山の動物たちが教えてくれた砦【後編】
野盗たちが、俺たちを取り囲む。
その数――五十人。
刀を持った男たちが、次々とこちらへ近づいてくる。
「正男様!」
五兵衛が刀を構えた。
「大丈夫だ」
俺は周囲を見回した。
正面に野盗。
背後には砦の壁。
左側には崩れかけた建物。
そして右側には――。
「なつき!」
「なに?」
「そっちの建物、壊せるか?」
俺が指差した。
「やってみる!」
なつきは、くろの背中から身を乗り出した。
「くろ、お願い!」
「モォォォ!」
くろが方向を変える。
「おい、逃がすな!」
野盗たちが追いかける。
「五兵衛、左だ!」
「分かりました!」
俺たちは左側へ走った。
野盗たちは、なつきとくろを追っている。
俺たちの存在を、一瞬忘れている。
「正男様!」
「そのまま走れ!」
俺たちは建物の裏側へ回った。
そこには、細い通路があった。
「ここなら……」
俺は足を止めた。
通路の先には、崩れかけた石垣。
その手前には、大きな岩がいくつも転がっている。
敵は多い。
だが、ここは狭い。
五十人が一斉に攻めてくることはできない。
「五兵衛」
「はい」
「ここで迎え撃つ」
「ここで、ですか?」
「ああ」
俺は棒を握り直した。
「五十人を相手にする必要はない」
「え?」
「一度に戦える人数を減らせばいいんだ!」
五兵衛が周囲を見る。
そして、俺の意図を理解したようだった。
「なるほど……」
「ここなら、前に出てこられるのは数人だけだ」
「正男様らしい作戦ですね」
「それって、褒めてるんだよな?」
「すみません」
五兵衛が苦笑した。
そのときだった。
「モォォォォ!」
なつきの声が聞こえた。
「どりゃああああっ!」
ドゴォォン!
建物の壁が大きく揺れた。
すると、建物の一部が崩れ始めた。
「逃げろ!」
「壁が崩れるぞ!」
野盗たちが慌てて逃げる。
そして――。
ドドドドドッ!
大量の土と木材が、通路の一部を塞いだ。
「よし!」
俺は拳を握った。
「なつき、こっちだ!」
「分かった!」
なつきがくろを走らせる。
野盗たちは、崩れた建物のせいで二手に分断された。
「敵が分かれたぞ!」
「向こうにいる!」
「追え!」
数十人がなつきを追っていく。
残った野盗が、こちらへ向かってきた。
「来るぞ!」
五兵衛が刀を構える。
「分かりました!」
野盗が一人、通路へ入ってくる。
「死ね!」
刀が振り下ろされる。
俺は横へ飛んだ。
ヒュッ!
刀が目の前を通り過ぎる。
「危ない!」
その瞬間。
ゴンッ!
俺の棒が男の腕に当たった。
「ぐあっ!」
男が刀を落とす。
五兵衛が、その男を押し倒した。
「一人!」
「次が来ます!」
二人目。
三人目。
狭い通路に、次々と野盗が入ってくる。
だが、一度に一人か二人しか入ってこられない。
「押せ!」
「こいつらを倒せ!」
野盗たちが怒鳴る。
俺は後ろへ下がる。
五兵衛も下がる。
そして――。
「今だ!」
俺は地面に落ちていた岩を蹴った。
ゴロゴロゴロッ!
岩が野盗たちの足元へ転がっていく。
「うわっ!」
「足が!」
何人かが転ぶ。
「五兵衛!」
「はい!」
五兵衛が刀の峰で、転んだ男たちを次々と打ち倒していく。
ゴン!
ゴン!
ゴン!
「これで三人!」
「まだまだ来ます!」
「分かってる!」
そのときだった。
上空から鳥の鳴き声が聞こえた。
「チチッ!」
俺が顔を上げる。
さっきの鳥だ。
鳥は砦の奥を飛んでいる。
そして、何度も同じ場所を旋回している。
「……あそこか?」
俺は鳥の動きを見た。
「五兵衛!」
「はい!」
「あの先に何かある!」
「分かりました」
「道を作ります」
五兵衛が走り出した。
五兵衛は迫ってきた野盗の一撃を、紙一重でかわした。
そのまま相手の横をすり抜ける。
「水輪流――流水閃」
五兵衛の刀が、野盗の脇を斬り抜けた。
五兵衛は止まらない。
まるで岩を避けて流れる水のように、次の野盗へと向かっていく。
五兵衛が走り抜けたあとに、野盗達はバタバタと倒れていく。
正男は五兵衛の後を必死についていく。
そして辿り着いた。
「これは……」
そこには、大きな倉庫があった。
中には、木箱が大量に積まれている。
「食料ですかね?」
五兵衛が木箱を開ける。
「米があります!」
「なるほど……」
俺は周囲を見る。
砦に野盗が五十人。
そして、この大量の食料。
ここは一時的な隠れ家ではない。
「こいつら、しばらくここを拠点にしていたんだ」
「ということは……」
五兵衛が周囲を見る。
「他にも何かあるかもしれません」
「探すのは後だ」
俺は入口を見る。
「今は、野盗をどうにかする」
そのとき。
「正男!」
なつきの声が聞こえた。
「こっち!」
俺たちが振り返る。
なつきが、くろに乗ってこちらへ走ってくる。
その後ろから――。
「待て!」
「捕まえろ!」
大量の野盗が追ってきていた。
「なつき、こっちだ!」
「分かった!」
なつきが方向を変える。
俺は周囲を見た。
倉庫。
積まれた木材。
狭い通路。
そして、追ってくる野盗たち。
俺は考えた。
その瞬間。
頭の中に、聞き慣れた音が響いた。
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【戦術思考】
周囲の状況から、戦術を立案します。
【敵】
・野盗:約50人
・狭い通路では動きが制限される
・こちらを追っているため、周囲への警戒が薄い
【味方】
・俺
・五兵衛
・なつき
・くろ
【戦場】
・倉庫がある
・倉庫には木材が積まれている
・敵を狭い通路へ誘導できる
【分析結果】
・正面からの戦闘では不利。
・狭い通路へ敵を誘導することで、敵の人数による優位を抑えられます。
・木材を利用して敵の進行を妨害し、敵を一か所に集中させることで突破しやすくなります。
【戦術案】
①敵を狭い通路へ誘導する。
②木材を崩して敵の進行を妨害する。
③なつきとくろが敵を引きつけ、敵を一か所に集中させる。
④その隙に俺と五兵衛が反対側から進入する。
⑤敵の前後を塞ぎ、逃げ道を奪う。
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これならいける。
「なつき!」
「なに?」
「そのまま走ってくれ!」
「どこまで?」
「俺が合図するまでだ!」
「分かった!」
くろが走る。
ドドドドドッ!
野盗たちも追いかける。
「今だ!」
俺は倉庫の横に積まれていた木材を蹴った。
ガラガラガラッ!
木材が崩れる。
「うわっ!」
「何だ!」
野盗たちが足を止める。
その瞬間。
「なつき!」
「うん!」
くろが方向を変えた。
野盗たちは、狭い通路に詰まった。
「今だ!」
俺と五兵衛が反対側から走り込む。
「挟み撃ちです!」
「逃げ道を塞ぐ!」
五兵衛が刀を構える。
俺は棒を握った。
野盗たちは前にも後ろにも進めない。
「くそ!」
「動けねえ!」
「押すな!」
「何をしてる!」
完全に混乱している。
「なつき!」
「任せて!」
なつきが鍛冶槌を振り上げた。
「どりゃああああっ!」
ドゴォォン!
地面に鍛冶槌が叩きつけられる。
「うわあああ!」
野盗たちが尻餅をつく。
「今だ!」
俺たちは一斉に動いた。
俺は棒で野盗の手を打つ。
五兵衛は刀の峰で肩を打つ。
なつきは鍛冶槌を振り回して、野盗たちを吹き飛ばす。
くろは巨体で道を塞ぐ。
「逃げられないぞ!」
「くそっ!」
「こんなはずじゃ……!」
次々と野盗たちが倒れていく。
やがて――。
「降参だ!」
一人が叫んだ。
「俺たちは降参する!」
「俺もだ!」
「武器を捨てろ!」
刀が次々と地面に落ちていく。
カラン。
カラン。
カラン。
砦の中が静かになった。
俺は息を吐いた。
「……終わった?」
五兵衛が周囲を見る。
「そのようです」
なつきは鍛冶槌を肩に担いでいる。
「勝った?」
「ああ」
俺は頷いた。
「勝ったな」
「やった!」
なつきが笑う。
「くろも頑張った!」
「モォォ」
くろも満足そうに鳴いた。
その瞬間。
頭の中に、あの表示が浮かんだ。
【戦術の成功を確認しました】
「……よし」
俺は小さく呟いた。
「戦術を2回考えたことで、すでに20」
「そして、実際に成功したことで40」
「合計60」
「正男?」
なつきが俺を見る。
「どうしたの?」
「いや……何でもない」
俺は砦を見回した。
今回の戦いで分かったことがある。
数が多い相手でも、まともに正面から戦う必要はない。
地形を利用する。
敵を分断する。
一度に戦う人数を減らす。
そして――。
味方の強みを最大限に使う。
「戦術って、こういうことか……」
俺は呟いた。
「何か言いました?」
五兵衛が聞く。
「いや」
俺は首を振った。
「これからのために覚えておく」
そのときだった。
「正男!」
なつきが砦の外を指差した。
「動物たちがいるよ!」
俺たちが外を見る。
そこには――。
鹿。
鳥。
リス。
そして、何頭もの山の動物たちが集まっていた。
「……まだいるのか」
動物たちは、こちらを見ている。
なつきが近づく。
「どうしたの?」
鹿が一歩前へ出た。
「キュッ」
なつきが耳を澄ませる。
「……うん」
「何て言ってる?」
俺が聞く。
なつきは、しばらく動物たちを見ていた。
そして――。
「この山には、まだ野盗がいるって」
「何?」
俺の表情が変わった。
「この砦だけじゃないのか?」
「うん」
なつきが頷く。
「もっと山の奥にいるって」
俺は砦を見る。
五十人もの野盗がいた。
それでも、全部ではなかった。
「……なるほど」
俺は空を見上げた。
山の動物たちは、俺たちに危険を教えてくれた。
そして、この山にはまだ何かある。
「正男様」
五兵衛が声を掛ける。
「どうしますか?」
俺は少し考えた。
「まずは、この砦を調べる」
「はい」
「それから、残りの野盗についても調べる」
「分かりました」
なつきが笑う。
「あたしも行く!」
「もちろんだ」
「くろも!」
「モォォ!」
俺たちは顔を見合わせた。
こうして俺たちは、山の中にある古い砦を制圧した。
だが――。
これは、この山で起きていることの始まりにすぎなかった。
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【鈴木 正男】
年齢:18歳
身分:織田家家臣
石高:50石
統率:74
武勇:28→30
知略:84
政治:87
【兵科適性】
足軽:C
騎馬:D
弓:C
鉄砲:A
水軍:D
【スキル】
危険予知:Lv.5
危険回避:Lv.1
5S:Lv.5
改善思考:Lv.5
標準化:Lv.5
品質管理:Lv.5
工程改善:Lv.5
生産性向上:Lv.5
安全意識:Lv.5
【NEW】戦術思考:Lv.1
立身出世
【経験】
危険回避:60
戦術思考:60
【実績】
現場改善:4回達成
【現在の改善対象】
戦用の荷車
【改善状況】
未着手
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