21話
夜になって、僕はなんちゃってギリースーツを着てませんでした。
なぜかみんなに止められた。何故だ?
馬鹿正直に出入り口に行くのは見つかると思ったので、遠いけど反対方向から僕はいく事にした。
見張りがいるかと思ったけど、いなかった。
結界を破られない自信があるんだろうけど、いいのか、それで?
僕にはありがたいけど。
簡単に柵はこえられた。
しばらく、移動してると、レンガの家ではなく、石造りのお城が離れた所に見えた。
各所に明かりがともされて、夜に見るとちょっと怖い。
ファンタジーのお城、興味あります。
見つからない自信がないので、また今度。
さすがに見張りもいるだろうし、僕には荷が重いよ。
どこにいこうかな?
見つからないように移動するのって難しい。
夜だからまだましですが。
取りあえず結界の近くから手がかりを探した方が何か見つかるだろうと思い、引き返す。
お城の位置が分かっただけでも良しとする。
ふぅー。
初日からそんな手がかりが見つかるわけもないか。
でも、このまま帰るのもなんかなぁ。
まだまだ時間はあるし、もうちょっとだけうろついても大丈夫だよね。
結界の外回りを歩くけど、特になんも見つからない。
疲れて来たので一休みでもしようかな。
そう思って、近くの樹の根元に腰を下ろして、もたれかかった。
っ!
背中に当たる感触がむにゅっと柔らかくて、びっくりして、振り返る。
っ!?
恐怖で声が出なかった。
そこには、人が樹に取り込まれていた。
どう伝えればいいのか、その人は座った状態で体の後ろ半分が樹にのめり込んだようになっていて、見えている部分も樹の根に絡み取られ、同化してるように見える。
「い、生きていますかー?」
僕は、小声で話しかけるけど、反応はない。
死んでるのかな?
ホラー映画だと、触ろうとしたり、触ったりしたら急に目が開いたり、手をつかまれたりするパターンじゃん。
絶対触ったらダメ。
なんか、都合よく木の棒とか落ちてないかな。
小石しかない。
さすがに石を投げるのは、気が引けるしなぁ。
取りあえず戻ってみんなに相談しよう。
走って逃げた。
僕は皆のもとに戻ってみてきたことを報告する。
「大変だ!女の人が樹になんか絡んで!死んでた!あっ、それとお城も見えた」
全員、ぽかーんとしてた。
「はぁ、王様。嘘を言う時は、もっとうまく言わないと駄目だよ」
なぜかその場にいたパックがため息を吐きながら言った。
「例えば、って痛い!痛いよ!王様!まだ何も言ってない!」
取りあえず両手でグーを作ってパックの頭をグリグリ。
こいつは全然懲りてないから
グリグリグリ。
「ごめんって、頭の形が変わっちゃう!」
「落ち着いて、ユキ様ぁ。後でその子は私が懲らしめておくから」
「理不尽だ!僕何もしてないのに」
パックはフェルミナの笑顔に黙らされた。
フェルミナに言われて、パックの頭を解放する。
うん、なんか落ち着いてきた。
パックには、イライラさせられるけど、落ち着いてきた。
「それで、何があったのだ?始めから話してくれ」
ドーガ達精霊と、その場にいた妖精たちに僕が見てきたことを話した。
「ふむ、樹に取り込まれた女か」
「そんなの聞いた事ありませんねぇ」
みんな知らないみたいだ。
桜の木の下には死体が埋まってる怪談話は聞いたことあるけど、樹自体に埋まってるのは初めてです。
でも植物のお化けに人が取り込まれて、取り込んだ生き物から養分を吸い取るとか、ホラーアニメで見たことあるような……ってことは、あの樹は物の怪の類か!
めちゃ恐い。
エデンにいるトレント達には、食べちゃダメって御触れをだそう。
「その樹はトレントのようなものなのか?ユキも同じような事は可能か?」
ドーガさん、何言ってんの?
僕、元は人間ですよ。
人間なんか食べるか!
可能であってもするか!
そんな事、僕自身が不可能だ!
「トレントが人を取り込むのは聞いたことないですぅ」
フェルミナさん、ナイスフォローです。
それから、パック。
何故、僕から距離を取る。
後で、グリグリしてやる。
「トレントならユキに気が付いて話しかけると思うが。どうなのだ?」
ん?そんなことは、なかったような気がする。
「あの時は、怖かったから確認なんてできなかったよ」
「では、明日の夜に確認するしかないな」
「そうですねぇ、ユキ様お願いしますねぇ」
お二方、あの場所にもう一度行くんですか、誰か一緒に来てください。
「ユキしか動けんから、仕方あるまいな」
ですよね、わかっておりました。
「あと、もしトレントでない場合は、眷属して話を聞くんだぞ」
「えっ、マジ!?」
「折角の手がかりなのだ、当たり前ではないか」
ドーガさん、厳しい。
当たり前ですか、そうですか。
眷属にするのって触らないといけないんだよ!
あの樹に触るのは勇気がいるんだよ!
夜だし、一人は怖いだよ。
「もしかして、王様。怖いの?ビビってんの?」
「ビビってない!」
あっ。
フェルミナが無言でパックを殴った。
ノームとシルフの二人がパックを引きずって退場していく。
「あのお馬鹿さんは、私が後でお仕置きしておきますのでぇ。ユキ様は頑張ってくださいねぇ」
「う、うん。が、頑張るよ、フェルミナ」
フェルミナは相変わらず、優しい笑顔を僕に向けてくれた。
フェルミナお姉さんには、逆らわない。
エデンの法律として、いや、憲法にしておこう。
しかし、本当にエデンの精霊は脳筋かもしれない。
パックよ、成仏したまえ。
次の日の夜、僕はあの樹のとこまで来ていた。
「お~い。生きてますか~」
小声で呼びかけるけど、反応はない。
恐る恐る、樹に近づく。
やっぱり普通の樹に見える。
トレントじゃないみたいだし。
これ、眷属にしてもほんとに大丈夫なんだろうか?
新しいモンスター誕生とかにならないでね。
僕は樹に手を触れて、マナを送りながら語りかける。
樹さん、樹さん。
僕の眷属になりましょう。
できたら、君にめり込んでる人を解放しよう。
人から養分なんかとっちゃダメ。
エデンについてきたら、僕が特製の栄養剤をあげるから。
おっ、動き出した。
成功かな。
相変わらずしまらない、眷属の増やしかただなぁ。
トレントは僕を見ると、
「眷属として王に忠誠を」
「こんばんは、新たな眷属さん」
ちょっと偉そうかな?
恐いから、逆に僕の方が偉いんだアピールなんだけど、気、悪くしてない?
「さっそくなんだけど、その子は?」
僕は、めり込んでる人の事を聞く。
「彼女はハイエルフです」
えっ?!ハイエルフがなんでめり込んでんの?
彼女って女の人だったの?
「えっと、なんで君にめり込んでんの?」
「彼女は結界の人柱に無理やり私に取り込ませたのです」
「なんで?詳しく教えてくれるかな?」
トレント君がいうには、妖精達の数が減り始めて、100年ぐらいしてからエルフ達は危機を感じ始めたらしい。
100年って、もっと早く覚えろよ。
どうにかして、妖精の流出を塞ぐ手立てを探しているときに、一人のエルフが魔除けの樹を使うことを考えたらしい。
魔除けとなる樹木自体が少なく貴重な上、妖精には効果がない。
そこで、エルフでも妖精としての血が色濃く残っているハイエルフと精霊術を使い結界を作る事を研究しだした。
研究は密かに行われ、始祖とも呼ばれる3人のハイエルフ達にはばれないようにされてきた。
エルフ達は、古事記にある滅びを恐れて、ハイエルフを生贄に選んだ。
最初は3人のハイエルフ血液を研究のためにと、提供してもらい実験を行うと一定の効果が生まれた。
血と精霊術を使った魔除けの樹は、妖精達を出にくくした。
出にくくなったとはいえ、妖精達にしてみれば、その方角に嫌な雰囲気を感じる程度のもので完全ではない。
エルフ達は恐れた。
古事記の通りになるのではと。
エルフ達は、3人のハイエルフを騙し、魔除けの樹に封印しようとする。
ハイエルフも異変に気づき抵抗したが、多勢に無勢、抵抗むなしく封印されてしまう。
3人のハイエルフを封印した、魔除けの樹は各所におかれ、こうして結界の役目を果たすことになった。




