戦の準備【後編】
残る仕事は、熊蔵の鎧を作ることだ。
くろの鎧は完成したが、熊蔵の体格はくろとは大きく違う。くろは牛なので突進力を生かす装備が向いている。一方、熊蔵は太い前脚と鋭い爪を持ち、立ち上がって前脚を振り下ろすこともある。その動きを妨げず、敵の攻撃から体を守れる鎧にしなければならない。
「正男、熊蔵の鎧はどんな感じになるんだ?」
なつきが期待に満ちた目で尋ねてきた。
「まずは体を守ることを優先する。特に胸や肩、それから首の周りだな」
「なるほど! 熊蔵は力が強いから、敵に突っ込んでいけそうだな!」
「そうだな。ただし、鎧が重すぎると動きにくくなる。そこは気をつけないといけない」
俺は紙を広げ、熊蔵の寸法を記録した紙と見比べた。
「五兵衛、熊蔵が前脚を上げたとき、どのあたりが大きく動くか見てくれないか?」
「分かりました。僕が確認してみます」
五兵衛は熊蔵の前に立ち、少し離れた場所から様子を観察した。
「熊蔵、ちょっと前脚を上げてみてくれ」
当然、熊蔵に言葉が通じたわけではない。しかし、なつきが手を上げると、熊蔵は興味を持ったように立ち上がり、前脚を持ち上げた。
「おおっ! すごいぞ、熊蔵!」
なつきが声を上げる。熊蔵は嬉しそうにしている。
五兵衛は、その動きを注意深く見ていた。
「正男様、肩の周りはかなり動きますね。ここを硬い装甲で覆ってしまうと、前脚を振り上げにくくなりそうです」
「やっぱりそうか。肩は装甲を分割して、動きを妨げないようにしよう」
「首の周りも同じですね。頭を動かせる余裕が必要だと思います」
「よし。それなら、胸と背中を中心に守り、肩や首は動きやすさを優先しよう」
俺は設計図に修正を加えた。
「それと、熊蔵の前脚にも装甲をつけよう。敵を攻撃するとき、前脚を傷つけられるのは避けたい」
「前脚にも、ですか?」
「ああ。熊蔵は前脚で敵を攻撃できる。なら、攻撃するときに前脚を守るだけじゃなく、装甲そのものを攻撃に利用できるようにしたい」
俺は前脚の形状に合わせて、装甲の設計を描き加えた。
「ただし、爪や関節の動きを妨げないようにする。硬い装甲で覆いすぎると、攻撃の動きが鈍くなるからな」
五兵衛は設計図をのぞき込んだ。
「なるほど。前脚を守りながら、打撃の威力も高めるわけですね」
「そういうことだ。熊蔵の力を生かせる形にしよう」
俺は胸、背中、肩、首、そして前脚の装甲配置を確認した。
「これなら、熊蔵の動きを妨げずに体を守り、前脚で攻撃するときにも役立つはずだ」
俺は設計図を確認し、改善システムを起動した。視界に、見慣れた画面が浮かび上がる。
【改善対象を確認しました】
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【改善対象:熊蔵の鎧】
問題点:
・胸部や背中が敵の攻撃にさらされる\
・肩や前脚の付け根を硬い装甲で覆うと、動きが制限される\
・首の周りを覆いすぎると、頭を動かしにくくなる\
・前脚が敵の攻撃にさらされ、攻撃時に負傷する危険がある\
・前脚の装甲が重すぎたり、関節を覆いすぎたりすると、攻撃の動きが鈍くなる\
・装甲を重くしすぎると、素早い動きが難しくなる
改善難易度:高
改善による効果:
・胸部や背中に装甲を取り付け、防御力を高める\
・肩や前脚の付け根の動きを妨げない構造にする\
・首の可動範囲を確保し、頭を動かしやすくする\
・前脚に攻撃用の装甲を取り付け、敵を攻撃する際の威力を高める\
・爪や関節の動きを妨げず、前脚の攻撃性能を維持する\
・装甲の重量を抑え、熊蔵の動きやすさを維持する
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「よし、これでいこう」
俺は必要な材料を揃え、作業を始めた。
まず、熊蔵の体格に合わせて鉄板を加工する。胸部の装甲は体の形に沿うように整え、背中の装甲は動いたときにずれないよう、取り付け位置を慎重に決めた。
肩の部分は一枚の大きな鉄板で覆うのではなく、複数の装甲に分けた。そうすれば、前脚を動かしたときにも装甲同士がぶつかりにくい。首の周りにも、頭の動きを邪魔しない形で保護具を取り付ける。
さらに、前脚を攻撃に使うことを考え、前脚の形状に合わせた装甲も作ることにした。前脚の甲側を守れるように鉄板を加工し、打撃を加えた際にも装甲がずれないよう、革の帯で固定できる構造にする。
ただし、関節や爪の動きを妨げては意味がない。俺は熊蔵の前脚の動きを確かめながら、装甲の形状を少しずつ調整した。最後に、各装甲の内側へ布と革を当てる。これで、硬い金属が直接体に当たるのを防げるはずだ。
「よし、これで一通り取り付けられたな」
俺は熊蔵から少し離れ、全体の仕上がりを確認した。
熊蔵は最初こそ不思議そうに体を揺らしていたが、やがて落ち着いた。
「熊蔵、ちょっと歩いてみてくれ」
熊蔵はゆっくりと歩き始めた。装甲が大きくずれることはない。続いて前脚を持ち上げてもらうと、熊蔵は立ち上がり、前脚を振り上げた。装甲が肩の動きを妨げる様子はない。
「よし。次は首だな」
熊蔵は顔を左右に動かし、地面の匂いを嗅いだ。首の保護具も、頭の動きを大きく制限してはいないようだ。
「正男、熊蔵、ちゃんと動けてる!」
なつきが嬉しそうに声を上げた。
そのとき、熊蔵がふと前脚を見下ろした。いつもと違う装甲が取り付けられているのが気になるのか、首を傾げながら前脚をじっと眺めている。
「どうした、熊蔵?」
俺が声をかけると、熊蔵は顔を上げ、前脚をゆっくりと持ち上げた。そして――。
ブンッ!
前脚を一度、大きく振った。装甲が風を切る。
熊蔵は振り終えた前脚を見つめ、今度は反対側の前脚も持ち上げてみた。
ブンッ!
もう一度、力強く振る。どうやら、前脚の装甲が気に入ったらしい。
熊蔵は左右の前脚を交互に持ち上げ、何度もブンブンと振り始めた。
「お、おい、熊蔵。そんなに振らなくてもいいぞ!」
俺が慌てて声をかけても、熊蔵は楽しそうに前脚を振り続ける。
ブンッ! ブンッ! ブンッ!
「正男、熊蔵、これが気に入ったんだよ!」
なつきは声を弾ませ、熊蔵の様子を見守っていた。
熊蔵は最後に両方の前脚を持ち上げ、満足そうに何度も振った。
「……どうやら、攻撃用の装甲は気に入ってくれたみたいだな」
俺は苦笑しながら、装甲の固定部分をもう一度確認した。これだけ振り回しても、装甲がずれたり外れたりする様子はない。
「よし。動きにも問題はなさそうだ」
熊蔵は、まだ前脚を見つめていた。その姿を見て、俺は思わず笑みを浮かべた。
【改善が完了しました】
【熊蔵の鎧の改善に成功しました】
【改善効果を確認】
【攻撃力:向上】
【防御力:向上】
【前脚の可動性:維持】
【首の可動性:維持】
【機動力:維持】
「おおっ! 熊蔵、格好いいぞ!」
なつきは熊蔵の周りを歩きながら、いろいろな角度から眺めた。熊蔵も、なつきの声に反応して大きな頭を動かした。
「これなら戦場でも、敵の攻撃から身を守れそうだな!」
「ただし、無理に敵へ突っ込ませるのは駄目だぞ。鎧があっても、傷を負う可能性はあるからな」
「分かってるって。熊蔵だって、痛いのは嫌だもんな」
なつきは熊蔵の頭を優しく撫でた。熊蔵は目を細め、気持ちよさそうに鼻を鳴らした。
その様子を見て、俺はようやく一息ついた。これで、俺たちの出陣に向けた装備の準備は一通り終わった。
俺自身のこん棒。なつきと五兵衛の具足。そして、くろと熊蔵の鎧。
もちろん、装備を整えただけで戦に勝てるわけではない。大切なのは、装備を使いこなし、仲間と連携することだ。
今回の作戦では、敵の城へ正面から攻め込む部隊と、別の道から奇襲を仕掛ける部隊が動くことになっている。俺は、その奇襲部隊の案内役を任されていた。
失敗は許されない。敵に動きを察知されれば、奇襲の効果は失われる。仲間を危険にさらすことにもなる。だからこそ、今できる準備はすべて整えておきたかった。
「正男、これで準備は終わりか?」
なつきが、熊蔵の鎧を眺めながら尋ねてきた。
「ああ。俺たちにできる準備は、ひとまず終わった」
「いよいよ戦だな!」
なつきの声には、緊張と期待が入り混じっていた。
「浮かれるなよ。戦場では、何が起こるか分からないからな」
「分かってるって。正男の言うことは、ちゃんと聞くよ」
「その言葉、忘れるなよ」
俺がそう言うと、五兵衛が苦笑した。
「なつき、正男様の言葉を忘れないようにね」
「五兵衛まで!」
なつきが頬を膨らませる。そのやり取りに、俺は思わず笑った。
だが、笑っていられるのも今のうちだ。明日には、俺たちは戦場へ向かう。織田軍が動き出せば、もう後戻りはできない。
俺は自分のこん棒を手に取り、鉄輪がしっかり固定されていることを確かめた。
どれほど準備を重ねても、戦場では想定外のことが起こるだろう。それでも、俺には守りたい仲間がいる。なつきも、五兵衛も、くろも、熊蔵も。そして、俺を家臣として迎えてくれた織田家のためにも、ここで失敗するわけにはいかない。
「よし……行こう」
俺は顔を上げた。
翌朝、織田軍は出陣する。目指すは、山中に築かれた敵の隠し城。俺たちの初めての本格的な戦が、いよいよ始まろうとしていた。
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【鈴木 正男】
年齢:18歳
身分:織田家家臣
石高:50石
統率:74
武勇:34
知略:85
政治:87
【兵科適性】
足軽:C
騎馬:D
弓:C
鉄砲:A
水軍:D
【スキル】
危険予知:Lv.5
危険回避:Lv.2
5S:Lv.5
改善思考:Lv.5
標準化:Lv.5
品質管理:Lv.5
工程改善:Lv.5
生産性向上:Lv.5
安全意識:Lv.5
戦術思考:Lv.2
立身出世
【経験】
危険回避:20
戦術思考:0
【実績】
現場改善:7回達成
【現在の改善対象】
熊蔵の鎧
【改善状況】
完了
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