鍛冶屋の娘からの依頼【後編】
俺たちは鍛冶場の整理を始めた。まずは、作業場に置かれている物を一つずつ確認していく。
「これは使ってる?」
俺が尋ねると、源蔵は置かれていた道具を見ながら答えた。
「それは去年使ったやつだな」
「じゃあ、こっちは?」
「それは……」
源蔵が少し考える。
「使った覚えがないな」
「じゃあ、これは?」
「……分からん」
俺は思わず苦笑した。
「使っている物と、使っていない物が一緒になってるな」
「そうだな」
源蔵も周囲を見渡す。
「鍛冶を始めた頃から、物が増えていったからな」
「それなら、まず分けよう」
俺は三つの置き場所を決めた。
「使う物、たまに使う物、使わない物に分けるんだ」
「なるほど。使わない物はどうするの?」
なつきが尋ねた。
「別の場所に移す」
「捨てないの?」
「まだ使える物を捨てる必要はない。必要な物を探しやすくするために分けるんだ」
「そっか!」
なつきは納得したように頷いた。
俺たちは作業を続けた。使っていない古い木箱、壊れた道具、余った鉄材、使いかけの炭、いつ使ったのか分からない木片。それらを一つずつ確認していく。
しばらくすると、鍛冶場の隅には、仕分けした物が山積みになっていた。
「こんなにあったのか……」
源蔵が呆れた顔をする。
「俺も驚いた」
「親父、よくこんなところで仕事してたね」
「……」
「なつき」
「はい」
「余計なことは言うな」
「へへ」
俺は笑いながら、次の作業に取りかかった。
今度は工具だ。金槌、ヤットコ、ノミ、その他の道具。
これまで源蔵は、使った工具を空いている場所に置いていた。そのため、使うたびに探す必要があった。
「工具は、使う場所を決めよう」
俺は作業台の近くを指差した。
「よく使う工具は、ここに置く」
「ここに置くのか?」
「そうだ。金槌はここ、ヤットコはここ、ノミはここ。使う頻度が高い物ほど、手の届きやすい場所に置くんだ」
俺は工具を並べていった。
源蔵が工具を見る。
「確かに、その方が楽だな」
「だろ?」
俺は木札を取り出した。
「これは何だ?」
源蔵が首を傾げる。
「目印だ」
俺は木札に「金槌」「ヤットコ」「ノミ」と書き、それぞれの置き場所に設置した。
「使ったら、ここに戻す。場所を決めておけば、誰が使っても同じ場所に戻せるんだ」
「なるほど」
なつきが木札を覗き込む。
「これなら、あたしでも分かるね」
「ああ」
「父さんが使った後も、私が戻せる」
「そういうことだ」
源蔵が少し笑った。
「これはいいな」
次に、鉄材を種類ごとに分け、それぞれ決めた場所に置いていった。
「材料も、決めた場所に置こう」
「今までは、その辺に置いてたからな」
源蔵が苦笑する。
「それが探す時間につながっていたんだ」
俺は材料の置き場所にも木札を取り付けた。
「これで、どこに何があるか分かる」
「なるほどな」
最後に、作業途中の品と完成品の置き場所を分けた。
「ここは作業途中の品、こっちは完成品だ」
「これなら、作業途中の物を間違って片付けることもない」
なつきが感心したように頷く。
「少しずつ分かりやすくなってきたね」
「ああ」
整理を始めてから、しばらく時間が経った。鍛冶場の様子は大きく変わっていた。
通路から物がなくなり、作業台の上も広くなった。工具は決められた場所に並び、鉄材も種類ごとにまとめられている。完成品と作業途中の品も、それぞれ置き場所が分かれていた。
「すごい……」
なつきが鍛冶場を見回す。
「同じ場所なのに、全然違って見える」
源蔵も周囲を見渡した。
「確かにな」
俺は作業台の前に立った。
「じゃあ、試してみよう」
「何を?」
「いつも通りの仕事をしてみてくれ」
「分かった」
源蔵は鉄材を手に取り、工具へと手を伸ばした。
「金槌は……ここだ」
目の前にある金槌を取る。続いてヤットコにも迷わず手を伸ばした。
「これも、すぐ取れるな」
「そうだろ?」
源蔵は作業を続けた。
鉄を火床に入れる。赤くなった鉄を取り出す。ヤットコで挟む。そして、金槌を振り下ろす。
カンッ! カンッ! カンッ!
いつもと同じ音だ。
だが、作業の途中で源蔵が周囲を探すことはなかった。
俺はそれを黙って見ていた。やがて源蔵が作業を終える。
「……」
源蔵は手にした金槌を見る。そして、決められた場所に戻した。
「これは……楽だな」
「だろ?」
「今までなら、道具を探すだけで何度も手を止めていた」
「その時間が減ったんだ」
「ああ。こんなことで、ここまで変わるとは思わなかった」
俺は笑った。
「鍛冶の技術を変えたわけじゃない」
「ただ、無駄を減らしただけだ」
なつきが父親を見る。
「親父、これなら少し早く仕事を終われる?」
源蔵は少し考えた。
「……たぶんな」
「本当?」
「ああ」
源蔵は笑った。
「少なくとも、道具を探している時間は減る」
なつきの顔が明るくなる。
「よかった……」
その笑顔を見て、俺も少し安心した。
今回の改善は、特別な道具を作ったわけでも、新しい技術を教えたわけでもない。ただ、今ある物を整理しただけだ。
それでも、毎日少しずつ発生していた無駄を減らせば、積み重なって大きな時間になる。そして、その時間を働く人に返すことができる。
「正男さん」
なつきが俺を見る。
「ありがとう!」
「まだ終わってないぞ」
「え?」
「これからは、整理した状態を維持しないといけない」
「維持?」
「ああ。使った工具は必ず元の場所に戻す。材料も決めた場所に置く。作業途中の品も、決められた場所に置く。それを続けるんだ」
なつきは真剣な顔で頷いた。
「分かった!」
源蔵も頷く。
「俺も気をつける」
「それなら大丈夫だ」
俺は鍛冶場を見渡した。最初に見た鍛冶場とは、まるで別の場所だった。
「よし」
俺は満足して頷いた。
「これで、今回の改善は完了だ」
【改善が完了しました】
【鍛冶場の改善に成功しました】
【改善効果を確認】
【作業効率:向上】
【作業負担:低下】
【安全性:向上】
【工具を探す時間:短縮】
【材料を探す時間:短縮】
【作業スペース:拡大】
なつきが嬉しそうに笑う。
「親父、今日は早く終われそうだね!」
源蔵は照れくさそうに頭をかいた。
「そうだな」
その言葉を聞いて、俺も笑った。
仕事を楽にする。それは、仕事をしなくすることじゃない。
同じ仕事をするなら――。
少しでも無駄を減らし、少しでも楽にする。それだけでも、人の生活は変えられる。
俺は、そんなことを改めて感じていた。
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【鈴木 正男】
年齢:18歳
身分:不明
石高:0石
統率:72
武勇:28
知略:83
政治:87
【兵科適性】
足軽:C
騎馬:D
弓:C
鉄砲:A
水軍:D
【スキル】
危険予知:Lv.5
危険回避:Lv.1
5S:Lv.5
改善思考:Lv.5
標準化:Lv.5
品質管理:Lv.5
工程改善:Lv.5
生産性向上:Lv.5
安全意識:Lv.5
立身出世
【経験】
危険回避:20
【実績】
現場改善:3回達成
【現在の改善対象】
鍛冶場
【改善状況】
完了
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