尾張の大商人からの依頼【後編】
正男は、桜が用意した帳簿を確認していた。
「この商品が一番売れているんですね」
「はい。こちらは季節によって売れ方が変わりますが、こちらの商品は一年を通してよく売れています」
桜の説明を聞きながら、正男は商品棚を見渡した。そして、帳簿の数字と店内の商品配置を照らし合わせながら考えた。
【改善対象を確認しました】
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【改善対象:商家の商品管理】
問題点:
・商品の置き場所が決まっていない
・商品を探す時間が長い
・奉公人によって商品の場所の認識が違う
・商品の移動距離が長い
改善難易度:中
改善による効果:
・商品を探す時間の短縮
・商品の取り出し時間の短縮
・作業効率の向上
・作業負担の軽減
・商品の管理がしやすくなる
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「なるほど、よく売れる商品は入口に近い場所に置きましょう」
「入口に近い場所ですか?」
「ああ。取りに行く回数が多いなら、そこまでの距離を短くした方がいい」
桜は頷いた。
「では、あまり売れない商品は?」
「奥でいいと思います」
正男は商品を見ながら答える。
「ただし、種類ごとにはまとめた方がいい」
「種類ごと……」
「布なら布、道具なら道具というように、同じ種類の商品をまとめるんです」
桜は考えながら頷いた。
「そうすれば、探す場所そのものが少なくなりますね」
「その通りです」
正男は店の奥を見た。
「それから、商品の置き場所を決めたら、誰が見ても分かるようにしたい」
「誰が見ても?」
「ええ」
正男は近くにあった木札を手に取った。
「例えば、ここに『布』と書いておく」
「木札ですか」
「そうです」
「なるほど……」
桜は木札を見つめた。
正男の考えは単純だった。
だが、その単純な仕組みが、店の中の人の動きを変えていく。
「商品を戻す場所も決めておきましょう」
「戻す場所?」
「はい。商品を取り出したあと、適当な場所に戻してしまえば、また探すことになりますから」
「確かに……」
桜は頷いた。
「置き場所を決めて、戻す場所も決める」
「そうです」
正男は笑った。
「一度決めた場所を守れば、次に探す必要がなくなります」
その言葉を聞いた桜は驚いた。
正男は、ただ商品を整理しているわけではない。
次に働く人のことまで考えている。
「では、こちらの商品はここへ」
桜も積極的に手伝い始めた。
奉公人たちも正男の指示に従い、商品を移動させていく。
売れ筋の商品は店の入口に近い場所へ。あまり売れない商品は、運びやすさも考慮しながら奥へ配置する。種類の違う商品は分け、同じ種類の商品はまとめて、それぞれの置き場所に木札を取り付けていった。
「これなら分かりやすいですね」
奉公人の一人が言った。
「今まで、どこに何があるのか覚えるのが大変でしたから」
「場所を覚える必要はありません」
正男が答える。
「木札を見れば分かります」
「なるほど」
奉公人は感心したように頷いた。
さらに正男は、商品の受け渡しをする場所も確認した。
「ここも少し変えましょう」
「ここですか?」
桜が尋ねる。
「帳簿を書く場所が少し離れています」
正男は帳簿台を指差した。
「商品を確認してから帳簿を書くまでに、人が何度も行き来しています」
桜は実際に歩いてみた。
商品を確認し、帳簿台まで移動する。
帳簿を書く。
また商品を確認する。
確かに、何度も往復している。
「ここを近づければ……」
「移動する回数を減らせます」
正男が答える。
「なるほど……」
桜はまた一つ、正男の考え方を理解した。
正男は、一つ一つの作業だけを見ているのではない。
仕事全体の流れを見ている。
人の動き、商品の動き、帳簿の記入。
そのすべてを一つの流れとして考えているのだ。
そして、整理が終わった。
「では、実際に注文を受けてみましょう」
正男が言った。
奉公人が注文された商品を取りに行った。
「布、二反ですね」
奉公人は木札を確認し、迷うことなく布の置き場所へ向かった。必要な商品を取り出すと、そのまま注文を受けた場所へ戻ってくる。
「……早い」
桜が思わず呟いた。
別の商品でも試してみたが、結果は同じだった。
以前のように、
「どこだった?」
「あっちだったか?」
と迷う声は聞こえない。
商品を探す時間が、明らかに短くなっていた。
正男は静かに頷いた。
「これなら大丈夫そうですね」
そのとき――
正男の目の前に、見慣れた文字が浮かんだ。
【改善が完了しました】
【商家の商品管理の改善に成功しました】
【改善効果を確認】
【作業効率:向上】
【商品を探す時間:短縮】
【在庫確認時間:短縮】
【作業負担:低下】
【商品管理:改善】
「……終わったか」
正男は小さく呟いた。
桜は店内を見渡した。
先ほどまで何度も行き来していた奉公人たちが、今は迷うことなく商品を取り出している。
「本当に……変わりましたね」
「少し整理しただけですよ」
「少し……ですか?」
桜は思わず正男を見る。
商品を置く場所を決め、木札を付け、よく売れる商品を取り出しやすい場所に置く。やっていることだけを見れば、それほど難しいことには思えない。
だが、正男はそれらを店全体の仕事の流れとして考え、実際に変えてしまった。桜には、それが不思議でならなかった。
「ありがとうございました」
桜は正男に頭を下げた。
「こちらこそ。協力してくれて助かりました」
「いえ……」
桜は顔を上げた。
「私も、とても勉強になりました」
正男は笑った。
「それならよかったです」
その笑顔を見て、桜は少しだけ頬を緩めた。
その日の夕方。
桜は父のいる部屋を訪ねた。
「お父様」
「どうした、桜」
帳簿を確認していた惣十郎が顔を上げる。
「鈴木様の改善が終わりました」
「そうか」
惣十郎は帳簿を閉じた。
「それで、どうだった?」
桜は少し考えてから答えた。
「すごい方です」
惣十郎が目を細める。
「ほう」
「最初は、何を見ているのか分かりませんでした」
桜は今日のことを思い出す。
正男は店に入ってから、すぐに指示を出さなかった。
ただ、人の動きや商品の動きを見ていた。
そして、奉公人たちが商品を探していることに気づいた。
「鈴木様は、店の人たちが何度も商品を探していることに気づいたんです」
「それだけか?」
「いいえ」
桜は首を横に振った。
「なぜ商品を探しているのかを考えていました」
「なるほど」
「それから帳簿を見て、どの商品がよく売れているのかを確認して……」
桜は少し嬉しそうに話を続ける。
「売れる商品を取り出しやすい場所に置いて、商品の種類ごとにまとめて、木札まで付けました」
「ふむ」
「それだけで、みんなが迷わなくなりました」
惣十郎は黙って桜の話を聞いていた。
「桜」
「はい」
「お前は、鈴木殿をどう思った?」
突然の質問に、桜は少し驚いた。
「……どう、と言われましても」
「正直に言ってみなさい」
桜は少しだけ考えた。
そして、ぽつりと言った。
「もっと……鈴木様の考え方を知りたいです」
惣十郎の眉がわずかに動く。
「ほう」
「どうして、あんなふうに仕事を見ることができるのか……」
桜は今日一日のことを思い返した。
「私には、ただ商品が並んでいるようにしか見えませんでした」
「だが、鈴木殿には違って見えた」
「はい」
桜は頷いた。
「人がどこを歩き、どこで時間を使い、何が無駄になっているのか。鈴木様は、そういうところを全部見ていたんです」
そして、桜は小さく笑った。
「……すごいですよね」
惣十郎は娘の顔をしばらく見つめていた。
いつも帳簿の数字には厳しい桜が、今日は珍しく数字ではなく、一人の人間について熱心に話している。
「そうか」
惣十郎は静かに笑った。
そして部屋を出て、一度だけ振り返った。
頭の中には、今日の正男の姿が残っている。
「……もっと知りたい」
桜は小さく呟いた。
その頃、正男は夕暮れの道を歩きながら、次の改善について考えていた。
今回の商家の商品管理の改善で、商品を探す時間は減った。
「次は、どこを改善するか……」
正男は呟きながら、歩みを進めた。
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【鈴木 正男】
年齢:18歳
身分:不明
石高:0石
統率:72
武勇:28
知略:83
政治:87
【兵科適性】
足軽:C
騎馬:D
弓:C
鉄砲:A
水軍:D
【スキル】
危険予知:Lv.5
危険回避:Lv.1
5S:Lv.5
改善思考:Lv.5
標準化:Lv.5
品質管理:Lv.5
工程改善:Lv.5
生産性向上:Lv.5
安全意識:Lv.5
立身出世
【経験】
危険回避:20
【実績】
現場改善:4回達成
【現在の改善対象】
商家の商品管理
【改善状況】
完了
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