第2話 判決 -Sentence-
朝。
薄汚れたブラインドの隙間から、白い光が差し込んでいた。
狭いアパートの一室。
テーブルの上には、食べかけの安いハンバーガーと空き缶。脱ぎ捨てられた作業着。壁際には、宅配会社のロゴが入った古いバッグが無造作に置かれている。
ベッドでは、ジェイク・ウォーカーが毛布にくるまり、眠っていた。
突然――激しいノック音が部屋に響く。
ドンドンドン!!
ジェイクは眉をしかめ、小さく唸った。
「……なんだよ……」
再び、今度はさらに強く扉が叩かれる。
ドンドンドンドン!!
「ジェイク!! 開けろ!!」
眠そうに身体を起こし、頭を掻きながら時計を見る。
午前七時十二分。
「こんな朝っぱらから誰だ……」
重い身体を引きずりながら、ジェイクはドアへ向かった。
ドアスコープを覗いた瞬間、眠気が吹き飛ぶ。
数人の警察官。
黒い制服。防弾ベスト。腰にはスタンガン。小型武装ドローンまで浮かんでいる。
しかも全員が、こちらを見ていた。
「……なんだよ」
再び怒鳴り声。
「ジェイク!! ドアを開けろ!!」
ジェイクは舌打ちした。
昔なら、迷わず窓から逃げていた。
だが今は違う。
もう、あの頃の自分ではない。
ゆっくりと鍵を開け、ドアを開く。
同時に、警察官たちが一気に部屋へなだれ込んだ。
「動くな!!」
ジェイクは反射的に両手を上げる。
「おいおい待てよ。何かの間違いだろ?」
先頭の中年刑事が、冷たい目で端末を確認した。
「ジェイク・ウォーカー」
低い声が響く。
「殺人容疑で逮捕する」
一瞬、空気が止まった。
「……は?」
刑事は感情のない声で続ける。
「君には黙秘権がある。ここで話したことは、法廷で不利な証拠として使用される可能性がある」
別の警官が後ろへ回り込み、ジェイクの腕を掴む。
「弁護士を依頼する権利がある。依頼できない場合は、国選弁護人が選任される」
「待て……殺人ってなんだよ……」
ジェイクの声が低くなる。
「誰が死んだ?」
刑事は無言のまま、端末画面をジェイクへ向けた。
そこに映っていたのはニュース映像だった。
女性の顔写真。
そして大きな文字。
《EDEN開発企業CEO妻
ソフィア・ケイン殺害事件》
ジェイクの顔色が変わる。
「……知らねぇよ」
刑事は答えない。
代わりに、機械音声が静かに響いた。
『AI司法システム照合完了』
『容疑者一致率99.98%』
その瞬間。
ジェイクは、自分の人生が終わったことを理解した。




