隠された巨大施設【後編】
俺たちは倉庫の奥へ進んだ。
武器が並ぶ棚、木箱、鉄材。
そして、壁際に積まれた大量の袋。
その奥に――。
「扉……」
俺は耳を当てた。
何も聞こえない。
ゆっくりと扉を開ける。
ギィィ……。
部屋の奥には、大きな鉄格子があった。
「檻?」
五兵衛が目を細める。
中に何かいる。
かなり大きい黒い影が動いた。
ズシン。
「……!」
俺たちは一斉に身構えた。
檻の中から現れたのは――。
巨大な熊だった。
「熊……?」
俺は息を呑んだ。
普通の熊ではない。
体が異様に大きい。
立ち上がれば、人間の倍近くありそうだ。
口には革製の猿ぐつわをされ、前脚は鎖で繋がれている。
体にはいくつもの傷がある。
「ひどい……」
なつきが呟いた。
熊がこちらを見る。
「グルルル……」
低い唸り声が部屋に響く。
「なつき、下がれ」
俺が言う。
しかし、なつきは動かなかった。
「待って」
「どうした?」
「この熊……」
そして、ゆっくりと近づいた。
「なつき!」
五兵衛が慌てる。
「大丈夫」
なつきは首を横に振った。
「この子、怖がってる」
「怖がってる?」
「うん」
なつきは檻の前にしゃがみ込んだ。
熊は唸りながら、なつきを見つめている。
「大丈夫だよ」
なつきが優しく声をかける。
「私たちは敵じゃないよ」
熊が鼻を鳴らす。
「フン……グルル」
「『痛い』って言ってる」
「……」
俺は言葉を失った。
「それから……」
なつきが熊の傷を見る。
「『ここから出たい』って」
なつきは熊に話しかける。
「どうして、ここにいるの?」
熊が鼻を鳴らした。
「グル……グルル」
「うん。罠にかかって、そのあと連れてこられたみたい」
熊が奥を見る。
なつきも、その視線を追う。
そこには大きな木箱があった。
俺が近づく。
箱には、何かの札が貼られている。
「これは……」
中には鉄製の器具が入っていた。
「何に使うんだ?」
なつきが熊を見る。
「熊に何かをさせるために使ってたみたい」
「何かを?」
「うん」
熊が低く唸る。
「この子の力を使って、大きな荷物を運ばせてたんだって」
なつきが拳を握った。
「運ばなかったら、叩かれたんだって」
俺は檻の中を見る。
巨大な体、太い脚。
これだけの力があれば、人間が何人も必要な荷物でも運べる。
「嫌がる熊を痛めつけて運ばせていたのか……」
扉の向こうから足音が聞こえた。
「誰か来ます!」
五兵衛が小声で叫ぶ。
俺たちはすぐに柱の陰へ隠れた。
「見回りか?」
五兵衛が刀に手をかける。
俺は奥を見る。
男が数人歩いてくる。
先頭にいるのは、四十代くらいの男だった。
「まだ大人しくしているか?」
男が熊を見る。
「ええ。痛めつける必要はありません」
「そうか」
男は熊を見ながら笑う。
「この山の獣は役に立つ」
「人間より力がありますからね」
「そうだ。武器も荷物も運べる」
なつきは歯を食いしばった。
男たちは檻の前を通り過ぎていく。
「それに、例の場所への搬入も順調だ」
「もうすぐ予定数が揃います」
「そうなれば――」
男は不気味に笑った。
俺は息を殺した。
やはり何かを企んでいる。
武器を集めているだけではない。
男たちが奥へ消えていく。
しばらくして、足音が聞こえなくなった。
「今の話……」
五兵衛が小声で言う。
「ああ」
俺は頷いた。
「武器を集めて何かを始めようとしている」
だが、その前に――。
俺は熊を見る。
なつきが檻の前に立っていた。
「この子も連れていく」
「え?」
五兵衛が驚く。
「でも、どうやって?」
俺は檻に近づく。
「正男様、危ないですよ」
「大丈夫だ。なつきがいる」
俺は檻の錠を見る。
かなり頑丈だ。
だが、なつきの金槌なら壊せそうだった。
「なつき。この檻、開けられるか?」
「うん」
なつきが檻の前に立つ。
そして檻の鉄格子に手をかける。
「ん? なつき、何してる?」
ガガガ。
そして、なつきが鉄格子を広げた。
「開いたよ」
「「ええええ」」
「いやいや、錠を壊してと言う意味で言ったんだが」
なつきが首を傾げる。
「うん、まあ、いいや」
俺は考えるのをやめた。
熊はすぐには動かなかった。
なつきが熊に話しかける。
「外に出ていいよ」
熊がなつきを見る。
「ここから出たら、もう捕まえない?」
なつきが俺を見る。
「ああ」
俺は熊に向かって言った。
「俺たちは、お前を道具として扱わない」
熊はじっと俺を見る。
しばらくすると――。
ズシン。
大きな体が檻の外へ出た。
「……大きい」
五兵衛が熊を見上げた。
熊は俺たちを見回した。
そして、なつきの隣で立ち止まる。
なつきが猿ぐつわと鎖を外してやる。
「この人たちは怖くないよ」
なつきが熊に言う。
なつきが正男達へ振り返る。
「ありがとうって言ってる」
俺は少しだけ笑った。
「そうか」
だが、その瞬間。
遠くから声が響いた。
「誰かいるぞ!」
「侵入者だ!」
「まずい!」
五兵衛が叫ぶ。
「見つかりました!」
俺は周囲を見る。
逃げ道は扉だけ。
だが、そこへ向かって敵が来ている。
「正男!」
なつきが熊を見る。
「この子は?」
俺は熊を見る。
熊も俺を見ている。
その瞬間――。
頭の中に、あの表示が浮かんだ。
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【戦術思考】
周囲の状況から、戦術を立案します。
【敵】
・接近中の敵:複数
・敵は扉の向こうからこちらへ向かっている
・こちらより人数が多い可能性が高い
・敵は建物の構造を把握している
【味方】
・俺
・五兵衛
・なつき
・熊
【戦場】
・部屋には敵とこちらを遮るものが少ない
・外へ続く扉は一か所のみ
・敵が部屋へ到達すると、退路を塞がれる
・熊は敵より先に動くことができる
【分析結果】
・正面から戦闘すると不利。
・敵の進行を一時的に止める必要があります。
・熊の力を利用して敵の動きを乱すことで、退路を確保できます。
【戦術案】
①熊を敵の進行方向へ向かわせ、敵の足を止める。
②その隙に俺たちは外へ向かう。
③全員が外へ到達した後、熊を呼び戻す。
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「……これだ」
俺は熊を見る。
そして、なつきに言った。
「なつき」
「うん!」
「この子に、少しだけ時間を稼いでもらえるか?」
なつきは熊を見る。
熊も、なつきを見た。
「聞いてみる」
なつきが熊に話しかける。
「みんなを逃がすために、ちょっとだけ手伝ってくれる?」
熊は低く唸った。
「グォ……」
なつきが笑う。
「うん。分かったって」
俺は頷いた。
「よし。行くぞ!」
「グオォォ」
熊が大きな声で吠えた。
その咆哮は、空間全体を震わせた。
敵の足音が止まった。
「な、なんだ?」
「熊か!?」
なつきが、扉を開け熊が通路を駆けた。
ドドドドドッ!
「うわぁぁぁ!」
敵の叫び声が響く。
「今だ!」
俺たちは通路を走った。
そして、俺たちは裏口から外へ飛び出した。
「急ぐぞ!」
「うん!」
そこには、くろが待っていた。
そして、その後ろには――。
先ほどの熊が立っていた。
「熊も来たの?」
なつきが嬉しそうに駆け寄る。
熊が小さく鳴く。
「グゥ……」
「うん」
なつきが笑う。
「一緒に行きたいって」
熊が俺たちについてくる意思を示した。
その瞬間――。
【戦術の成功を確認しました】
まさか山奥で、熊まで仲間になるとはな。
だが――。
俺たちがこれから向かう場所には、もっと大きな何かが待っている。
そんな予感がしていた。
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【鈴木 正男】
年齢:18歳
身分:織田家家臣
石高:50石
統率:74
武勇:30
知略:84
政治:87
【兵科適性】
足軽:C
騎馬:D
弓:C
鉄砲:A
水軍:D
【スキル】
危険予知:Lv.5
危険回避:Lv.1
5S:Lv.5
改善思考:Lv.5
標準化:Lv.5
品質管理:Lv.5
工程改善:Lv.5
生産性向上:Lv.5
安全意識:Lv.5
戦術思考:Lv.1
立身出世
【経験】
危険回避:60
戦術思考:90
【実績】
現場改善:4回達成
【現在の改善対象】
戦用の荷車
【改善状況】
未着手
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