は深く息を吐いた。


「……それだけで助かるかも……」


⸻


二本目。


「こっちは、

会話の途中で感情が爆発しにくくなる」


「キレなくなる……?」


「キレないんじゃない。

“間”ができる。

一拍置いて、

“今は答えなくていい”って選べる」


ルゥが「わふ」と低く鳴く。

“その間が命綱”の合図だ。


⸻


三本目。


「これが一番重要だ」


俺は一番小さい瓶を指で弾いた。


「自分の時間を

“許可なく確保できる”やつだ」


男が首をかしげる。


「……どういう……」


「外出、部屋にこもる、

返信を遅らせる。

罪悪感が減る」


男の目が、少し潤んだ。


「……俺、

自分の時間取るたびに

悪いことしてる気分で……」


「それが一番削られてる証拠だ」


⸻


男は三本を見つめ、

しばらく黙ってから言った。


「……母ちゃん、

悪い人じゃないんです」


「知ってる。

だから余計きつい」


クリム「きゅ(それ)」


俺は最後に言う。


「親はな、

子どもが“大丈夫そう”だと

安心して口を出す」


男が目を見開く。


「……え?」


「だからまず、

“一人で回ってる姿”を

見せろ。

説明じゃなく、状態でな」


ルゥが男の膝を鼻先で押す。

「わふ(出ろ)」


男は瓶を受け取り、

小さく笑った。


「……今日、

まっすぐ帰らず

散歩してから戻ります」


「それでいい。

帰る時間を

自分で決めろ」


⸻


扉が閉まる。


俺は棚を整えながら、ぼそっと言った。


「……過干渉はな、

愛情と不安の合体事故だ」


クリム「きゅ……」

ルゥ「わふ(距離は大事)」


さて次は――

「親の期待が重すぎる」か、

「親の老いが怖くなってきた」か。

……どっちも、

逃げ場を用意してやらねぇとな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。