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七本槍の道化衆3 (テイルエンドとミルロワールの王女)  作者: 熊野文助


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第一話 王女ルイーゼと聖九華戦姫⑤

 転移陣は直径5メートルくらいの大きさで出来ている。通常は転移陣の中心に起動させる装置が置かれている、その装置に手をかざすと次の階へと行ける。不思議な装置である。

 

 僕達はワルト洞窟の地下4階に到着した。地下2階を一瞬で通過して次の階層地下4階へと差し掛かった。何かをする訳ではなく、ただマトゥキの後ろに付いて何も語らず背中を追うだけだった。

 地下2階で簡単に説明を受けたが、この洞窟には交わる事の無い2ルートが存在する。地下1階、3階、5階までを進む成人儀ルート。地下2階、4階、6階から10階までの王位儀ルートである。最初の一階の転移陣でどちらかを選択出来き、その後は別々の階を進んで行く事になる。

 成人儀ルートは地下7階まで謎解き形式となっている。転移陣から次の階に着くと右側の壁に次階層へ行くヒントが書かれている。このヒントを頼りに転移陣を移動していくと正解であれば、転移陣は次階層へと送ってくれる。しかし、間違えであれば転移陣はこの階の最初の転移陣の前に戻される。場合によっては1階まで戻されるらしい。その転移陣をくぐり抜けると、地下8、9階は文字通り迷宮となる。転移陣はなく、ただひたすら歩いて突き進む。そして10階に地上戻る転移陣と証明書と言われる証明の遺跡があるらしい。基本的にはモンスターはいないと言われている。洞窟に入って出るまでが試練と言われており、水、食料の不足や精神的な管理を怠ると、退場を余儀なくされる。


 ルイーゼ王女はどこにいるのだろうか。


 そう考えているうちに僕たちは地下7階まで降りてきた。地下7階も同様に転移陣の移動試練だった。

 マナ寄せ開眼を使う。少しずつ転移陣のマナが見えるようになってきた。

 僕はみんなの前で指を差した。

「最初にあの陣、次、次、次、最後にあれの乗れば下に行ける?」

 僕の声に皆の動きが止まった。

「ナギトあの問が解けたの?」

「違うよストナ。転移陣のマナを読んだ。」

「へえ!そんな事出来るんだ。」

 マトゥキがゆっくりと僕に近づいてきた。そして右肩に手を置くと次の瞬間、首筋に冷たい感触がした。

 レイピアを取り出していたのだ。

 な、なぜ?

 ストナもオーウィズも予測外の動きに反応が出来ていない。

「いいか、それ以上は何も言うな。」

 そこまで言うとレイピアをしまった。何が起こったのか誰も分からずにその場で立ち尽くしていた。僕はマトゥキを怒らせたのだろうか?

 マトゥキはもう一度僕達の方を振り向いて、僕を指差して言った。

 「君は気をつけた方がいい、転移陣はスルーニル国でも最大の機密事項だ。その機密を読める眼を持っていると言うだけで、スルーニルからも反スルーニル側からも狙われる。命が欲しければ見えてもそれ以上は何も言うな。この転移陣には王家関係しか知り得ない情報が詰め込まれている。君の眼がそれを見たと分かる発言をした場合、私は即座に君の首をはねる権威を預かっている。肝に銘じておくように。」

 そこまで言うと、マトゥキは1人で転移陣の方へ歩いて行って、僕がさっき言い当てたルートで消えていった。

「何?今のどういう事?知り得ない情報って何?ナギト何を見たの?」

「何も見てないよ。ただこの転移陣が次にどこへ行くのかが見えてきた。ちなみに手前の転移陣は上の方へマナの動きがあるから、1階戻りだと思う。」

「何でそんな事で殺されないといけないのよ。おかしくない?」

 ストナはそこまで言ってなぜかオーウィズを睨んだ。

「私に言われても、こっちもスルーニル側ではないのだから、ただ……。」

「ただ?」

「スルーニルと同盟国ではない国々からはスルーニルの古代遺跡を廃棄しろとの要求があるのは知っている。」

「古代遺跡って何よ?」

 オーウィズは両手の平を返して無言で知らないと答えた。

 何か重要な秘密があるかも知れないけど、声に出すなと言う事だろう。でも、怖いよ。もう少し優しく伝えられないのか?


 マトゥキの後を追って僕達は地下8階へと転移陣を使って降りて行った。

 今までとは全く違う風景が広がった。地下8階は入り組んだ洞窟となっていた。

 今までは洞窟内の部屋に転移陣が並んでいたが今度ばかりは大きな洞窟であった。

 既にマトゥキが首を長くして待っていた。

「ここからは転移陣はない。道を誤れば戻ることも出来ない。気をつけろ。ナギト、お前の眼を使え。」

「?」

「もし、ルイーゼ王女が道に迷った場合、共鳴石を使う。あの石は割と辺りにマナが飛ぶ、そのマナを頼りに救助者の捜索が出来る様になっている。ナギトの様にマナを嗅ぎ取る犬を使ってな。」

 犬の言葉に反応して、ストナが大笑いした。

「ナギト、犬。最高!」

「ストナ姉、犬より利口だ。言葉も通じる。」

 と、2人で笑い合っている。最低だ、この2人はと思いながら、僕はバキアの方へを見てサーチスキルを使ってもらおう頼もうとした。その時、彼女の顔が少し暗い事に気が着いた。

「どうしたんですか?体調とか悪いのですか?」

 僕の言葉にあまり反応せず、小声で「大丈夫です。」と答えてからサーチを使ってくれた。

 

 バキアは聖九華戦姫の庶務部隊隊員21歳。僕達より少し歳上だ。資質は植物士。スキルは植物サーチ、調合、育成といったレアスキル持ち。薬師系の道に進める能力の持ち主である。冒険者としては王下Dランクをもっている。レア冒険者ランク(王下Eランク)を持つ僕からすれば、うらやましい限りである。

 引く手あまただろうな。

 黙々と仕事をこなすタイプなのか、ほとんど何もしゃべらずに付いてきている。ストナが話掛けているが必要最小限の回答をするといった雰囲気だ。気の合う仲間がいない為か、元々無口なのかは分からない。

 たた、この状態を嫌っている事には違いなかった。



 複雑な洞窟内で訳も分からずにマトゥキの後を追う。広さだけでもかなりの面積の地下空間である。

「ナギト、開眼で方向は分かる?さっきみたいに?」

「無理かな。道に何かのマナがある訳でもないから、でも広すぎない?」

 オーウィズは話に割り込んできた。

 「地下8階と考えると山の裾よりは下に達していると考えていい。地下洞窟と言っても過言ではないな。そう考えるとこの辺りの山脈の地下にある巨大遺跡かもな。」

「そ、」僕は少し声のトーンを下げた。

「それってさっき言っていた古代遺跡って事?」

「かもな。この遺跡の謎を解けば……。」

 そこまで言うとオーウィズは親指で首を切る様に左から右に移動させた。

 国家機密とかもうヤダ!

「ここだ。」

 マトゥキが僕を呼び寄せた。そして右手の岩の中へと入って行った。

 これ?

「光の坑道と同じ原理ね。もう、あそこの遺跡の後片付けは辞めてほしいわ。」

「ストナ、遺跡じゃないよ。鉱山だよ。」



 階段を降りるとそこは……血の海だった。

「な、なんだ?」

 これも試練?

 そう思ってマトゥキを見ると、彼の表情からとても試練とは思えなかった。既にレイピアを構えている、敵がいると言う事だ。

「いやー、もういやー」

 バキアが大声で叫んだ。彼女の声が洞窟内にこだました。マトゥキが一度彼女をにらんだが、小さなため息をついて前の方を向いた。

 発狂状態にあるバキアへストナが寄り添う。事務官なら当然か?こんな修羅場あまり出会うものではない。

 この状況を見慣れてしまっている自分に少し嫌気が差した。

 ミンチ?いや細切りにされた肉がフロア全体を覆うように巻き散らかっている。マトゥキが肉の断片を手に取って何度も眺めた。

「聖騎士のスキルだな。」

 ……。僕はその一言に背筋が凍り付く。

「まさか、万位十字格子閃?」

 僕はそこまで口に出して、恐る恐るマトゥキの方を見た。

「聖撃昇や聖閃光でも可能たが、切り口がそれらのスキルだ。」

「と、言うかマトゥキさんは傷口でスキルが分かるのですか?」

「お前の眼はどうなんだ?」

 いつの間にか僕の眼が解除されていた。さっきあの空間に入った時だろう。マナ解除の何かが作動したと思われる。

 僕はサーチスキルを頼もう度ストナとバキアの方を見た。しかし、ストナが首を左右に振りバキアがスキルを使えない状態だと言葉を話さずに告げた。

「今は無理そうです。」

「そうか。気をつけろ、数名の敵がいる。」

「数名?」

「お前の足元の細切れ、火の短刀系タイプの切り口が混じっている。あと、右手側に水の槍系の傷がある。最低相手は3名。」

「ここでは何名くらいが切り刻まれているんですか?」

「分からんが血と肉の量から10名近い。」

 その言葉にオーウィズの身体が敏感に反応する。暫く全員の沈黙が続いた。

 マトゥキが血と肉の海となっている広場を周り始めた。

「どうしたんですか?」

「状況を整理する。部屋一面にある武器や防具を集めろ。」

 集めろと言っても、この血の海から広い上げるのか?僕とマトゥキの2人で落ちている武器防具を集め始めた。


 状況を整理する。

 ルイーゼ王女の護衛としてこの洞窟にいるメンバーは多くて6名。ラーナキュアル、シャクヤ、カトレア、ジニア、キンセカン、マリーゴールド。

 王女合わせて最大で7名だ。

 護衛でここまで来た聖都騎士団2名と門衛2名ならここで10名が殺されても話としてのつじつまは合う。だが、残された武器と防具が合わなかった。槍が2本と鎌が1本だ。

 バキアはその武器を見た瞬間に大声で泣き出した。

「シャクヤ、カトレア、マリーゴールド!」

 バキアの悲しむ姿を見て申し訳ないけど、ルイーゼが生きている可能性が出てきた。

 でも、なぜ3名でこんなに血と肉が飛び散つまているんだ。

「進もう。」オーウィズがそう言うと、ストナがバキアを立たせて歩き始めた。


 暫く進むと、辺り一面の異変に気が着いた。バキアも落ち着いていてサーチスキルを使ってくれた。

 マナ寄せ開眼。小さなマナの粒が舞っていた。

「共鳴石を使った時に出る粒子かもしれん、跡を追えるか?」

「やってみます。」

 僕はマナの粒子が多い方へと進んでいった。



 2人の話す声が聞こえ始めた。

「無理よ、もう誰も助からない。隊長さん、諦めてありかを吐きなさい。そうすればひと思いに殺してあげるわ。」

「いい加減にしなさい。あなた聖九華戦姫としてプライドは無いの?あんな化け物の下に付く気なの?」

「王女様に付いて死ぬよりはマシでしょ。私は勝つ方に付くわ。聖夜の心はどこにあるの?」

「無いわよ。残念ね。あれは囮よ。私達の中に裏切り者がいてもすぐ分かる様にしてたのよ。」

「あ、そう、それならさよなら……。」


 そこまで会話を聞くとオーウィズが飛び出した。

「ラーナキュアルに触れるな!」

 壁際に隠れて少し話を聞いていたがオーウィズが飛び出した為、僕達も彼女達の前に出ていった。

 そこには、2人ではなく、3人がいた。先程の会話から右手側に倒れているのがラーナキュアル隊長だろう。中央でラーナキュアルに刃を向けているのが、聖九華戦姫隠密部隊隊員キンセカン。左手奥にいるのは誰なのか分からない。

「バートル!」

 ストナが声を上げる。

 そのストナの表情から相手はだいたい想像がつく。

 王下聖騎隊員だろう。

 王下聖騎隊員は多かれ少なかれ一部の隊を除いて顔は合わせている。合っていないのは、最近入った新人か、もしくは聖騎隊最強軍団とも言われる第一部隊か第二部隊だ。向こうでこっち見る表情から余裕がうかがえる。新人ではない。第一、第二のどちらかだろう。

 そして、どう見ても仲間として会いに来たとは思えない状況。間違いなく、王下聖騎隊はリリラ側に寝返ったと言う事だ。(向こうからすれば、こっちが反旗を翻したと言う事になるけど。)


 バートルと呼ばれる女性はこっちに歩み寄って来た。

「これはこれは逆賊のオーウィズ殿下ですか。まさかここでお会い出来るとは思いませんでした。嬉しい限りです。あなたには即死可の命令が出ております。どうします。選んでください。死罪か禁固か。」

 そう言うと小型の槍をこっちに向けてきた。

 その時、オーウィズと彼女の間にマトゥキが割り込んだ。

「お嬢さん、どなたか存じませんが、国と所属をお答え願う。」

 バートルは急に現れたマトゥキに怪訝な顔をして目を細めた。

「誰、この人?私は聖京都、王下聖騎隊、2番隊バートルよ。だから何?あなたは?誰?」

 バートルが答える。いや答えている瞬間にバートルは地面に埋もれていった。

 マトゥキにうつ伏せへとさせられ、両手を後ろで縛られていた。しかも縄で!どこに出したの?客観的に眺めていた僕達も何が起こったのか分からなかった。時間を止めるスキルがあれば、さっきの様に見えるのだろう。

 僕が初めて会った時、喉元を突かれた様に感じたけど、色々と違う気がしてきた。速すぎる。

 マトゥキはバートルを押さえつけながら尋問を始めた。

「お嬢さん、誰と潜った。何が目的だ。」

 そう言うと容赦なくレイピアを肩に突き刺した。

「大丈夫だ、ポーションなら幾らでもある。死なない程度に尋問してやる。まずは誰の命令でここに来た。」

 黙っているバートルに再びレイピアを突き刺す。


 僕はもう一方のキンセカンの方へ剣を向けた。戦意は失っているようだ。マトゥキがバートルに向かう途中に彼女の双短刀を奪っていた。拘束されてはいないけど、マトゥキの登場で反抗する気は無くなった様だ。

「ルイーゼ王女はどこにいる?お前は何をした。」

 僕は抵抗を見せていない彼女に向って剣を向けて質問した。


 今、オーウィズがラーナキュアルの治療に当たっている。彼女は瀕死の状態だ。結構痛めつけられた様に思える。バキアも同様にこの状況を理解出来ずに錯乱している。ストナが隣についている状態で彼女の気持ちを抑えている。6対2で傍から見るとこちらの方に分があると思えるけど、相手は何人いるのか分からない。ここで気を緩めてはいけない。僕は再びキンセカンの方へ視線を向けた。

 キンセカンは女性としてはかなり小柄体型である。隠密部隊の隊員である以上、正攻法でないスキルを有している可能性がある。密偵資質だったゴアが使った霧隠系のスキルを使われると逃げられる可能性がある。ただ、僕にはマナ寄せ開眼があるからそう易々と逃げられるとは思っていないけど、奇策系のスキルは用心に越したことはない。

 僕は彼女へ剣先を向けた。

「答えろ。もう逃げられない。」

 …………。

 彼女は暫くうつむいていたが、少しだけこちらへ顔を向けて目が合った。

 …………やばい。なんだ。やばい気がする。危険臭が漂う。

 キンセカンは突然声を荒げた。

「そうね、私はもう無理よ。だからあなたを道連れにしてあげる。死になさい。私のミラーリンクよ。」

 なんだ。身体が動かない。

「ナギトー!後ろに避けろ!彼女の周りに入るな!」

 そう言うと彼女は僕小さな短刀をどこからか取り出して僕と同じ様にこっちに短刀を突き出した。その後、短刀右へと向けた。

 …………。どう言う事だ?今度は僕の身体が勝手に動き、剣を右へと向けていた。

「これがミラーリンクよ。あなたは私と同じ動作しか出来ない。私が首を切ればあなたも同じ。さようなら。」

 やばい。身体の自由がきかない。

 その次の瞬間、彼女の首が飛んだ。


 マトゥキがキンセカンの動きより早く攻撃して、一瞬にして彼女の首を切っていた。

「油断をするな。」マトゥキはそう言ってオーウィズの方へ歩いて行った。

 バートルは既に息絶えていた。マトゥキはオーウィズに向かって話し出した。

「どうやらルイーゼ様はブルドと一緒にいるそうです。彼らがどうやってこの洞窟に入ったのかは不明ですが、ルイーゼ様は束縛されている可能性があります。追いましょう。」

 すると、マトゥキはラーナキュアルを抱えて歩き出した。

「お嬢さん達も大丈夫ですか?先へ進みますよ。」

 とストナとバキアに声を掛けた後でもう一度オーウィズを見た。

「存じていると思いますが、この洞窟へ陛下の許可なく踏み入った者はたとえ王下聖騎隊2番隊隊長ブルド殿でも……死罪です。よろしいですな。」

「構わない。姉に手を出した時点で聖京都でも死罪だ。」

「それなら安心しました。」そう言って歩き出した。

 


 王下聖騎隊2番隊隊長ブルド。会った事はないけど、噂には聞く。いよいよ王下聖騎隊と正面対決になるのか。少し、ため息が出た。

 その事を考えないように、僕達はルイーゼ王女の後を追った。



 最後の階段を降りると地下10階は小さな小部屋だった。

 そこには中央に転移陣があり、奥に謎の石碑が立っていた。しかし、ルイーゼ王女はいなかった。

「ここに秘訣を残す」石碑にはそう書かれていた。

「ナギト、行くぞ」オーウィズに呼ばれて僕は転移陣の中へ入った。そして、僕達はワルトの洞窟を後にした。



 地上へ戻って来ると、女性が一人外の方を眺めて佇んでいた。

「誰だ。」マトゥキがそう言うとその女性はこっちを向いた。

 見覚えのある顔がそこに立っていた。

 旅券団のリーダーであるキャロリーだった。

「キャロリー!」

「あら、久しぶり。」彼女はそう言って右手を軽く上げて手を振ってきた。

「お前がなぜここにいる?」

「仕事よ。あ、その前にちょっと待って。」

 そう言うと、彼女は振っている手をお辞儀させるように3回下に向けた。すると、マトゥキとバキア、ラーナキュアルが倒れる様に床に転がった。たちまちすぐにマトゥキのいびきが聞こえてきた。

「殺さないわよ。私の用があるのはあなた達3人だけ、正確にはナギトだけだけど……。そこのおじ様、油断できないから、楽しい夢でも見てもらっているわよ。」

「僕に何の用だ。」

 その会話にオーウィズが割り込んできた。

「その前に姉さんはどこだ。答えろ。」

「あなたがオーウィズ王子ね。はじめまして。私の知っている範囲で答えて上げる。どこにいるのかは知らないわ。今は王下聖騎隊のブルド隊長と一緒よ。たぶん疑問だと思うから、私がどうしてここにいるかも教えてくあげる。依頼があったのよ。私達旅券団に。このワルトの洞窟へ入る為に門衛をどうにかしてほしいってね。」

「殺したのか?」

「やだ!下品。殺さないわよ。上よ。上の見晴らしの良い丘で寝ているわよ。4人共。そこのおじ様みたいにね。あなた達は旅券団を勘違いしていると思うけど、私達は義賊を名乗っているのよ。正義の盗賊団よ。基本的に相手を殺さず物を奪のがモットーよ。」

「嘘をつくな。何人殺した。」

 彼女は仲間だったカプサイシン達を殺した。それを言うと彼女はちょっと深いため息をした。

「だから、あれはあいつらが最初に手を出したからよ。手を出さなければ、こちらも手を出さないわよ。そもそも盗みも金持ちの連中からしか取らないわよ。」

「これこそ嘘だ。お前はマルマルの鉱石袋を盗んだ。マルマルは金持ちなのか?」

「そうそれ。」

 そう言うと、彼女はこっちに一歩近づいてきた。

「その件でお詫びに来たの。どうしてもクライアントから硬芯鋼柔芯鋼を持って来てほしいと頼まれていて、あなた達しか持ってないから、致し方なしにもらう事としたの。」

「その鉱石はいらないからマルマルの袋だけでも返せ!」

「ごめんなさい。盗賊が盗んだ物を返すなんてあり得ないでしょ。それは私達のルールに反するの。だ・か・ら。これをあげるわ。」

 そう言うと、彼女は何か巻物を上空に投げた。その巻物はゆっくりと落ちて僕の手の上に乗った。

「それは地図よ。暇な時に解読してみて。じゃあね。」

「待てよ。」

 僕が呼び止めると、彼女は目を見開く様にこっちを見た。

 彼女の禍々しいマナが僕達の全身を覆い尽くした。身動きができなかった。

「一言言い忘れたわ。もし、本当に袋が欲しければ、境界なき魔境にある私達のアジトに来なさい。私達との殺し合いに勝てば返してあげるわよ。」

 そこまで言って彼女は去っていった。


 彼女は実力を隠していたけど、強い。今の僕達では全く歯が立たないだろう。



 その後、僕達はクック、ルートバーン部隊と合流した。

 ワルトの洞窟や周辺の捜索を行ったが、ルイーゼ王女はどこにもいなかった。

 これからどうなるのだろうか?

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