半島の同胞たち
半島の同胞たち
半島の東南一帯には、まだ、倭人たちが多く住んでいる。かれらはまだあの海進で、この半島が平地のほぼすべてを失っていたころ、アカホヤの災厄から逃れてそのかろうじて残された陸に住み着いた倭人たちの末裔である。その倭人たちの地の北辺は、弁韓と呼ばれるようになっていた。
その弁韓が馬韓の毒に侵されなかったのは、彼らが倭人であり、彼らとは違う言葉を話していたこと、そしてなにより、海を渡って逃げればいつでも同胞が暖かく迎え入れてくれるという心の拠り所があったからかもしれない。そして何よりも、彼らの足元で産出される鉄は、彼らに抗う力を与えていた。
弁韓の東北にあって、一度は馬韓に飲み込まれそうになった辰韓もまた、かつて馬韓に受け入れを拒絶されてこの地に向かい、その地で倭人たちと混ざり合い、鉄を教え、分け合う仲間となっていた中華の残党たちであった。彼らと弁韓との間にははっきりとした境界もないと中華の古の書は伝える。彼らは倭人たちと似た言葉を話し、文身をし、同じような衣服を纏う、倭人たちの親族であった。ただ、中華に根を持つ彼らは、馬韓の使う毒を彼ら以上に知り尽くしていた。
その絆ゆえに、ツクシは弁韓を通じて、それからイズモやアナト、そして、かつてセッツから娶った妻を侮辱して逃げられ一族から叩き出されて逃げてきたなどと後に記されてしまう、その辰韓から来た男もまた、腰を下ろしたタジマの地から彼らを支えた。
馬韓による半島統一は、こうして阻まれ、島の対岸への鉄の流れは止むことなく続けられた。ただ、その代償として、半島では血で血を洗う闘争が果てしなく続いていく。




