23話
夜が明けた。
なんとか閉じ込められていた、妖精達全員に話しを通せた。
できる限りの準備もした。
全員で一塊に行動するのは、危険なので、3人のハイエルフ達に出口まで誘導してもらうため、グループを3つに分けた。
僕のグループには、ドーガとグリセラを筆頭にして少数だが妖精もいる。
あと、パックも。
僕たちには、陽動も兼ねるので、出来るだけ目立つように脱出する。
最初は陽動のグループに僕は外されていたが、エルフ側も僕がリーダーと知っているなら、僕がいないとすぐに怪しまれる事を精霊達に力説。
最終的には、時間も迫っていることから、折れてくれた。
「さぁ、行動を開始しよう」
僕のその一言で、みんな動き出す。
結界を抜けて、柵が見えるとこには、朝の見回りのエルフの兵士がいたが、グリセラが一気に近づき数人を昏倒させ、1人かを逃がす。
これで、騒ぎに気づき警備の目は僕達に向くはずだ
それと兵士の武器も回収しておこう。
僕が扱っても対して意味はないだろうけど、マシにはなるだろう。
見た目だけだけどさ。
僕たち陽動グループは真っすぐ出口に向か……あれ?なんで城の方に行くんだ?
ドーガも気づいたのか、グリセラに問いかける。
「こっちは方向が違うのではないか?」
「はい。こちらには、警備隊が多くいる事でしょう。出来るだけ、体制を整えるまえに兵士たちの数を減らしておきたいのです。その方が多くの妖精たちが逃げ出せると思います」
そんな作戦だっけ?たしか、陽動部隊の僕たちはできるだけ目立って逃げるって言ったけど、殴り込みまではしないでいいんじゃないかな。
危ないよ、主に僕が。
足手まといになるよ、確実に僕が。
逃げれない可能性高いよ、高確率で僕が。
「敵の数を減らすのはいいが復讐などは考えるなよ」
「……心得ております」
答えるのに間がありましたけど、グリセラさん。
ほんとは、チラっと考えてましたね?
戦力にならない僕がいる事しってるよね?
君達、僕の護衛を兼ねてるの忘れないで下さいよ。
切実に思う。
「あのさ、妖精達を逃がすために戦うのはいいけど、甘いとは自分でも思ってるけど、なるべく殺さないようにして。それとすぐ離脱しようね。僕らが捕まったら意味ないし」
「……心得ました」
「ここは、戦場になる。そんな甘い考えでは、逃げ出せん。いい加減、腹を決めろ」
自分で言い出しておいて、あれだけど。
確かに手加減して、こっちがやられたら意味ないな。
むしろ僕に対して、エルフ達が手加減してくれることを願うばかりです。
どうか、僕には向かってきませんように。
「王様は優しいね。殺さないってなら僕に任せなよ!」
なぜ、そこでパックが胸を張って威張る。
むしろ妖精の君にはあんまり期待してない。
確かに妖精も多少は精霊術が使えるようだが、たいして強くない。
こいつ、ここにきてなんか悪い顔してるし。
頼むから邪魔しないで。
ドーガが胡乱げに見てるから。
パックは、僕とは別に足を引っ張るタイプだな。
「おしゃべりはそこまでです。こちらに気付いたようです」
グリセラに注意され前方を見据えるとエルフの兵士たちと僕たちを連れてきた隊長さんがいた。
「みなさん、どちらに行かれるのかな?まさかそちらから、来ていただけるとは思いませんでしたが。そこにいるグリセラ様の考えですか?」
隊長さんは焦った様子もなく、グリセラを挑発するかのような物言いだ。
「どうやって結界を抜け出したかわかりませんが、ハイエルフともあろうお方がまさか、我々を裏切るような真似をなさるとは。それともわざわざ、妖精達を連れてきて頂けたのですかな?」
「ウォード!我らを騙したのは、貴様ではないか!どの口が言うのだ!」
グリセラが怒声を上げる。
隊長さんの名前はウォードって言うのか。
でも、親しくもしたくないのでここは隊長さんでいっか。
隊長さんが率いているエルフ達はざっと20人ぐらいだろうか。
もちろん、全員が武装している。
「なんとなくだけど、隊長さんは過激派なのかな?」
「はい、その通りです」
「では、始めるか」
順に僕、グリセラ、ドーガ。
ドーガの言葉が合図となりエルフ達もこちらに仕掛けきた。
弓を持ったエルフ達が矢を放つが、グリセラの精霊術で全て遮られる。
剣を持ったエルフ達が走ってこちらに切り掛か……れなかった。
エルフ達の足元に突然落とし穴が出来、全員落ちた。
その場に居た全員があっけに囚われいてた。
「誰も死んでないよ、王様!悪戯のプロをなめんなよ」
パックだった。
悪戯のプロって何?
「妖精の使う魔法って落とし穴を作るんですか?ドーガさん」
「我も驚いた。まぁあれは例外だと思うぞ」
「これは僕がひたすら悪戯の為に努力と汗を流してきた結果だよ。他の妖精にはそうそう真似できないんだから」
パックよ。
その努力と汗の結果で嫌われていないかい?
友達っているのかい?
皆がみんな、笑って許してくれたわけじゃあないと思うよ。
だって、笑顔が黒いもの。
エデンに帰ったら森の妖精達に話しを聞いて、謝りに行かせた方がいい気がするな。
でも、今は心強い、と思っておくことにする。
「王様、どうする?落とし穴に蓋閉めといたほうがいい?」
「蓋はダメ。窒息したら大変だから」
「いや、窒息せん程度に蓋はしておけ。簡単に這い上がってこられても厄介だ」
「りょ~かい!」
そんな器用な事が出来るのか。
さすが悪戯にかける情熱はすごいな。
僕が変なことに関心している間に、グリセラと隊長さんは剣でお互い打ち合ってた。
他の妖精たちも4大精霊ほど威力はないが、魔法を撃って弓矢をもったエルフ達を牽制している。
僕は安全地帯(ドーガの後ろ)にて待機。
ドーガは動くこともなく、サラマンダーらしく、炎をあちこちに飛ばしている。
「火事にならない?」
「この程度でならん。今使ってる炎はただの火ではない。燃え移らんように調整もしておるから安心しろ」
ただの火ではないけど、燃え移る可能性もあるんだ。
よくわからん。
グリセラの方も隊長さんを圧倒しているように見える。
昨日、目覚めたばかりなのによく動けるな。
ドーガも炎を出して、次々に弓兵を倒してる。
「あらかた片付けた。最後だ」
ドーガはそう言って、バスケットボールぐらいの大きさの火を周囲に何十個も浮かべて、顎だけを動かし、エルフ達に向けた。
それが最後になって、エルフ達は意識を刈り取られていた。
ドーガの炎は鎧に多少の焦げ目をつけてはいたが、燃え移ることなく、着弾するとはじけ消えていた。
あっ、隊長さんも余波に充てられたのか倒れてる。
「ドーガ様、せめて合図だけでも頂ければ助かるのですが」
グリセラはドーガを恨みがましく見ていた。
「グリセラの力量なら問題ないと判断した」
ドーガの判断基準で合図はいらなかったらしい。
グリセラもそうですか、とだけ言って後は気にしてない……のかな?
仲間割れはやめてね。
そのあと、パックの落とし穴で全員埋めました。
もちろん、空気穴もついてるから、そのうち出てくるはず。
しかし、みんな強いね。
意外にパックも役に立ってるし。
あれ?僕だけ役立たず?
まさか、そんなはずないよ。
僕の仕事は回復要員だし、後衛で応援を頑張ろう。
できる事をできるだけ頑張ろう。
指揮をしてる風に見せるのもいいかもしれない。
取りあえず剣を掲げてみよう。
それっぽい気がする。
だからパックが僕を見てニヤニヤしてるのもきっと『王様、役立たず?』とか考えてないはず。
僕たちは今度こそ、出口にむかってたんだけど、王様が現れた。




