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298・回収と脱出って話

デイジー叔父さんがフランコと対峙してその動きを牽制している内に俺たちはセヴェリーノの所まで急いだ。

デイジー叔父さんの放り投げたバルディーニを回収していったあの人影も気になる所ではあるが、今は気にしている暇はない。

デイジー叔父さんのおかげか、フランコが俺たちやセヴェリーノに何かをする事はなかった。


「セヴェリーノ、大丈夫!?」


「……ヒイロか。あぁ、大丈夫だ、さっきので全魔力をぶっ放したからな。もう意識を保ってるのもやっとで、下手したら中の雷神が表に出てきそうな程度には大丈夫だ」


「全然、大丈夫じゃなさそう!? 大丈夫なのそれ? 中の雷神が表に出て、あのフランコの仲間になるとか――」


そこまで口にした瞬間、バヂンッ、といきなり俺の間近で火花が散った、何事かとびっくりしているとセヴェリーノが苦笑いをしながら、口を開いた。


「あー、今のはヒイロの失言だ。中の雷神がふざけた事言うなとちょっと怒ってる、ただ、それ以上にアレが許せないってさ。同郷の神だからこそ、この世界の神の身体で受肉したのが腹立たしいんだと」


「神様のお怒りポイントは俺には全く分からないけど、今出ていってもたぶん取り込まれて終わりだと思う。今のあのフランコは魔王躯体を取り込んでる、そのせいで魔王国の人とは相性が絶望的に悪い状態みたいだから、どんな攻撃もさっきと同じように吸収される。セヴェリーノだって魔王国の人だから、セヴェリーノの身体を雷神様が動かしてもたぶん結果は変わらないはずだ」


「んー、それでも一発ぶん殴らないと気が済まないって言ってる。今、おいらが気絶するとたぶん、雷神が身体の主導権を奪ってアレに襲いかかるな、それはそれとしてたぶんデイジーにも襲いかかるぞコイツ。前にデイジーと戦った時、自分にもやらせろって言ってたし」


「それはフランコの仲間になるのとどう違いがあるので――ごめんなさい!!」


俺が言い切る前に周囲からバチバチと放電音が聞こえてきたので即謝罪する。

まったく、これだから神様ってやつは……。


『呑気にお喋りしてる暇ないもんよ!! 急いで離れるもん、もうあっちは一触即発もん!! もし、そいつに宿ってる異神が取り込まれでもしたら、今以上にとんでもない事になるもん、そいつの意識がある内にとっとと離れるもん!!』


マレッサの言う通り、早く離れた方がいいだろう。

デイジー叔父さんとフランコから剣呑な雰囲気が漂ってきている、空間も何だか歪んで見えるほどだ。


「ごちゃごちゃうるさいんですけどー、ザコお兄さんもバチバチおじさんもお喋りは後にしてくれない? 運ぶのフィーニスちゃんなんですけど」


「バチバチおじさ――」


ガクリと肩を落とし、フィーニスの言葉に若干のショックを隠せないセヴェリーノ。

まだ若そうだけど、やっぱりおじさんって呼ばれるのはショックなんだな。

フィーニスがうなだれるセヴェリーノを岩で固めた腕で無造作に掴み、この場から離れようとした瞬間、突風が吹き荒れ、気づくと目の前に闇の炎が混ざった風の壁が現れていた。


「なッ!? これは――」


『ちょっと遅かったもんか、これは冥域の炎が混ざった風、死の竜巻の中に閉じ込めらたもん!! あいつ、さっきのバルディーニの冥域の炎の攻撃を吸収して再利用しやがったもん!! フィーニス、その風に触っちゃあ駄目もんよ、お前でも危険もん!!』


マレッサが焦った様子で目の前の風から離れるよう促す、デイジー叔父さんを前にしてフランコに俺たちを閉じ込めるような余裕があるとは思わなかった。

フランコを中心に広がるこの死の竜巻、とんでもないデカさだし巻き上げられた土や岩のせいで外の様子がまったく見えない。

この分厚い風の壁を突き抜けるのは冥域の炎がなかったとしても難しいだろう、竜巻である以上真上には風の壁はなく空が見えているが、すんなりと出られるとは思えない。

だが、何があろうとデイジー叔父さんならなんとかしてくれる。


「フィーニス、真上から抜け出せる、後ろは気にせずに一気に行ってくれ!!」


「ザコお兄さんがそこまで言うなら!!」


風の壁から少し離れ、俺たちを抱えたままフィーニスは一気に加速して真上の開けた空へと向かう。

ちらりとデイジー叔父さんたちの方に目をやったが、まだ二人は対峙したまま動いていない。

だが、セヴェリーノに宿る雷神を取り込もうとフランコは必ず動く、そうでなければこの竜巻の壁で俺たちを逃がさないようにするはずがないのだから。


「ナルカ、下から何か来たら対処を頼む、マレッサも疲れてるだろうけど、ナルカを手伝ってやってくれ!!」


「わかったー、まかせてー!!」


『手伝うくらいならなんとか――って言ってる間に来たもんよ!!』


凄まじい速度で真上を目指す移動の風圧で俺はうっすらとしか目を開けていられないが、見なくても感じる程の圧が下から迫って来てるのが分かる。

竜巻に混ざる冥域の炎からの死の視線も入り混じり、もう何が何やらって感じだ。


「うわーなんかいっぱい来てるー、ぜんぶ死なすー!!」


『神位魔法を使える程の余力はないもんから、あまり補助は期待しないでほしいもん!! 補助魔法、全能力超向上ブーストアップ・オーバーリミット!!』


マレッサの魔法の効果なのか、マジックバッグから身を乗り出してるナルカが淡い緑色の光に包まれた。

ナルカはスライムの身体を波打たせて、なにやらはしゃいでいるように見える。


「なんかすごーい!! 人間さんの信仰よりはぜんぜんだけど、なんかすごーい!!」


『まぁ、絶位以下の補助魔法もんからね、そんなものもん。ナルカ、下から来てる岩とか火とか水とか風とか冥域の炎とか諸々死なすもん!!』


「わかったー!! 死なすー!!」


その言葉のすぐあとにナルカが下に向かって魔法陣を展開し、何か黒い物を発射し始める。

凄まじい音が響き渡り、もうマシンガンみたいな感じの破裂音でなんだか心臓に悪い。


「それって、ナルカの一部を発射してるみたいなんだが、身体に悪影響とかないのか?」


「ないよー、なんかまだいっぱいあるし、食べれば戻るよー」


食べれば戻る……やはり身体の一部を発射してるようだ、悪影響はないらしいので一安心だが、無理はしてほしくない所だ。


「そうか、なら、色々終わったらご飯でも食べに行くかみんなで」


「わーい、ごはーん!!」


ナルカははしゃぎながら更に射出速度を上げていく、これもマレッサの補助魔法のおかげなのだろう。

下の方でドガガガガッと破壊音が響いている、ナルカが良い感じに下から来る物を防いでくれている証拠だ。

この速度なら、あと数秒足らずでこの死の竜巻から脱出する事が出来る。

そこで俺は奇妙な違和感に気付いた、空が狭くなっている、いや、正しくは空ではなく竜巻の真上に空いた空間が閉じているのだ。

竜巻が閉じる事なんてあるのかどうかなんて考えても意味はない、元々普通の自然現象なんかじゃあないのだし。

フィーニスもそれに気づいているようで加速し、更に速度を上げた。

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