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22話

 トレント君の話しを聞いて僕は怒りを覚えた。

 ありえない、人柱って。

 エルフにとって、妖精は信仰の対象なんだと感じていた。

 古事記を読んだなら、妖精にも話を聞けばいいじゃないか!

 自分たちの先祖が残したものは信じて、大事な妖精たちの話は聞かないのか!

 この世界には、この世界の常識があるのかもしれないけど、僕には考えられない、認められない!


 「でも、どうして君はそんな事を知っているの?」


 「彼女と同化し、感情や記憶が私にも流れ込んできたのです」


 「そっか。君も辛かったね」


 「勿体なき、お言葉です」


 「それで、彼女は生きてるのかな?」


 「まだ、生きております。しかし、徐々にではありますが、力は失われつつあります」


 「解放できないかな?助けてあげたいんだ」


 「解放はできます。しかし、大部分が私と同化が進んでいるため、無理やり引きはがす形になりますので、その際に彼女の体力が持つかわかりません」


 「大丈夫、僕がすぐに世界樹の力で回復させるから。君は大丈夫なの?」


 「ご心配、ありがとうございます。多少の負担はあるでしょうが、彼女ほどではないかと思われますので」


 負担があるんだ。

 彼女を回復したら、君も回復してあげるよ。

 なんか遠慮しそうだから、今は黙っておく。


 「そうだ、他の二人の場所もわかるかな?それと、結界を解くとエルフ達にばれるかな?」


 「他の二人の場所はわかります。結界については、大丈夫かと思います。制御されている感じはありませんので。しかし、見回りのエルフが1日に1度確認にきますので、その時に露見するかと思われます」


 「見回りの時間ってわかる?」


 「だいたい、昼ごろに現れます」


 結界の制御装置みたいのがあったら厄介だけど無いならなんとかなるかな。

 ハイエルフの3人を助けて、妖精達と協力してなんとか脱出しないとね。

 不安としては、エルドラードに入るときに見た結界、自称昼行灯のお姫様、王様に言われて育てた知らない花。

 まぁ、お姫様の方は無視してもよさそうだけど。


 でも今は、目の前のハイエルフを助けよう。

 まだ朝になるには、時間もある。

 他の2人のハイエルフの場所も分かっているなら助けだして、妖精達を閉じ込めている、結界を解くしかない。


 「じゃあ、お願い。彼女を解放して」


 そういうと、トレントはの体は震え彼女を捕えていた根はぶちぶちと音を立て、無理やり引きちぎっているかのように痛々しい。

 僕はその瞬間に目を背けてしまった。

 ドサッっと彼女が地面に倒れた音で目を向ける。

 同化が進んでいた為、皮膚が破れ、出血が激しい。

 僕は彼女に近づき、世界樹の力を使う。

 助かってほしい。

 助けたい。

 世界樹の癒しの力は彼女の破れた皮膚を治し、出血を止める。

 血は止まった、息もしている。

 良かった、成功みたいだ。


 彼女は目を開けた。


 「ここは……」


 「良かった。気分はどう?痛いところはない?」


 ハイエルフの彼女は僕と目が合うと、驚いたように目を大きく開けた。


 「あなたが…、いや、助けていただき、ありがとうございます」


 そう言って、彼女は起き上がり、僕に跪き頭を下げた。


 「えっ!?そんな畏まらないで」


 「目が覚めて、あなた様を見た瞬間に理解しました。あなたに仕えるんだと」


 助けられたから、相手に仕えるっておかしいでしょ。

 そこまで、望んでないよ。

 僕が困っていると、トレントが教えてくれた。


 「あくまで推測ですが、王の眷属と私がなった時に同化していた為、この者にも影響が出たのではないでしょうか」


 マジですか!?

 協力はしてもらおうと思ってたけど、眷属は考えてないよ。

 彼女は無理やり、人柱にされて、目が覚めたら強制的に僕の眷属になっていたとか、最悪の気分じゃないだろうか。


 「眷属ですか。確かにそうかもしれません」


 「ご、ごめんね。助けるためとはいえ、眷属だなんて」


 「いえ、お気になさらないで下さい。それに、薄らとですが意識がありましたから。あなた様が私を助けるためにしてくれた事はわかっています」


 ハイエルフの彼女はそう言って、笑顔だった。



 僕は彼女を連れて、事情をお互い説明しつつ、他の2人のハイエルフがいる場所に向かっている。

 彼女の名前はグリセラ。

 彼女達ハイエルフの立ち位置としては、エルドラードにおいての相談役らしい。

 グリセラ達ハイエルフも古事記に書かれていた事を気にしてはいたが、自然の象徴ともいえる妖精を閉じ込める事については、反対派だったらしい。

 エルフ達も一枚岩ではないみたい。

 王を中心ととした過激|(妖精を閉じ込めちゃえ)派、ハイエルフを中心とした穏和|(自然の流れにまかせよう)派の2つに分かれていたらしい。

 だが、妖精の数は減少傾向にあり、ハイエルフ達も内心ではなんとか妖精の流出を食い止めたいと思っていた。

 そこに、研究者のエルフが妖精に心地よく暮らせる研究のために血を欲し分けてほしいと提案され、妖精が住みやすくなるならと、ハイエルフは血を提供した。

 その血がまさか妖精を閉じ込める結界の研究とは知らなかった。


 「私たちはまさか自分たちの種族に騙されるとは思っていなかったのです」


 グリセラは申し訳なそうに謝った。

 その姿は、どこか寂しそうに見える。

 気持ちはわかる。

 僕もエデンのみんなに騙されるなんて想像できない。

 エルフ達は精神的に追い詰められ、何が最前なのか、わからなくなったんだろうな。



 見張りを気にしての移動だったが、見つかる事はなく、無事残り二人のハイエルフも解放できた。

 眷属にしてしまったけど。

 ハイエルフ3人は眷属になったことは、気にしていないようだった。

 眷属になったから大丈夫かなと思い、僕が世界樹の化身?世界樹そのものだと伝えると、すんなり納得してくれた。


 「うまく説明できませんが、ユキ様からは不思議な力を感じていました。これがハイエルフとしてなのか、眷属としてなのかはわかりませんが」


 グリセラ達はそれだけで納得し、世界樹の力になれることが光栄だとも言ってくれた。

 3人を無事解放できたので、一旦、ドーガ達の元に戻る。




 ドーガ達は、グリセラ達ハイエルフ達をみて最初は警戒していたが事情を説明すると、怒られた。


 「あれほど、勝手に動くなと言ったろう!何かあれば、まず我らに相談してからだと!」


 「申し訳ありません、ドーガ様。私も助けられたときは、早く仲間を救ってもらいたく、事情を察せませんでした。どうかお許しを」


 「グリセラ殿といったか。ハイエルフ達3人の境遇を考えればしょうがないともいえる。だが、ユキにそれでは困るのだ」


 えー、だってしょうがないじゃん。

 話しを聞いたら、すぐに助けなきゃって思ったんだ。

 それに結界も解けるし、すぐに逃げればいいじゃんか。


 「その顔はわかってないみたいだな」


 「結界を解いたから、後はエデンに逃げるだけじゃないの?」


 「昼には結界が解かれてる事が、エルフ側にも伝わるだろう。そうなれば、奴らは我らを武力をもって対応する可能性が高い。ここにいる妖精たちに先に話を通し、一斉に行動できれば、まだよかった」


 だから、今から妖精達を呼んで早く逃げようよ。


 「いいか、今から妖精達にもちろん伝えるが、前もって行動しておく準備をするのと土壇場で行動するのは違う。もっと思慮深くなれ」


 「ごめんなさい」


 思慮深く。

 ドーガの言葉は重い。

 安全に行動する機会を僕がつぶしてしまった。

 もちろん完璧に安全に逃げだせるわけじゃない。

 それでもその可能性の高いルートを僕が潰してしまった。


 近くにいた、妖精達にも手伝ってもらい、僕たちは動く。


 そして、夜が明ける。

 

 

 

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