山の動物たちが教えてくれた砦【前編】
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なつきが家臣になってから、屋敷への帰り道。
俺たちは、山道を歩いていた。
最後尾を歩くのは俺。
その少し前を五兵衛が歩いている。
そして、その先頭は――。
「なつき、もう少しゆっくり!」
「モォォ」
巨大な黒牛に乗ったなつきがいる。
「なつき、歩いている俺たちに合わせろ」
「正男って、細かいよね」
「お前が大雑把すぎるんだよ」
「そうかな?」
「そうです」
五兵衛まで頷いた。
「五兵衛まで!」
「そういえばさ、この辺だったよな」
「そうですね」
「何の話?」
なつきがペースを落としながら近づく。
「来るときに野盗にあったんだよ」
「あ! 親父も言ってた。最近、野盗がよく出るって」
五兵衛がくろを見上げて言った。
「まあ、今回は大丈夫でしょ」
正男もくろを見上げながら言った。
「そうだな」
「こんな大きい牛に乗ってるやつを襲おうとは思わんだろ」
「僕が野盗なら絶対逃げますよ」
くろが笑っているようだった。
「モォォ」
そんな会話をしながら、山道を進んでいた。
そのときだった。
「きゃあああああっ!」
山の奥から、悲鳴が聞こえた。
「!」
俺たちは一斉に足を止めた。
なつきがくろから飛び降りる。
五兵衛も刀に手を掛けた。
俺は周囲を見回した。
だが、何も見えない。
木々が生い茂っている。
山道も途中からいくつにも分かれている。
「どこから聞こえた?」
「向こう!」
なつきが右側を指差した。
「いや……」
俺は首を振った。
「俺には左から聞こえた気がする」
「私は奥から聞こえました」
五兵衛も周囲を確認する。
「声が反響しています」
「くそ……」
俺は耳を澄ませた。
しかし、もう悲鳴は聞こえない。
「誰か襲われているのかもしれない」
なつきが言う。
「早く、行こう!」
「待て」
俺はなつきの腕を掴んだ。
「場所が分からないまま走ったら、俺たちまで迷う」
「でも!」
「分かってる」
助けを求める声だった。
放っておくつもりはない。
だが、場所が分からない。
どうする?
山の中で人を探す。
前世なら地図やスマホでも使える。
だが、ここにはそんな便利なものはない。
「……困ったな」
俺が頭を抱えた、そのとき。
「モォォォーーーーーー」
くろが空に向かい大きく鳴いた。
「ん?」
俺たちが振り返る。
「どうした、くろ?」
くろが一歩前へ出る。
その瞬間だった。
ガサッ。
茂みが揺れた。
「!」
俺は身構えた。
だが、そこから出てきたのは――。
一頭の鹿だった。
「鹿……?」
鹿は俺たちを警戒するように見ている。
だが、逃げない。
そして、ゆっくりとくろの前まで歩いてきた。
「何してるんだ?」
俺が首を傾げる。
くろが鹿を見る。
鹿もくろを見る。
「モォ」
「キュッ」
鹿が小さく鳴いた。
「……今、会話した?」
「たぶん」
なつきが答えた。
「たぶんって……」
俺が呆れていると――。
バサバサッ!
頭上から鳥が飛んできて、木の枝に止まる。
「チチッ」
さらに。
「チチチッ」
別の鳥もやってくる。
「なんだ?」
俺が周囲を見る。
すると今度は――。
タタタッ。
小さなリスが木の幹を駆け下りてきた。
そして、くろの足元までやってくる。
「リスまで?」
俺は目を疑った。
鹿、鳥、リス。
次々と山の動物たちが集まってくる。
さらに少し離れたところから、もう一頭の鹿がこちらを見ている。
「……なんだこれ」
五兵衛も珍しく困惑している。
「私にも分かりません」
動物たちは、なつきではなく、くろの周囲に集まっている。
そして、何かを伝えるように鳴き続けている。
「くろ」
なつきが近づく。
「どうしたの?」
「モォ」
くろが山の奥を見る。
「そっち?」
「モォ」
「くろが分かったって言ってる」
なつきとくろが歩き出した。
「おい、待て!」
鹿も走り出す。
鳥も飛ぶ。
リスも木々の間を移動する。
「……まさか」
俺は動物たちの後を追った。
「五兵衛、行くぞ!」
「はい!」
巨大な黒牛が山道を進んでいく。
鹿が先を走る。
鳥が上空を飛ぶ。
リスが木々の間を駆ける。
まるで、俺たちをどこかへ案内しているようだった。
「正男」
なつきが振り返る。
「どうした?」
「あたし、この子たちが何を言ってるか分かるみたい」
「え?」
「悲鳴を上げた人がいる場所を教えてくれてる」
「…………」
俺は思わず立ち止まりそうになった。
「え、言葉分かるの?」
「うん」
なつきが当たり前のように答える。
「くろだけじゃなくて?」
「前まで分からなかったけど、今なら分かる」
「……マジか」
俺は思わず五兵衛を見る。
五兵衛も困ったような顔をしている。
「僕には、何と言っているのか分かりません」
「だよな」
そんなことを話しているうちに、山道が開けてきた。
そして――。
「……あれは?」
木々の隙間から、石垣が見えた。
古びた石垣で、ところどころ崩れている。
さらに進むと、そこには古い砦があった。
「砦?」
俺は目を細めた。
門は壊れている。
石垣も崩れている。
屋根の一部も落ちている。
長い間、使われていないように見える。
「打ち捨てられた砦ですね」
五兵衛が言った。
「こんな山の中に……」
俺が砦を見ていると――。
「……正男」
なつきが小声で言った。
「どうした?」
「くろが、あの中に沢山の人がいるって言ってる」
「え?」
俺は砦を見た。
古い砦、壊れた門。
その中にいる野盗たち。
いったい何人いる?
俺たちは三人。
正確には、俺、五兵衛、なつき。
そして、くろ。
「正男様、どうしますか?」
五兵衛が俺を見る。
俺は答えなかった。
「……どうすれば勝てるんだ」
俺は考えた。
敵は俺たちにまだ気づいていない。
ならば、先手を取れる。
その瞬間。
頭の中に、何かが浮かんだ。
【戦術思考の動きを確認しました】
【新しいスキルを獲得しました】
【戦術思考:Lv.1】
「……え?」
俺は目を見開いた。
新しいスキル。
『戦術思考:Lv.1』を見つめた。
画面が追加された。
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【戦術思考】
Lv.1
【効果】
戦場の状況を分析し、敵の動きや地形を利用した戦術を考える能力が向上する。
敵と味方の配置、地形、周囲の状況を把握し、戦況に応じた効果的な戦術を立案しやすくなる。
【成長条件】
戦術を立案することで、経験を獲得する。
立案した戦術が成功すると、追加の経験を獲得する。
経験が100に達すると、戦術思考が次のレベルへ上昇する。
【最大レベル】
Lv.5
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そして、すぐに続きが表示される。
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【戦術思考】
周囲の状況から、戦術を立案します。
【敵】
・野盗:多数
・敵は砦の中にいる
・こちらより人数が多い
・砦という有利な場所を確保している
【味方】
・俺
・五兵衛
・なつき
・くろ
【戦場】
・砦の入口は狭い
・砦の内部には建物がある
・敵は多数だが、全員が同時に動くことは難しい
・敵はまだこちらを完全には警戒していない
【分析結果】
・正面からの戦闘では不利。
・敵の注意を分散させる必要があります。
・敵の動きを乱し、隙を作ることで勝機を作れます。
【戦術案】
①敵の注意を分散させる。
②なつきとくろが正面から敵を引きつける。
③その隙に俺と五兵衛が別方向から砦へ侵入する。
④敵が分散したところを狙い、各個撃破する。
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なるほど。
俺は近くに落ちていた棒を拾い、握りしめた。
「五兵衛!」
「はい!」
「俺たちは反対側から入る!」
「分かりました!」
俺はなつきを見た。
「なつき!」
「なに?」
「くろと一緒に、派手に暴れ回って注意を引いてくれ!」
「分かった!」
なつきが、くろの背中にまたがる。
「くろ、行くよ!」
「モォォォ!」
くろが地面を蹴った。
ドドドドドッ!
「何だ、あれは!」
「牛だ!」
「追え!」
なつきが鍛冶槌を振り上げる。
「どりゃああああっ!」
門に向かってフルスイング!
ドゴォォォン!
壊れた門が吹き飛んだ。
何人かが飛んできた門の下敷きになる。
「うわああああ!」
「助けてくれぇ」
野盗たちが一斉に逃げる。
なつきが、くろに乗って砦の中へ突っ込んでいく。
「モォォォォォ!」
なつきが鍛冶槌を振り回しながら叫ぶ。
「どけ、どけ、どけぇ!」
ブンッ!
鍛冶槌が振り抜かれる。
「ぐわあああ!」
男が一人吹き飛ぶ。
その後ろにいた男も巻き込まれる。
「ぎゃあ!」
くろが突進する。
ドドドドドッ!
「避けろ!」
「無理だ!」
「壁に逃げろ!」
ドォン!
三人まとめて吹き飛んだ。
「なんだ、この女!」
「化け物か!」
砦の中が一気に混乱する。
「今だ!」
俺たちは、なつきとは反対側から砦へ走った。
敵の視線は、完全になつきとくろへ向いている。
今なら――。
俺たちも動ける。
俺たちは砦の中へ飛び込んだ。
そして、最初の野盗が俺に気づいた。
「敵だ!」
男が刀を抜く。
「死ね!」
刀が振り下ろされる。
俺は――。
横へ飛んだ。
ギリギリ。
刀が目の前を通り過ぎる。
「危なっ!」
次の瞬間、別の男が横から襲いかかってきた。
「右!」
五兵衛の声。
俺は反射的に身体を沈めた。
ヒュッ!
刀が頭上を通過する。
「まだいるのか!」
俺は棒を振り上げた。
「おりゃ!」
ゴンッ!
男の腕に棒が当たる。
「ぐあっ!」
男がよろめく。
俺はそのまま走った。
【戦術の成功を確認しました】
「追え!」
「逃がすな!」
背後から複数の足音が迫ってくる。
俺は振り返った。
「……多すぎるだろ!」
野盗たちが次々とこちらへ向かってくる。
その数――。
五十人。
俺たちの戦いは、ここから始まった。
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【鈴木 正男】
年齢:18歳
身分:織田家家臣
石高:50石
統率:72
武勇:28
知略:83
政治:87
【兵科適性】
足軽:C
騎馬:D
弓:C
鉄砲:A
水軍:D
【スキル】
危険予知:Lv.5
危険回避:Lv.1
5S:Lv.5
改善思考:Lv.5
標準化:Lv.5
品質管理:Lv.5
工程改善:Lv.5
生産性向上:Lv.5
安全意識:Lv.5
【NEW】戦術思考:Lv.1
立身出世
【経験】
危険回避:40
戦術思考:30
【実績】
現場改善:4回達成
【現在の改善対象】
戦用の荷車
【改善状況】
未着手
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この話では、なつきが大暴れしました。
なつきは鈴木家臣団随一の猛将です。
徳川家でいえば本多忠勝のような存在で、その圧倒的な強さは時として戦局そのものを変えてしまいます。
これからも、なつきの活躍を楽しみにしていただければ幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。




