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戦国ゲームで18歳の武将を作成したら、戦国時代に転移していた~秀吉の立身出世スキルと製造業スキルで成り上がる~  作者: にゃがまさ
織田家仕官編

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信長への報告

俺たちは、町へ向かって走り続けた。


「はぁ……はぁ……」


息が上がる。後ろを振り返ると、さっきまで追ってきていた敵の姿は、もう見えなかった。


「追手は来ていません。どうやら、振り切ったみたいですね」


五兵衛が周囲を確認する。


「そうか」


俺はようやく足を緩めた。


「でも、まだ油断するな」


「はい」


なつきも立ち止まり、肩に担いでいた金槌を下ろした。


「ふぅ……」


その隣では、くろが大きく息を吐いている。熊も地面に座り込み、疲れたように前足を伸ばしていた。


「みんな、大丈夫か?」


「大丈夫!」


なつきが元気よく答える。


「くろも平気!」


「モオッ!」


くろが返事をする。


「熊も大丈夫みたい」


なつきが熊の頭を撫でると、熊は気持ちよさそうに目を細めた。俺はその様子を見て、少しだけ安心した。


「よし。もう一息だ」


「那古野城ですね」


五兵衛が確認する。


「ああ」


俺は頷いた。


「山で見たことを、全部報告する」


俺たちは再び歩き始めた。


町へ入ると、人の数が一気に増えた。道を歩く商人、荷物を運ぶ人夫、馬を引く武士。さっきまで山の中で命を狙われていたのが、嘘のようだった。


だが、俺は気を抜かなかった。つい先ほどまで、俺たちを追ってきた連中がいる。


「正男」


なつきが小さな声で呼ぶ。


「どうした?」


「信長様に話すのは、山で見たこと全部?」


「ああ。ただし、俺たちが推測したことと、実際に見聞きしたことは分けて話すつもりだ」


「推測と事実を分ける……ですか」


五兵衛が尋ねる。


「ああ。それから、武器を別の場所へ運ぶという話を聞いたことも話す」


「なるほど。つまり、そこから先は信長様に判断していただくわけですね」


五兵衛が頷いた。


「ああ」


俺たちはさらに歩いた。


しばらくすると、見慣れた城が見えてきた。


「着いた……」


俺は足を止めた。織田信長の那古野城。ここまで来るのに、かなり長かった気がする。


「やっとだね」


なつきが息を吐く。


「でも、これからが本番ですよ」


五兵衛が言った。


「ああ」


俺は頷き、門へ向かった。


すると、門番の武士がこちらに気づいた。


「止まれ!」


声が飛んでくる。俺たちは足を止めた。


「何者だ!」


門番がこちらを警戒する。俺は一歩前へ出た。


「鈴木正男です」


「鈴木?」


門番が俺を見る。


「織田家の家臣か?」


「はい。信長様にお伝えしたいことがあります」


「内容は?」


俺は一瞬、言葉を選んだ。


「山中で、武器を大量に保管し、製造していると思われる場所を見つけました」


門番の表情が変わった。


「……何?」


「信長様に直接ご報告したいと思います」


門番は俺たちを見回した。泥だらけの服、傷のついた棒。刀を持つ五兵衛。巨大な金槌を持つなつき。そして、巨大な黒い牛と熊。


門番の視線が止まった。


「……その熊は?」


「山で助けた」


なつきが答える。


「助けた?」


「うん! 閉じ込められていたの」


なつきが胸を張ると、門番は絶句した。


「……?」


「詳しい話は信長様にします」


俺が答えると、門番はしばらく俺たちを見ていた。やがて、別の武士に声をかけた。


「おい。殿に取り次げ」


「分かった」


武士が城の中へ走っていく。俺は大きく息を吐いた。


「正男様」


五兵衛が小声で話しかける。


「いよいよですね」


「ああ」


なつきも金槌を握り直した。


「見たことを、そのまま話す」


やがて、城の中から武士が戻ってきた。


「鈴木正男」


「はい」


「信長様がお会いになる」


「分かりました」


「みんなはここで待っててくれ」


「はい」


俺は門をくぐった。


久しぶりに見る織田家の城。俺は案内されながら、奥へと進んでいく。とても静かな廊下を歩いていると、さっきまでの戦闘が嘘のようだった。


やがて、一つの部屋の前で案内役が止まった。


「こちらです」


障子が開く。


「入れ」


低い声が響いた。俺は背筋を伸ばし、部屋の奥に座っている織田信長に目を向けた。鋭い目が、俺を見つめていた。


「久しいな、正男」


「お久しぶりです、信長様」


俺は頭を下げた。


「それで? もう戦用の荷車が出来たのか?」


信長が尋ねる。俺は苦笑いした。


「いえ、まだです。荷車を作成するための人材を集めていた帰りに、野盗が根城にしていた砦を見つけました」


「ほう? 何人いた?」


「野盗の数は約五十人でした。私たちが制圧し、野盗たちは砦に拘束したままです」


「私たち? 何人で制圧したのだ?」


「三人です」


「ほう。よくやれたものだな」


「強い家臣を持てたので出来ました」


「そうか。大事にしろ」


「はい」


「その後、砦から山奥へ進むと、武器を製造・保管していると思われる施設を発見しました」


「武器を?」


「はい」


「何があった?」


「刀、槍、弓、それに鉄棒など、大量の武器が保管されていました」


「大量……だと?」


「さらに、その施設には鍛冶場がありました」


「鍛冶場まで……」


信長は腕を組み、黙って俺の話を聞いている。俺は続けた。


「そこで武器を作っていたと思われます」


「実際に作っているところを見たのか?」


「はい。鍛冶場には、武器を作るための道具や材料がありました」


信長の目が鋭くなる。


「……他には?」


「男たちが『例の場所への搬入』という言葉を口にしているのを聞きました」


「例の場所?」


「はい。何を指しているのかまでは分かりませんでした」


俺は正直に答えた。


「ですが、武器を作り、保管し、どこかへ運び出していることは間違いないと思います」


信長の表情から、先ほどまでの余裕が消えていた。


「さらに山奥へ進むと、隠し通路がありました」


「まだあるのか?」


「はい。その通路を進むと、隠された城を発見しました」


信長の目が細くなる。


「城?」


「はい。山奥に、周囲から隠すように築かれた城です」


「それで?」


俺は一度、息を整えた。


「城を調べている途中で敵に見つかり、襲われました。山を下りている途中で何度も追いつかれそうになり、最後には正面と背後から挟まれました。隙をついて突破し、ここまで来ました」


信長は黙ったまま腕を組み、上を見上げて考え込んだ。やがて、その視線が俺に戻る。


「正男」


「はい」


「その城と施設、案内できるか?」


俺は一瞬、言葉を失った。そして、ゆっくりと頷いた。


「はい。場所は覚えています」


信長はすぐに立ち上がり、家臣に命令した。


「軍議だ! 軍議を開く。皆を呼べ!」


「はっ!」


周りにいた家臣たちは慌てて走り出す。


「正男! おぬしも軍議に参加せよ。現場を知っているおぬしの意見が聞きたい」


「承知しました」


俺は深く頭を下げた。


信長はすぐに立ち去り、家臣たちも次々と部屋を出ていく。俺も部屋を出た、そのときだった。


廊下の向こうから、一人の小柄な男が駆けてくるのが見えた。


「殿ー!」


明るい声が響く。男は信長の前まで来ると、すぐに頭を下げた。


「お呼びと聞きまして、この猿、飛んで参りました!」


「ふん。相変わらず調子のいい奴だ」


信長が呆れたように言う。だが、その声にはどこか笑みが混じっていた。


「調子がいいのが、この猿の取り柄にございます!」


男は笑顔で答える。


「ふん」


信長も小さく笑った。


俺は思わず、その男を見つめた。小柄で、身なりも質素。まだ、身分の高い武士には見えない。だが、妙に人懐っこい。嫌味がなく、自然と周囲の空気を明るくする。


「猿」


信長が呼ぶ。


「はい!」


「お前も軍議に参加せよ」


「お任せください!」


男は胸を張った。


「この猿、殿のお役に立ってみせます!」


「大きなことを言うな」


「はい! 小さなことから、こつこつと!」


「……本当に調子のいい奴だ」


信長が笑い、男も笑う。その様子を見て、俺も思わず口元が緩んだ。


この男が……木下藤吉郎。


俺は知っている。この男が、後に天下人と呼ばれることを。だが、今はまだ何者でもない。それでも、人を惹きつける何かを、すでに持っているように感じた。


なるほどな。信長様が「猿」と呼ぶのも分かる気がする。


俺たちは、山奥に隠された城をめぐる軍議へ向かった。

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