第一話 王女ルイーゼと聖九華戦姫④
僕は3回目の闘技場へと足を運んだ。
セアリーは既に闘技場の上で待ち構えていた。観衆の熱気は最高潮に達している様だ。彼女の一挙手一投足に観客はすさまじい歓声と拍手で応えている。……。
やめてくれ。テンション違いに一歩どころか百歩引いている自分がいる。孤独感が半端ない。ここがロトアルだからではない気がする。彼女の持つスター性がこの会場の雰囲気を作り出している様にも思える。僕人身もこの戦いを申し込まれた時には嫌ではなかった……気がする。
この雰囲気を作り出しだしている観客側の多くは聖都騎士団に所属する隊員である。
聖京都は国防・特に対国外を担う国王軍と国内・特にモンスター討伐を担う聖騎隊に分かれている。良し悪しはともかく、力は分散される。
スルーニル国は聖都騎士団が一手に担っている。しかも、歴史と人口的なものもあるだろうけど、各12師団が300から500もの隊員を有する。
聖京都とはレベルが違う。あまり大きな声では言えないけど……。
その大軍勢を背に目の前の女性は僕の前に立ちはだかっていた。
スルーニル国王第七王女セアリーはこの聖都騎士団の第3師団長を務めている。見た目は華奢で少し童顔。魔法使いの様で攻撃系。このギャップからかスルーニル国でも屈指の人気を博する。
その対戦相手のカードがこれである。
〘セアリー(27歳)聖都騎士団第3師団長 理力使い資質武器タイプ杖(使用スキル ハイヒール 火炎球、理力)〙
作戦はない。ただ戦え、ただ耐えろ。出来たら勝て。
それがオーウィズ達からの助言だった。……、やる気ないだろ。オーウィズ達の目的(姉を追ってワルト洞窟へ行く)は既に達成している。更に僕がここで勝っても負けても戦えば、追加でワルトの洞窟まで転移陣という転移魔法でワルトの洞窟まで送ってくれるらしい。要は戦ってくれれば目的達成。
気持ちは分かるが、それでも少しは助言をくれよと思う。
紙からの情報だけでは全く読めない。理力使いとは魔法使いに近い資質らしい、聖京都にはいないレア資質の為、あまり詳しい情報はない。そして、スキル理力も全く不明。その上ハイヒールなんて何に使うのか?火炎球で丸焼けとなった僕に使う為?優しい心遣い?それともスキルは2つで十分度言う挑発なのか?
とにかく自信に満ちているこの王女様は要注意である。勝敗にこだわる必要はない。しかし、ここまで来てわざと負けるつもりは毛頭ない。たぶん向こうも手を抜いてほしいとは思っていないだろう。
僕は闘技場の上に登り、セアリーに向かって一礼をした。向こうもこっちに向けて軽く頭を下げた。そして、彼女が審判の方を向くと審判はいつもの開始手順を終えてからゆっくりと闘技場から降りていった。
3回戦目の始まりだ。
セアリーはこっち見て笑顔で少し頭を右に傾けた。
こ、怖い。絶対に何かを企んでいる。
いや、むしろ企んでなければ、ここまで試合をしたいとは言わないか。やるしかない。たぶん向こうから攻めてくる。僕の攻撃スタイルに全面的に戦う気でいるから勝負してきたんだろう。彼女の初手をどう防ぐかがポイントだ。
杖にマナが集まる。このマナ火炎球だ。手に持っている杖は(杖と言うよりハンマーやこん棒に近いけど)魔法攻撃用と言うより接近戦向けに見える、魔法攻撃に絡めて物理攻撃を仕掛けて来る可能性が高い。
武魔両刀。それが彼女の攻撃スタイルと見た。
僕は身構える。
マナが高まる。火炎球が来る!
すると、セアリーは火炎球を自分の足元に真下放った。
!?何?どういう事?
と、次の瞬間、爆発的な動きで僕との距離を詰めて来た。なんだ?この動きは?
先程の火炎球とは種類の違うマナが彼女の足と杖に付加されている。
理力使いってそう言う事か!魔法を使って排出した力を付加させる能力!それが理力なのか?
マナ返しで食らう衝撃波の部分を使っている事か?。
理力を足に付加して勢いよく僕に攻撃を仕掛けてくる。杖にも理力が付加されているので、桁違いのスピード攻撃が僕を襲う。
僕は剣で弾こうと考えたが、ヤバさを感じた。この攻撃……、狙いは武器破壊だ。
下手に引けば相手の思うつぼだ。どうする。ここは回転マナ返しで避けながらカウンターを狙うしかない。けど、実際に狙いを定めていないカウンター攻撃がどこまで通じるのかは分からない。
でも、迷っている時間はない。
「回転マナ返し」
咄嗟に使ったマナ返しで、セアリーの攻撃は避けられた。しかし、弱点は避ける上に攻撃を仕掛ける為、攻撃後にカウンターを回避されると隙が出来る。
予想通りマナ返し後に数秒の固定時間が出来た。やられるか………。
向こうは攻撃を仕掛けて来なかった。避けると思わなかったのかもしれない。向こうもこっちの行動は予測外だったのか?
再び、体勢を整えてから火炎。からの攻撃だ。
次同じ事をすれば必ず彼女は隙を付いてくる。
どうする?途中でスキルを解除したらどうなるんだ?
そもそもスキルを解除なんて僕に出来るのか?
スキルは解除が出来ないタイプと出来ないタイプに分かれる。マナ寄せは解除が出来る。マナ返しや回転マナ返しを解除した事がない。ストナは時々聖流剣の解除をしてスキルを止める事が出来る。それをも利用した動きは相手に予想させない脅威となる。ただの緩急を超えた緩急を解除と言う裏技で作り出している。
この裏技、仮に出来たとしても簡単ではない。使い方を誤れば相手の攻撃を正面から喰らう事になる。だからこの眼で見るんだ。相手の動き、マナの動きを見極めろ。
セアリーの攻撃をギリギリまで見極める。彼女のマナと自分の身体が接触した瞬間、回転マナ返しを使い、彼女の身体と僕の身体が横へと並んだ瞬間にスキルを解除した。
出来た。回転マナ返しの応用技、マナ避けバージョンだ。直ぐに相手の攻撃を防ぐ為に身体を反転して彼女へ向けて身構えた。彼女は一瞬立ち止まった。
再び彼女が笑う。だからその笑顔怖いんだよ。
そして再度足元に火炎球を放つ。
きた。同じ様にかわす。そう思った瞬間、彼女の杖にマナが宿る。このマナはハイヒール?ここでどう使うんだ?彼女は僕に向けてハイヒールを飛ばしてきた。
なぜ?
ハイヒールを受けて、僕の体力と傷が回復する。
ま、まさか…………。
身体が動かない。当たり前と言えば当たり前だけど、ヒールを受けた瞬間、身体は回復側へ機能を移す。数秒だけと、身体は動かなくなる。と言うより、回復に専念する。その一瞬を狙ってきた。
まさかヒールをパラライズ代わり使うなんて、そんな曲芸が存在するとは……。
とは言え、このままではこのハイヒールパラライズから抜け出す前に杖で殴られる。なんとか避けなければ……。
ヒールパラライズで回転マナ返しを使った場合どうなる?考えるな!やるしかない。
「回転マナ返し」
避けきれた。ハイヒールパラライズを回転マナ返しで解除出来た。
相手……セアリーも一度足を止める。お互い膠着状況になった。
肩呼吸が止まらない。心拍が極限状態で鼓動を鳴らす。
この人は強い。強いと言うレベルではない。魔法の現象を事細かく研究しているのだろう。ヒールをパラライズとして使う、一般人には思いつかない。だけど、対人との戦いならアリだと思う。通常のパラライズなら状態異常耐性があると全く機能しない。それを見込んで突っ込めば返り討ち。でも、ヒールパラライズは誰もが耐性がなく受け入れてしまう。パラライズに比べれば、束縛時間は短い、けどそこを突けば防御不可の攻撃となる。彼女は天才なんだろう一種の。
場内は静まり返っている。会場全員が彼女の次の行動を見守る様に……。
彼女は両手で杖を持ち、肩の高さに水平に上げた。
今度は何をする気だ。僕は再び構える。
すると、両手を広げた。手からゆっくり度杖が転がる様に地面落ちて行った。
杖が地面へと落ちると今度は両手を上に上げた。
「降参、私の負けよ。」
その時、会場から再び歓声が鳴り響いた。
鳴り止まない歓声の中、セアリーは僕にゆっくりと近づいて来た。そして手を差し伸ばしてきた。僕も彼女に手を差し伸ばし握手をした。
「面白かった。あの攻撃をかわすなんて思ってもみなかったわ。」
「あのヒールパラライズはヤバかったです。かわせたのは運です。」
彼女は少しキョトンとした顔をしていた。暫くして大声をあげた。
「えー!ハイヒールの意味分かったの?ヒール後の硬直状態の狙いも。すごい!やっぱりあなた、最高ね。」
「……?」
「あのヒールはみんな奇抜なだまし攻撃度思っている人が多いわ。実際にあの攻撃で殴られても気がついていない人がほとんどよ。あの攻撃を初見で避けたのは師匠とあなたくらいね。おめでとう。あなたの勝ちよ。」
「でもなぜわざと降参を。」
「私はあなたの力が見たかっただけ、まさか避けられとは思っても見なかっただけよ。また会いましょう。」
そう言うと、彼女は杖を拾って前と同じ様に杖を上に上げて回しながら去って行った。
勝った。
そして、親善試合はここで幕を閉じた。
翌日、僕達は王宮の地下に集っていた。
メンバーはオーウィズ、ストナ、僕、バキアである。僕達は王女ルイーゼを追ってワルトの洞窟へ行く事になり、ヒツメジと残り聖九華戦姫の2名は情報収集の為、この王都ロトアルに残り聖京都の情報を探る事になった。
オーバーテクノロジー研究所のドトラックが僕達を迎えてくれた。そして地下へと案内された。右手にマトゥキ、左手に女性の魔法使い風の騎士が僕達を護衛と言うより連行する形で……。
ドトラックは少し高い台の上から僕達を見下ろす様に話しだした。
「おはようございます。本日はこの転移陣でワルトの洞窟まで移動します。皆様はワルトの洞窟へは何をする為に行きますか?」
オーウィズが「姉、ルイーゼに会うだけだ。幻影石の結晶には興味はない。」と答える。
「やはり、幻影石の事はご存じでしたか。皆様、いやオーウィズ様が幻影石の採掘するのは構いません。しかし、ワルトの洞窟では幻影石は採れません。あの洞窟、実は採掘場ではないのです。」
「え?」
「ワルトの洞窟は別名「試練の洞窟」。古来の国王が作り上げた儀式の洞窟です。基本ルートは2つあり、ひとつは成人儀のルート。王家の子供たちはこのルートを一人で通り地下5階まで降りる事を目的としております。もうひとつは王位の儀のルート。はるか昔からスルーニルはこのルートを攻略した者のみが国王になると言う慣習がございます。地下10階までのルートを仲間と攻略するのがこの儀式です。聖の英雄ウリエル様、ローゼル様もこのルートを攻略しました。」
「ま、まさか。」僕は声が漏れた。
「今、ルイーゼ様が挑んでおられるのは、この王位儀ルートです。陛下はルイーゼ様と約束され、このルートを攻略してくればスルーニルはルイーゼ王女を前面的にバックアップすると。これは他言無用です。我が国が個人的な理由でルイーゼ様に肩入れしたとなると大問題となりますゆえ。」
「それならなぜ、陛下は私達をすぐにワルトの洞窟へ行かせてくれなかった?」
「オーウィズ様の心の内を知る必要がありました。今までのご無礼をお許しください。あと、ワルトの洞窟は最初に入った仲間と攻略するのが慣習です。間違っても攻略前に手を出さない様に心がけてください。」
「承知した。」オーウィズが大声で答えた。
「それと、ナギト様に勝利の褒賞としまして…………。」
そこまで言うとドトラックは少し声を詰まらせた。
「本来なら、セアリー様ご自身が洞窟を案内すると仰られて……。色々とありまして、セアリー様の師匠であるマトゥキ様とその補佐官であるマリアン様が同行する事となりました。ご了承ください。」
色々?何があったのか知らないけど、どう考えても同行と言うよりは監視なんだろう。
「あと、もうひとつ。皆様はこの石をご存じですか?共鳴石と言われる石です。ひとつの石を特殊な方法で2つにする。」
そこまで言うとドトラックは片方の石を彼がいるところから下に落とした。石は床にぶつかり、粉々に割れた。
「あ!」
ストナが反応した。
ストナ視線を追うと、もう片方の共鳴石が赤く光出した。
「この石は片方が割れると片方が赤く光る為、ダンジョンなどでの救難信号に使われています。今回皆様にこれを持って入ってもらいます。しかし、今回は救難信号のためではなく、えーこれはセアリー様の提案ですが、皆様が出発した後でクック分団隊とルートバーン分団隊が皆様を迎えに徒歩で出発します。その時、仮にルイーゼ様が洞窟を攻略して一足早く帰路についていた場合などクック隊と出会った場合はその石を割ります。この石が赤くなると言う事はルイーゼ様が洞窟を出たと言う合図です。」
オーウィズが一歩進み出る。
「ありがとうございます。どうしてそこまでしてくださるのですか?」
「セアリー様から無理な依頼を引き受けてくれた報酬との事です。」
そこまで言うとドトラックは僕達に深々と頭を下げた。
僕達は一瞬でどこか別の場所へ移動していた。転移陣と言う陣の中に入り、ドトラックが何かの装置に手をかざした瞬間に景色が変わっていた。
「すごい!でも、ここ本当にワルトの洞窟?王城の隣の部屋だったリして。」
ストナが冗談ぽく僕に言う。確かに一瞬で移動したとは言え、ここがワルトの洞窟と言う保証はない。
「そこから外に出られる。外を見てみると良い。」
マトゥキは出入りと思われる方を指差した。て、言うか、初めてマトゥキの声(通常の会話声)を聞いた気がする。結構渋めの低音。声の口調と風格から思った以上に優しいそうにも感じる。あの連行の一件がなければの話。あの時の動き、全く勝てる気がしなかった。むしろ、自分は死んだとさえ思えた。セアリー王女も強さは飛び抜けていたけど、この人はそれ以上なのだろう。
もう1人マトゥキの後ろにいるのがマリアン。マトゥキ専属の補佐官。マトゥキは50代でマリアンは40代らしいから、2人で並んでいると夫婦にも見える。ストナが王宮を歩いている時、マリアンにマトゥキの妻かと直球質問しているのを聞いたけど、結婚はしてないけど、俗に言う内縁の妻っぽい話をしていた。そんな話をするなよと思いつつも、耳を傾けてしまった。
いっその事、結婚すればいいのにと思ってしまう。何でしないんだろう。
そんな事を考えつつ、僕はふとストナの方を見た。僕とストナってどんな関係になるんだ?仲間?友達?
他人から見ると?恋人?いや兄弟かな?なんと言うか、ストナは僕の事を弟分のとして見ている様に感じる。僕達もこのまま行くと、マトゥキ達の様に、内縁のいや、そもそも永遠のヒモかもしれない。僕は首を横に振った。何を考えているんだ。
その時、ストナの声が洞窟に響いた。
「ナギトすごい、本当に瞬間移動してる。はるか遠くにロトアル城が見えるよ。」
その声、今行くと言い放って、ストナの方へ走って行った。
洞窟を出ると眩しい光が差し込む。そこにはひときわ高い山の中腹からの景色が広がっていた。
東の方に何個もの少し低めの山を越えていくと海が見え、その海の手前にロトアル城と思われる白い城を小さく見る事が出来た。
「ここは人口的な洞窟だ。あえてロトアルからの距離とロトアルが望める高台に洞窟を作った。そして、この試練に臨むものは覚悟を決めて城を背に洞窟へ入る。また王城から見守る者もその背中を後押しする事が出来る様願いを込める。その為この地に作られたと言われている。」
マトゥキとマリアンが僕の後からゆっくり歩いてきた。マトゥキが外に出ると右の方へ視線を送った。
その時、マトゥキの雰囲気が一瞬で変わった。いつの間にかレイピアと言われる剣を取り出していた。
「マリアン。」
と言うと、彼女は「は!」と答えて洞窟の奥へと消えていく。
マトゥキは僕達の前に立ち、洞窟の中へ入る様に指示をした。
マリアンが戻って来た。
「いません。誰も。」
「そうか。」
そう言うとマトゥキは僕たちを見てからマリアンに声を掛けた。
「この人達を頼む。私が下へ行って確かめてくる。」
そう言うとすぐにオーウィズが口をはさんだ。
「待って下さい。何があったのですか?私達は姉の護衛に来たのです。観光や見学に来てはいません。一大事が起こっているのなら、私達は付いて行きます。何があったのですか?」
マトゥキは少し考えている様子だった。マリアンと目を見合わせてから僕達の方へ見て言い出した。
「何が起こっているのかは分からない。端的に言えば、危険が迫っていると言う事だ。ここか?ルイーゼ王女か?別の何かか。本来、ルイーゼ王女には2名の護衛が付けある。先程、ドトラックが言ったいた様に共鳴石をこの入り口で見守る係の2名、洞窟へは決して入らない。そして、この洞窟は常に2名の門番を置いている。ここには4名がいなければならない。」
そう言うとマトゥキは洞窟内を見渡した。
「仮にルイーゼ王女から救援信号が来た場合、1名の護衛が中へ入り、1名の門衛はここから右手にある救援の炊場から狼煙を上げて王都へと報せるルールになっている。何があろうとここに誰もいなくなる事自体が異常なんだ。」
僕はようやく理解をした。バキアにサーチを使ってもらいマナ寄せ開眼をする。この洞窟内にはマナを感じない。
「誰もいないです。」
「何がマナの形跡はあるか?」
「マナの形跡?」
「良く分からんが、マナの使った様な跡だ。」
「いえ、無いと言うか分かりません。」
マナの跡なんて見たこと無い。突然聞かれても分からない。何なんだマナの跡って?
「無いならいい、今回ルイーゼ王女につけた護衛もこの門衛も聖都騎士団の中クラスの連中だ。その連中が何もせずに負けるとなると……、かなりの手練れか……。」
「幻覚や誘惑の類のスキルの持ち主ですか。」
オーウィズが答えた。
僕の脳裏にリリラが浮かぶ。顔すら見たことも無いがその後ろ姿が脳裏をよぎる。
「まさか蠱惑?リリラ?」
オーウィズが僕の方を見る。
「彼女が出てくるとは思えない。でも、もし本人ならチャンスだ。ここで勝負をつけられる。」
「どうして?それなら、ルイーゼ王女が……。」
「ナギト、落ち着け。」
そう言うと、オーウィズは僕の肩を叩いた。
……こっち?落ち着いているの?あなたは?お姉さんが危険な状態かもしれないのに。それとも虚勢を張っているだけ?
「マトゥキ殿、ここから洞窟内に連絡を取る手段はあるのか?」
「残念だがない。あるとすればこの共鳴石だけだ。彼女との連絡をつける護衛がいない以上どうする事をも出来ない。追うしかない。」
「追います。案内してもらえますか。」
「私もこの洞窟を熟知している訳では無い。ここから地下10階までの最短ルートを知っているだけだ。」
「地下10階まで案内してください。」
マトゥキはマリアンを見た。マリアンが軽く頷く。
僕達は転移陣の上にのった。
それを見て奥の転移装置を動かしているマリアンがこちらに向って叫んで言った。
「それでは移動させていただきます。行先は地下2階のBルートとなります。お気をつけて。」
マリアンが言い終わるやいなや、僕は違う部屋に移っていた。




