第二部 歴史の始まり ―鉄の時代―
半島・大陸に最も近しいツクシの島、そして幅広い海岸をもって潮流を受け止めるイズモ・コシの連合、タンバ・ツルガの狭い入口と、きわどく関門海峡を抜けて瀬戸の内海を急行する搬入路をこじ開け勃興するヤマト。
ツクシとイズモの隙間を縫って、瀬戸の内海へと引き込む、この危うい道を通るほか生きる道のないこのヤマトへの港口を、セッツ、イズミの連合勢力ニギハヤヒが封鎖する。ニギハヤヒとて、各所からの荷があつまるナニワ津を独り占めしているのではない。豊かな貯えを奪おうと日夜襲われる恐怖に身を固めているだけである。そして窒息するヤマト。
イズモ・コシの間を縫ってタンバ・ツルガが運ぶ鉄も、セッツでニギハヤヒに押さえられる。近距離でも海岸からの山越えルートを使わざるを得ない彼らの運搬量にはおのずと限りがあり、川幅もまたそれを絞る。瀬戸内海の水運を使わなければ、いずれヤマトの鉄は枯渇する。万年の栄華を誇ったあのサヌカイトの民の絆が、鉄の時代になってその内側から崩壊しようとしていた。この島の民同士の争いが、ここで起きていた。そして高天原、あの石のまほろばの地アキが、その存亡をかけて、ウサを東のフロンティア、ヤマト救援へと向かわせる。
プロローグ
時は戻って、暑さの時代、ヒダの地は、厚く森に閉ざされた秘境へと化していた。そのかれらの遠く北に広がった海は、遠く離れた地を結ぶ新たな道となった。
この新しい海の道を伝って東西の怪物が縁を結ぶ。西のイズモと東のコシのこの二つの巨魁の縁は、北の海を一つに束ね、とてつもなく強大な勢力へと育っていく。
寒さの頃、一度は雌伏の時を過ごし、辛酸をなめつくしたコシは、暑さの戻りによって再び活路を得た無尽蔵の珪質頁岩の石器を礎に、そして何よりも彼らにのみ天から与えられたあの貴石、翡翠の力によって復活を遂げる。




