第八話 復活と継承①
《七本槍メンバー》
008 ナギト ♂(17) 武器:長剣
魔法剣士(マナの剣士)資質 王下Eランク
マナ寄せ、マナ返し、マナ回転返し
開眼(マナ寄せ開眼)
009 ライガ♂ (47) 武器:ライガの槍
雷帝資質 王下Bランク
多段雷撃 亜空間雷破 鳳雷閃 他
011 ストナ♀(18)武器:大剣
聖騎士資質 王下Bランク
聖回復 聖流剣 遠投 他
012 カール♂(37) 武器:縄
漁師資質 Aランク
投縄、一本釣り
013 マーロン♂(34)武器:長剣
聖騎士資質 王下Sランク
聖撃昇、聖閃光、万位十字格子閃
019 エージナ♂(80)武器:炎のロッド(仮)
鍛冶細工資質
熱風、火炎球、分解、適合(サーチ系)
奥義火炎鳥
020 テロット♂(80)武器:大地のハンマー
鉱山守資質
大地の鉄槌、稜角の翼、鉄板
4英雄が魔王を倒して100年。テイルエンドに平和が訪れ、聖の英雄ウリエルの手によって聖京都が建国された。
人々が平和と呼ぶ期間でテイルエンドは3度の魔災害と言われるモンスターによる災害を経験した。ひとつ目は「クラーケンとの戦い」。もうひとつが「死狂の館の戦い」。最後が「アタゴ山の戦い」。
この全てに3魔女が関わっていた。魔王との戦いは100年前で終わっていなかった。常に続いていたのだ。
このまま3魔女の好きにさせてはならない。ここでこの戦いに終止符をうつ。うたなければならない。
それはエイディからこの剣を受け継いだ時に僕が受けた使命。いや、この眼を受け継いで生まれた時からの定めかもしれない。
エイディ達が果たせなかった大義を僕達が引き継いだ。そして、僕達七本槍の道化衆でこの戦いを終わらせるんだ。
今、最強のメンバー、味方がいてくれている。その味方を信じて進むしかない。
謁見の間を目指して長い通路を僕達は進んでいた。謁見の間にあったあの装置はキンデルダルに魔王の魂を入れ込む装置。それによって魔王は復活するシナリオだろう。
それは絶対に阻止しなければならない。
僕は右手に視線を落とし、その手に持っている「悟りの書」を握りしめた。
「大丈夫よ。信じましょう。」
ストナの声が裏から聞こえた。
何を?と口に出そうとして、息を飲み込んだ。そんな事を言っても何もならない事は分かっていた。僕は先程全員で見直した悟りの書の中身を思い返した。
悟りの書には魔王を復活させる方法である2つの儀式が書かれている。
そして2回目の儀式だけがなぜかなぶり書きで記されていた。
この儀式に必要な物は4つ。
3聖女の血。闇と邪の交わったマナ。聖と光の交わったマナ。そして、伝説の3輝石。
3聖女はすでにリリラの手に落ちている。闇と邪のマナはすでにこの城に満ちている。聖と光のマナは先程マトゥキが使った聖剣アヴァロンのマナを吸い込んでいればすでに手に入っているだろう。
4つ目の3輝石が何を意味しているのかこの書だけでは分からない。しかし、聖京都がリリラの手に落ちた以上この国所有の鉱石もその手に落ちている。硬芯鋼や柔芯鋼などの希少鉱石でなければ手に入っているだろう。
先ほど見た時、謁見の間の天井にはこの4つを入れるグラスの様な容器が置かれていた。
正確には北東と南西に1個づつと、北西と南東に3個づつ。
これらから管が出ていて、中央の王座へと繋がっていた。そこにエネルギーがいくと魔王が復活する。逆を言えば管を破壊してエネルギーの供給を断つ。これしかない。謁見の間には何百との管が床に散らばっていた。たぶん、ダミーだろう。本物だけの管を斬る。
ただ気になるのが「反転」の文字。
この意味が分からないがその装置全体をなぶり消すかの様に大きく反転の文字が書かれている。
しかし、今からこの場であれこれ考えても仕方ない。管を斬ってみるしかない。僕のマナを見通す眼で本物だけを斬るんだ。
その時、地面が揺れた。そして何か機械の動くような音が響き始めた。
「始まったな。」
急がないと、そう思っていると目の前に何かが現れたのだった。マナからしてバンパイア。ただ、リリラではない。長身女性のバンパイアで鎌を肩に乗せてこちらを見ていた。まるで死神の様だった。
「敵兵か、思ったより、少ないな。」
「気をつけてください。バンパイアですよ。」
ライガを先頭に足を一旦止めた。
その女性バンパイアはライガに向けて深々とお辞儀をした。
「ライガ隊長、お元気でしたか?私の事覚えておられますか?」
「クロユリか?」
その女性は片方のひざを床につけ、片方のひざを立てて、鎌を下に置いた。
「はい。クロユリでございます。敢えてとても光栄です。」
僕の隣でマーロンが「生きていたのか?」と呟いた。その顔は何か死人に会った様な面持ちだった。
「マーロンさん、どう言う意味ですか?」
「クロユリはキンデルダル近衛隊の長として、キンデルダルとリリラの警護に遣わされた。しかし何かの任務で全滅したと連絡を受けていたが、実験体にされていたようだな。」
「ライガさんとはどう言う関係ですか?」
「ライガが聖騎隊の時の部下だ。フェアラーと同じだ。」
突如として現れたその女性バンパイアは不思議なマナをまとっていた。今まで会ったどのバンパイアとも違う。一言で言うと優しさのあるマナだった。
ライガが一歩近寄こうとした時に、クロユリが大きな声を上げた。
「それ以上は近づかないでください。私もバンパイアの身、それ以上近寄くなら、戦う所存であります。」
ライガはもう一歩近寄った。
「俺もお前を斬りたくない。去れば見逃す。」
「出来ません。この身はミリアン様によってバンパイアにされ魔王へ忠誠を誓った制約があります。リリラ様の命令は絶対なのてす。あなた様方をここで迎え撃て、それがリリラ様の命令です。私はその命令を破る事は出来ません。」
「そうか、それなら、リリラは今何をしている。ルイーゼ王女はどこにいる?」
クロユリは更に頭を垂れた。
「ライガ隊長、申し訳ありません。今リリラ様のしている事を話す事は禁じられております。ですが、ルイーゼ様の居場所は禁じられておりませんので教えします。この奥の謁見の間におられます。」
「生きているのか?」
クロユリは「分かりません」と首を横に振った。そして、暫く何か地面を見つめていたが、突如として立ち上がった。
「ライガ隊長。エルフ薬ってご存じですか?」
「エルフ薬?知らん。悪いなクロユリ、お前と無駄話をしている暇はないんだ。通してもらうぞ!」
ライガのマナが飛躍的に上がった。一気に勝負をつける気だ。僕達も応戦する構えをした。
その時、クロユリが一言呟いた。
「レフト・カサブレラ!」
……。
全員の動きが止まってしまった。
「私の知る限りエルフ薬を最初に使ったのはレフト様です。あのお方はバンパイアでも手に出来ない力を手に入れられました。リリラ様の相談役にしてリトダ教授の師。」
あの不気味な捉えどころのないマナはエルフ化によるものだったのか。100年以上前の人物がどうしてあんなに若いのか謎が解けた様な気がした。
「この大陸の人間は元々人間として造られた種族とエルフが人化の法で人となった種族がいると言われているそうです。その人化の法の逆、エルフとなる為の妙薬がエルフ薬です。しかし、通常の人間には耐えきれず、人格を失うか、身体ごと爆発します。」
そこまで言うとクロユリは手に持っていた玉を砕いて手のひらから床へと落とした。さらさらした細かな粒子の粉は砂時計の砂が落ちるかの様にまっすぐ下へ落ちていった。
その粉、見覚えがある。
「カラコロ厶増殖薬!」
僕が声を上げると、クロユリはクスクスと笑い出した。
「面白い人。さすがライガ隊長が見込んだ男ね。カラコロ厶増殖薬って、面白い命名ね。」
そこまで話してから、クロユリは再びライガの方を見た。
「ライガ隊長。これはエルフ薬の一部をゾンビパウダーとカラコロ厶隊長の血に混ぜたものです。どう思いますか?ひどい遊びです。私の心はあの者たちを許せません。」
「クロユリ、お前はどうして人間の心があるんだ?」
「どうしてだと思いますか?この子が助けてくれたのかな。」
そう言うとクロユリはお腹の下に手を当て、軽く撫でるようにお腹周りに手を置いた。
「私がキンデルダル様に仕えた時、既に夫との間に子をもうけておりました。ある日、私はリリラ様がバンパイアであることを知り、急ぎ知らせようとして捕まり、そのままミリアン様にバンパイアとされたのです。」
そこまで言うとクロユリは再びお腹周りを撫でた。
「通常、バンパイア化されると闇のマナによって人間であった時の意思が上書きされるかの様に闇の考えに支配されます。何人もの人達を見てきましたが、善人であれ悪人であれ、人間の時の考えを持っている人はいませんでした。でも、私は人間の時の考えがあります。思いも同じです。わが子が守ってくれたのでしょう。」
そこまで話すと唐突にライガに向けて鎌を構え出した。
「クロユリ?」
「ライガ隊長。お慕い申しております。夫と共にライガ隊長の強さに惹かれておりました。バンパイアになった身、もはや普通には生けません。最後にあなたと戦いとうございます。」
そう言うと、今度は手を鎌を持っていない方の手を天に向けた。
空間が歪んだ。
「亜空間魔法!」
亜空間から棺桶が現れた。見覚えのある形状、ミリアンがバンパイアを入れていた棺桶にそっくりだった。
「普通の亜空間へは生き物は入れる事が出来ません。しかし、ミリアン様は生き物を仮死化する事で亜空間へ入れる方法を開発しました。これがその仮死化装置です。」
棺桶は床に落ちるように着地した。
「ライガ隊長、紹介します。我が夫シャントリエトです。彼は唯一エルフ薬を飲んで原型を留めていた人。でも、もう私の知る夫ではないですが、最期の親子共演堪能してください。」
そこまで言うと一瞬クロユリの動きが止まり、彼女の目つきが変わった。全身から闇のマナが溢れ出してきた。今で無理やり抑え込んで来た力を解放した、そんな雰囲気でライガに対峙した。
シャントリエトと言っていた棺桶も開き、中から人の手が取手を掴みその闇に包まれた上体を起こした。
棺桶から闇のマナがもくもくと黒煙を吹き出し、その中から黒い瞳がこちらを見た。
静かな沈黙が辺りを包み込んだその時、シャントリエトの左後頭部が爆発した。それと同時に雄叫びを上げ、一気にこちらに向かって来た。
最前線のライガを無視して、中央にいる僕、ストナ、マーロン、カールを狙って来た。時より身体のどこかが暴発するかのように弾けてマナを吹き散らした。
あの時、マリーゴールドが爆発した時と同じだ。身体が内部のマナをつつみ込めないでいる。
「マーロンさん、カールさん、爆発します。気をつけて。」
カールとマーロンが僕の隣に来た。
「ナギト!お前はライガを援護しろ、こっちは俺達で対応する。」
そう言うと、マーロンとカールが目の前のシャントリエトへ向かって行った。
僕は最前線でクロユリと対峙しているライガ方へ足を向ける。ストナが僕より先にライガの方へと向かって行った。エージナ、テロットは僕より遥か後方に立っていた。
「エージナさん、マナ寄せ!」
僕がエージナに向かって叫ぶと、我に返った様子で僕達の方へと急いで向かって来た。テロットはマーロン達への援護へ行った様だ。エージナが僕の近くまで来た。
「悪い、悪い、見惚れてしまった。あれが噂のエルフ薬か!」
「エージナさんは知っているんですか?」
「ドワーフ族伝わる伝承じゃ。いつか話してやるわい。生きて帰ってこれたらな。」
「それじゃあ、楽しみしてます。」
僕達はライガとストナのところに行き、武器に光と聖のマナ寄せをした。
クロユリはこちらを見ているが動かない。先程ペラペラを喋っていた雰囲気とは何かが違う。何かを仰ぐかの様に時より天井を見上げている。
その時、再び地面が揺れた。
「ふ、ふ、ふ、ふ、第二段階に入ったかしら。」
何か別人と対話している感覚がそこにはあった。
「はじめまして、私はクロユリ。ミリアン様の第56番目のしもべ。ここを通りたければ、私を倒してから行きなさい。この死神の鎌の前に生きて通り抜ければの話だけどね。」
ストナが僕の方へと近寄って来た。
「別人みたい。」
「そうだね。」
先程話していたクロユリとは全くの別人が目の前に立っている様だった。
「気をつけろ!あの鎌攻撃は即死攻撃を繰り出すぞ!」
即死?噂に聞く、一撃いや攻撃を受けた時点で相手を死亡させる攻撃?そんな物があるのか?
「あの鎌が特殊武器なんですか?」
「違う。あれはただの鎌だ。問題は彼女のスキルだ。『死の誘い』それがあいつのスキルだ。」
「そんなスキル聞いた事ないですよ。」
「俺もだ。あいつ以外で使えるやつを知らん。来るぞ!」
クロユリは僕とライガに向かって距離を詰めてきた。そして、一気に鎌を振り下ろした。
早い!長い鎌の割に攻撃スピードが早く厄介である。そのまま横斬りの2撃目も来るが、躱せないレベルではない。
2撃を終えて、クロユリが後ろへと下がった。
その時、僕は手に持っていた剣を床に落としてしまった。拾おうと下を向くと、下半身が血で真っ赤に染まっていた。
誰の血だ?
僕だ。僕のお腹から腕に掛けて綺麗に斬られている。血と、言うか既に臓器の一部が飛び出していた。
いつ、やられた?
全く分からない。先程の戦いを振り返っても斬られた感触は無かった。これが?即死攻撃?
いつの間にか目の前が黒く霞んできた……。
『聖回復!』
ストナの声で我に返った。ストナが僕に剣を渡してくれた。
「大丈夫?良く死ぬわね。何があったの?」
「分からない、攻撃を避けたつもりだったのに、斬られていた。クロユリ?」
ストナが前の方を見た。そこにはライガと戦う姿があった。ライガが推されている?
いや、クロユリとの距離をとっては戦っていた。多少強引でも行くライガの攻撃の手が弱く感じる。元部下に手を緩めているのか?
「ライガさん!援護します。」
「来るな!お前達は危険だ!」
ライガが手で僕達を制してきた。しかし、このままではライガも危うい。あのクロユリの攻撃は危険過ぎる。
僕はマナ寄せ開眼でクロユリを見た!
一瞬、目を疑った。クロユリが2人いる様に感じる。分身ではない。クロユリの行動に一歩遅れて影の様な存在が同じ軌道で攻撃をしてくる。いや、同じ軌道に見せて、影の方が半歩長い。
僕はあの影に斬られたんだ。輪唱攻撃?
思ったよりも厄介だ。通常普通攻撃の隙は攻撃を避けた後にある。でも、輪唱攻撃はその隙を無くす上に気付かない人へは完全なカウンター攻撃と化す。
ライガが普段より距離をとっているのはこの為か。
ただ、このままでは相手の思うツボだ。クロユリの使命は僕達をここに足止めをする事。相手の隙をうかがっていたら、時間だけが過ぎていく。なんとかしないと……。
どうやって。
あの影を引き剥がせれば……。引き剥がす?
影を攻撃すればどうなるんだ?影も攻撃してくるなら、何かしらのマナを宿っているはずだ。それなら、そのマナ自体を叩けばいいのでは?
やって見る価値はある。
僕はもう一度、ライガの方を見あげた。
クロユリがライガに斬り掛かって来る。ライガが避けると今度は影の鎌がライガを斬り裂こうと数秒遅れで斬り込んで来る。
それを避けて突きを繰り出すも鎌攻撃で相殺される。相殺された攻撃の中から影の鎌が振りかざされる。ライガは数歩引いて距離を取った。
その繰り返しである。
…………。
相殺後の攻撃は影の独自性を感じる。通常の攻撃は本体の攻撃のあとから輪唱攻撃であるのに、相殺時は本体はライガの槍を防ぐ為に鎌で突きを避けている。本来の輪唱攻撃なら同じ様に避ける姿勢になるはずなのに、ここぞと言う時には影は単独攻撃を仕掛けて来る。
影と言うより、意思のある攻撃個体だ。
必ずマナの核があるはずだ。そうでないなら、本人の意思で攻撃をしているか。
再びマナ開眼で影に注目してマナを探った。
……。
無い。影自体にマナの核は無い。やはり本人の意思なのか?
クロユリがライガに向かって再び攻撃をする。輪唱攻撃!
その時、ストナが遠投で予備の剣を、エージナご火炎球を同時に影に向かって放った。
突如として影が鎌の柄で剣と火炎球を叩きつけた。
「あの影、どうやら人格持ちの様じゃな。」
「そうね。彼女は多重人格者よ。その多重人格がそれぞれで攻撃を仕掛ける。それが彼女の正体ね。」
さっきと雰囲気が違ったのは人格が入れ替わったから?
「ストナ、多重人格なら何か手があるの?」
「無い。いつもの様に倒すしかないわよ。」
そう言ってストナは亜空間から短剣を取り出した。
「厄介な敵には遠距離攻撃よ。行くわよ。」
行くと言っても僕は皆さんみたいに遠距離攻撃のスキルを持ってないんだけど……。とりあえず、ストナ達の後を追った。
ライガとの戦いの隙にストナとエージナが遠距離攻撃で隙を作り出す。それによってライガ攻勢が有利になってきた。
これなら、いける!
そう思い始めた時に、クロユリが大声で叫びだした。
「くそーーーー!邪魔だ!くそ虫ども!」
そう叫んで数歩引いてから、鎌を天井へと向けた。
一瞬で周りの空気が張り詰めた様に感じた。何かが来る。スキルを使おうとしている。
僕は深く身構えて、腰を落とす。
「ストナ、エージナ、気をつけて!何か狙って来る。標的はこっちだ!」
「望むところよ。返り討ちにしてやるわ。」
『死神の鎌、乱発狂!』
クロユリがそう言うと無数の鎌が僕達目掛けて跳んで来た。
やはり、乱舞系スキルだ。3本の鎌が僕に向かって回転しながら飛んで来た。ストナが左側へと距離を取った。乱戦での激突を避けたみたいだ。狙いは僕、ストナライガの3人。後ろにいるエージナは乱舞の対象になっていない。ひとりに向かって数本の鎌が跳んで来ていた。
僕は1つ目の鎌を避け様とした時に、身体に恐怖を覚えた。さっき斬られた感覚がよみがえってきた。
あの時の感覚だった。
まさか!
この鎌にも僕は避ける体勢で剣を1つ目の鎌で払った。この感覚が示した通り、鎌の後ろから影の鎌が現れた。
ギリギリを避けてはだめだ。そう思って、思いっきり後ろへと引いて避ける。すると鎌は回転しながら向きを変えて再び僕の方へと向かってくる。
さすがは乱舞系攻撃、マナを捉えるんだ。僕はマナに目を向ける。実体の鎌と影の鎌が向きを変える瞬間に重なり合っている。ここだ!
僕はこちらに向きを変えて迫って来る鎌を避けた、鎌はこちらに向き変えた。その瞬間を剣で斬りつけた。実体、影も両方の鎌が消えて行った。残り2本。
その時だった。女性の悲鳴の様な声が通路に響いた。間違いなくストナの声だ!僕はストナの方を見た。鎌がストナのわき腹に刺さっている様に見える。
早く助けないと。そう思って目の前の鎌を一気に蹴散らして、ストナの方へ走った。
「ストナ!」
ストナはその場に倒れたまま動かない。大きな傷が数箇所お腹の部分に開いている様にも見える。僕は恐る恐るストナを抱き抱えた。
「ストナ、ストナ。」
温かみはあるけど、返事がない。
「誰か回復を。」
僕は周りを見まわした時に、背筋が凍る様な恐怖を覚えた。
……。
いない。
回復スキルを持っているのはストナしかいない。
「ナギト。ストナ嬢は大丈夫か?」
エージナが近寄ってきて、僕にポーションを3個手渡してくれた。
「すまん、これしか、持ち合わせがない。」
大量のポーションも全てストナの亜空間の中である。ストナの意識が戻らないと取り出せない。ストナを抱えた腕に何か液体が注がれていくのが実感できる。完全に貫通している。
僕は受け取ったボーションを全てストナに振りかけた。
「ストナ、ストナ。」
少しだけ、顔色が良くなった。
「…………う。」
ストナの意識が戻っていた。
「ストナ。意識はあるか?」
「……ナギト……。今までありがとう……。ごめんね。これい…………。」
そこまで言うと、再びストナは意識を失った。
「ストナ、ストナ、聖回復を使って!頼む。ストナ回復魔法だ!」
ストナの意識は戻ってこない。
「ストナ、ストナ!頼む、回復魔法を使ってくれーーーー!」
僕の声だけが虚しく響いている様だった。ストナの体温が弱くなっていくのをただ見守るしかなかった。




