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七本槍の道化衆3 (テイルエンドとミルロワールの王女)  作者: 熊野文助


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第七話 テイルエンドとミルロワールの王女①

008 ナギト ♂(17) 武器:長剣

  魔法剣士(マナの剣士)資質  王下Eランク

  マナ寄せ、マナ返し、マナ回転返し

   開眼(マナ寄せ開眼)

011  ストナ♀(18)武器:大剣

  聖騎士資質 王下Bランク

  聖回復 聖流剣 遠投 他

019 エージナ♂(80)武器:炎のロッド(仮)

  鍛冶細工資質

  熱風、火炎球、分解、適合(サーチ系)

  奥義火炎鳥

020 テロット♂(80)武器:大地のハンマー

  鉱山守資質

  大地の鉄槌、稜角の翼、鉄板

 オーウィズ王子殿下が皆の前に立った。

 小さな丘の上、彼の後ろには聖京都城が見える。丘のふもとには僕達七本槍の道化衆や元聖京都聖騎隊、聖京都国王軍のメンバー並びにスルーニル聖都騎士団が集結した。俗に言う反乱軍の総集結である。

 天候は晴れ、西風が穏やかに吹き、心地よい空気の流れが首筋へと吹き寄せる。心地良い朝である。国王軍の軍旗も風になびいている。この場にいるだけで自然と身が引き締まる。

 ここは聖京都からセタ村へと向かう街道の入口、聖京都は目と鼻の先にある。その街道で1500名を超える反乱軍が一堂に顔を揃えた。そして、小高い丘の上にいる指揮官(オーウィズ)が話し出すのを全員が息を潜めて待っていた。

 オーウィズは聖京都の方へ顔を向け、暫く深刻な表情で見つめていた。暫し間を置いてから今度は空を眺め、最後に僕達の方へと向きなおした。そして、息を吸い込んだと思うと大声で話し出した。

「諸君、この戦いは聖京都への侵略戦ではない。聖京都を守る為の防衛戦だと思え!敵は聖京都城主、3魔女リリラのみ!ただし、手向かう敵は切り捨てて構わない。行くぞ!」

 オー!

 ときの声が上がった。

 戦いが始まったのだ。

 


 僕の肩を思っいきり叩いて一歩前に出る人影があった。

「ナギト!準備は良いか?」

「はい!」

 心地良い声が脳裏で響く。ライガの声だった。この人の声を聞くとなぜだか安心する。心強い味方が帰って来た、そんな感覚だった。

 ライガは今回、オーウィズの指示を受けて聖京都の状況の視察、並びマーロン達と共にセタ村防衛線の指揮を取っていた。

 ライガは僕が七本槍の道化衆の隊長となって以来、ほとんど一緒にいたので今回の旅では不在感が常にあった。けど、ようやく正規メンバーになった感じがする。

 ストナもなんだかんだ言って嬉しそうである。

 

 今回の戦い。七本槍の道化衆には特別な任務が任されている。

 それは……、聖京都城内に潜入、王女いや3魔女の最後のひとり、バンパイアのリリラを討伐する事。しかも僕達七本槍の道化衆だけそれをやると言うのだ。

 

 これには3つの理由がある。

 ひとつは僕が持つマナの剣、現在この剣以外にリリラを倒す手段はない。3魔女や魔王の核(心臓)は特殊なマナで覆われていて、通常攻撃だけでは致命的なダメージを与えられない。僕の持つマナの剣と崩壊の一撃だけが唯一の手段である。

 もうひとつはリリラの能力である蠱惑対策。蠱惑は誘惑系のスキルで相手を意のままに操る事が出来るとされている。キンデルダル王子も既にリリラの操り人形と化した可能性が高い。蠱惑対策としてこの腕にはめている炎帝御輪を用いる。御輪は火のマナ獣のマナを宿す事で火炎系攻撃を100%防ぎ、その他のマナ攻撃を半減させる事が出来ると言われている。(どこまでかははっきりと言って分からないけど。)そして、その力を分ける事の出来る炎兵鳴輪。鳴輪は御輪の力をそのまま共有する事が出来る。鳴輪をはめていれば御輪と同等の効果が発生する。

 この御輪がリリラの蠱惑に有効であると考えられている。

 炎兵鳴輪は6個。僕の持つ炎帝御輪を合わせると7人分しかない。その為、聖京都城へ入るのは七本槍の道化衆メンバー7人だけである。

 最後の理由は単純である。国王軍や聖騎隊が王城内で人を斬るのは体裁が悪いと言うのだ。その為、聖騎隊ではなく、七本槍の道化衆がリリラ、いやキンデルダルを倒した事にしたいらしい。前にも同じ様な事があったけど……。もうどうでもいいよ。そのくだりは……。


 と言う訳で、七本槍の道化衆メンバーは僕とストナとライガ、そしてエージナとテロット、最後にマーロンとカールである。この7人でリリラのいる聖京都城内へと向かう。



 今回の作戦は聖京都城下町の外壁を国王軍で囲み、内側の聖京都城の内壁を聖騎隊とスルーニル聖都騎士団で包囲して、その間に僕達が王城へと入り込みリリラを撃つ作戦である。

 2重で取り囲む理由は外からの外敵からも聖京都を守る為にある。

 この作戦がうまくいくかどうかは、ここからの戦いが鍵となる。

 まずは、外壁の突破である。



 先方部隊であるマトゥキ達が外壁の正門へと近づいていく。弓士達が外壁の上に勢揃いしている。少し前に見慣れた光景、ゴブリン軍団の弓士達である。

 弓士達は矢を僕達に向けて射ってきた。さすがに距離もあり、届かない。こちらの攻撃も何かしらの結界の様なものか張られていて城壁手前で落下していた。牽制のしあう均衡状態が続いた。


 ストナが一歩前に出た。

「さて、第一関門ね。」

「お前は少し黙れ!見れば分かる、我々の任務を忘れるな!この外壁はマトゥキ殿がやると言われたのだ、それを黙って見ていろ!」

 マーロンとストナがいがみ合っている。カールが少し距離を置いて2人をなだめ始めた。

 僕の隣にエージナが来た。

「あの2人大丈夫か?大事な戦いの前に?いがみ合っている場合か?」

「大丈夫!あのふたりは、ああ見えて仲が良い。」

 ライガがフォローしてくれたが……本当か?と思ってしまう。単に馬が合わないだけでは……。


 突如として戦況が動いた。外壁の上にいたゴブリンが次々に城壁から下へと落ち始めた。

 よく見ると誰がゴブリンをなぎ倒していた。

「ターンさん?」

 ストナの声が漏れる。

 城壁の上で暴れているのは確かにターンだ。どうやって登ったのか?しかも彼女は大きなハンマーの様な杖を両手で持って城壁のゴブリンを次々に弾き飛ばしている。

 その姿はセアリーそのものだ。

 ゴブリンの攻撃を放たれる矢ごと吹き飛ばしていた。あまり言いたくないけど、どちらがモンスターかと思えるほど大暴れしていた。

 ターン劇場と言わんばかりの乱舞?を観ていると、突然城門が開いた。

 中から大量のゴブリンが吹き出す様に飛び出して来た。中には狼や熊やオーガもいる。そのモンスター軍団は全く統制が取れてない様で好き勝手に暴れてながら進行して来た。


 ただ、敵の量が多い。モンスターが津波の様に押し寄せてくる。あっと言う間に前線がモンスターの大群に飲まれた。

 完全に乱戦だ。その大きな波は僕達の方まで押し寄せてきた。

「来るぞ!構えろ!」

「あんたに言われなくて見れば分かるわよ。」

 ストナとマーロンが先陣をきって大量のゴブリンをなぎ倒して行く。それに僕達も続く。

 ゴブリンを数体斬っていると、何か嫌な予感がした。

「エージナ!」

「任せろ!」

 エージナが適合(サーチ)を使い、僕がマナ寄せ開眼を使った。

 ゴブリンのマナに混ざって人のマナが浮き上がる。

 前方右手にストナ、前方左手をマーロンとカール、左をライガとテロット、そして右に僕とエージナが対応している。

 それ以外にいる!

 このマナ!

「ストナ気をつけろ!目の前にブルドがいる!」

 僕が叫ぶと同時にエージナが火炎鳥、ライガが万段突撃、マーロンが万位十字格子閃を使った。周りのゴブリンがことごとく吹き飛ばした。

 僕は咄嗟にストナの前に立った。

 目の前に見た事のある男性3名とその後ろに見知らぬ女性2名が立っていた。

 元聖騎隊第2部隊のブルド、エニデール、フバートル。そしてたぶんホスタリ、オルホンだろう。聖騎隊6騎衆の5名。今日は騎乗せずに現れた。

 僕の方へマーロンとライガも近寄ってきて、ブルド達と対峙した。


 ブルドが一歩前に出る。

「ようこそ、リリラ女王の城へ。今日は何の御用ですか?入城料はひとりにつきその首をいただきます。」

 マーロンがブルドに向き合って行く。

「嬉しそうだな。女王様に可愛がってもらって、ひとつだけ教えろ、ルイーゼ王女はどこにいる?」

 ブルドがマーロンを斜め上から見下ろす様に見て、持っていた大剣を肩へと置いた。

「久しぶりに会ったのに冷たいな。一応お前の部下だったが、部下への気配りはないのか?」

「どうでもいい事で話をそらすな、ルイーゼ王女はどこにいる!」

「おー、怖い、怖い。大丈夫、生きているよ。儀式が始まるまでは大切に確保しているから。後ひとつで完成なんだ。魔王様の復活の儀式が始まる。」

「お前、本気で言っているのか?魔王を復活させて何がしたい!」

「分かっておられない。ここは元々魔王陛下の国、その国を陛下にお返しして何が悪い?そもそもお前達が…………。」

 そこまで話すとブルドは僕の方を見た。何か怒に満ちている目をしていた。

「お前が、お前達が……、ミリアン様を……。次は私だった……。」

 そこまで言うとブルドは口を閉ざした。

 そのすぐ後に「ガハハハ」とライガの大声が響く。

「悪い、悪い、まさか天下の聖騎隊2番隊長、しかもその大聖剣アヴァロンを受け継いだ人物がバンパイアになりたかったのかよ。笑えるわ!使えなくなるぞ、その聖剣。いや、もう既に使えないのか?」

 ブルドは聖剣を振りかざして、ライガに向けて剣先を向けた。

「ふざけた事を抜かすな!貴様などスキル使うまでもないわ!」

 ライガはブルドを無視するかの様に首を軽く回して、手首を鳴らした。

「図星か!剣にマナが宿ってないぜ!その上、スキルも使えないのか!哀れだな!」

「うるさい!やれー!」

 ブルドが吠えると他のメンバーが一斉に何かを飲み込んだ。メンバー身体から闇のマナが浮き出てきた。

 まさか!カラコロ厶増殖薬?


 次の瞬間、目の前の1人が槍を持って僕に向かって迫ってきた。大槍を持っているからエニデールだろう。もはや闇の装甲に覆われて誰かも見分けがつかない。かろうじて目が見えるが、完全に視線が合わない。ゾンビパウダーを受けてゾンビになったアイカの眼に似ていた。

 ゾンビなら光と聖のマナが弱点だが、ストナとライガは別々の敵を相手している為、マナ寄せする余裕はない。バンパイアでないなら普通に倒せるはずだ。

 今は目の前の敵に集中するんだ。


 エージナと二人でエニデールを相手する事になった。エニデールの槍は素早い。大槍なのにその大槍の重量を気にも留めない動きをしてくる。

 2段突撃!槍を2個持っているかのような突きが迫ってくる。

 僕は相手のマナを読み攻撃を躱す。

「エージナさん、大丈夫ですか?」

「わしは大丈夫じゃ。こやつ相当硬いぞ。火炎鳥でも効かんかもしれん。どうする?」

「どうしましょう……。」

 先ほど、僕が相手の攻撃を避けた隙をついて、エージナが火炎球のカウンター攻撃を繰り出したが、全く動じていなかった。闇の装甲にマナの魔法攻撃は効かないのか?

 

 これまでの戦いを思い出してみると、闇の装甲、カラコロム増殖薬を倒したのはマーロンの聖閃光。それと装甲が完成する前に心臓を突いた僕の剣。どうやら、闇装甲自体を貫いて身体にダメージを与えないといけないようだ。

 僕で言うなら、カウンターでの突き攻撃しかない。装甲を貫けるスキルはない。


 再び攻撃が来た。槍の先端にマナが3つ集まってきた。3段突撃だ!槍の3段攻撃。逆に言うと最初の2回を避ければ、最後の一撃の反動を利用してカウンター攻撃である回転マナ返しで心臓を突く事は可能だ。

 予想通りマナの2段攻撃を避ける。次が来る!こ)に回転マナ返しをする。…………。

 死?!

 僕は回転マナ返しを突然解除した、いや解除せざるをえなかった。あまりにも急な解除だった為、相手の攻撃波動をそのまま受けてしまい、数メートル飛ばされた。

「大丈夫か?何があった?スキル解除系攻撃か?」

 エージナが近よって来てくれた。

「大丈夫です。僕が解除しました。ちょっと嫌な予感がして……。」

 なんだ?一瞬あのまま行けば、槍に突き刺される様な感覚があった。何だったんだ?

 

 エニデールはこっちを見た。見たと言うより向いたに近いか。再び槍を構えた。今度は4段突きか。僕はもう一度対峙する。槍攻撃を避けながらさっきの感覚が何だったのかを検証する。よく見るとマナがモヤモヤしていた。攻撃マナの後ろに靄のかかったマナがある。

 ……何なんだ?

 冷静に分析する。

 3段攻撃の後、もう一度回転マナ返しをして相手の心臓を狙う!今度はもっとマナを見るんだ!


 4段突きの3段目までが来た。この後、4段目の攻撃、ここで回転マナ返ししてカウンター狙う。マナ動きに合わせてスキルを使う!身体が自然とマナの流れを避け、その反動を利用する様に動く。そして、僕のカウンター攻撃が相手に届くその時……。

 再び『死』のイメージが僕を襲った。

 ……。

 僕は今度相手の動きに合わせてスキルを解除して後ろ側に回った。

 ……。

 分かった気がした。

 エニデールのマナは2つのマナが不規則に混在しているんだ。エニデール自身のマナとカラコロ厶増殖薬のマナが身体の周りに混在している。普通、そんな状態でマナは使えない。以前、ミリアンの部下達バンパイアが似たような戦い方をしていた。しかし、彼らは2つのマナを巧みに利用していた。

 目の前のモンスターは2つのマナにのまれている。だから、彼のマナに流れがない。その流れを追う僕の回転マナ返しでは相手の心臓を突けない。


 ……。


 それなら、直接突けばいいんだ。


 僕はエージナと共闘を提案した。

「タイミングはお主に任せる。ここだ!と言う時に合図してくれ。」

「分かりました。」

 僕達は前方に僕、すぐ裏にエージナの前後シフトで構えた。

 

 エニデールがこっちに向けて構えた。今度は5段、5段突撃だ。芸がない。猪突猛進型と言うよりただの馬鹿だろう。既にマナに飲まれたものの性なのか?

 最初4段突きをエージナと共に躱す。そして5段目が来る!

「エージナさん!」

「火炎鳥!」

 エージナの火炎鳥が地面から炎の鳥が飛び出す。

 エニデールの動きが止まる。

 僕は火炎鳥の出る瞬間にエニデールの内側に入りこむ、そしてマナ流れに身体を合わせて、心臓に向けて剣を構える。

 下から出てきた火のマナの大きな激流が僕の剣を一気に押し上げて、エニデールの心臓を貫いた。

 ……。

 しかし、僕はエニデールと同時に火炎鳥のマナ勢いで飛ばされてしまった。


 僕は数メートル後ろに飛ばされて落ちた。エージナは少し手前に落ちたマナの剣を取って僕のところにまで駆け寄って来た。

「大丈夫か?何でもかんでも無茶をしよる。おぬし長生きは出来ないぞ。」

「エージナさんよりは長生きしますよ。」

 エージナが手を差し伸べてくれたので、僕はその手を取って立ち上がった。

 数メートル先に身体が壊れていくエニデールがいた。なんとか倒した。

 周りを見るとそれぞれがカラコロ厶増殖兵4体を打ち倒していた。

 そして奥にブルドひとり立ち尽くしていた。



 マーロンがブルドに近づいた。マーロンが前へと出るとブルドが下がる。そんな行為が暫く続いた。

「最後のチャンスだ。ルイーゼ王女はどこにいる。答えるなら生かしておいてやる。」

「……。」

「何度も言わないぞ!」

 そう言うと、マーロンは剣を少し手前に構え、ブルドを威嚇する。

「……。」

 ブルドは一歩下がって、目をつむったと思うと口に何かを大量の黒い物を詰め込んだ。

 まさか、コリもせずにカラコロ厶増殖薬か?

 

 その大量の黒い物は終いには口から溢れ出し、それで足りない様に全身のありとあらゆるところから漏れ出した。

「これって、マリーゴールドみたいに爆発しない?」

 ストナが僕の方へと寄ってきた。

「あの時と同じみたいだけど、雰囲気はリリラのマナではない。たぶんカラコロ厶増殖薬を大量に飲み込んだと思う。」

「どうなるの?」

 さあ?と僕は首を傾げた。眼の前にいたブルドは身体中から大量の闇のマナを垂れ流している。ブルドの右肩が破裂した。完全に大量のマナを取り込み過ぎている。身体の崩壊が始まった。崩れ落ちるモンスターと化したブルドを見守る様に僕は眺めていた。

 

 その時、マナの垂れ流しが止まった。

 嫌な空気が流れる。

 マーロンとライガも戦闘モードに入ったのが分かる。この奇妙な空気を読んだんだ。何かが起こっている。いや起ころうといている。

 身体の崩壊が止んだ。苦しそうに悶えていたブルドがこちらを見て笑った様に見えた。ブルドは息を思いっきり吸った。すると、空気と一緒に垂れ流されていた闇のマナが口の中へと吸収されていった。何度も息を吸っていると闇のマナで薄汚れた大気から闇のマナが消えた。

 

 目の前のモンスターが闇の戦士へと姿を変え始めた。全身が綺麗な黒い装甲を身に着けている様だった。エニデール達の様な装甲もどきではない。見るからに闇の鎧である。

 完全な闇の装甲をまとったカラコロ厶そのものだった。その闇の戦士は手に持っていた大剣をマーロンの方へ放り投げた。

「餞別だ。くれてやる。あの世への良い手土産にはなろう!マーロン!」

 声の質も変わっている。

 マナ寄せ開眼で闇の戦士を見ると、驚く事にマナの核が左右に存在していた。

 あの時のホブゴブリンと同じだ。あのホブゴブリンはこの実験体だったのか?心臓に大量のマナが流れ込み、許容量を超えた時にもうひとつの心臓を作り出す。その事が出来れば闇のマナの精鋭になれるといった感じだろうか。既にブルドとは全く別の生き物の様な感じがする。マナの流れも違う。

 これはヤバい。


 闇の戦士は口を広げて1本の闇の長剣を取り出した。そして素振りをする様に何度か振った。

「まずはお前だ!ライガ!」

 そう言うと剣を構えた。

 流し切りのマナが流れる。………………違う。

「ライガさん気をつけて!」

 流れ切りと同時に百段突撃を突きだしてきた。流し切り?に突き?

 ライガは咄嗟に百段突撃で攻撃を相殺したが相手の勢いに押されて数メートル吹き飛ばされた。

「エージナ、ストナ、気をつけて!」

「分かってるけど、何を気をつけるのよ!」

 マナの核が2つのあると片方がやられても、もう片方がある防御的な役割しか考えてなかったけど、スキルの同時使用。

 前に会った実験体のバンパイアの様にふたつのスキルを使って大量のマナを吐き出す様な様子もない。完全にマナを自分のものにしている。

 やつは僕達の方へと向きを変えた。来るぞ!

 流し切りが来る!

 その流しの剣がここで百段突撃に変わる!どんな原理だよ!

 僕達3人も攻撃防いだが、ライガ同様に数メートル吹き飛ばされた。



 その戦士は次にマーロン達の方へと向きを変える。今度はマーロン、カール、テロットに向けてスキルを使う。

 再び、流し切りからの百段突撃!

 マーロンとカールはなんとか耐えたが、もう一度攻撃が続く、同様攻撃に今度は耐えきれずに吹き飛ばされた。

 ……。

 ……。

 

 単一的な攻撃が続いている。

 単調な攻撃。

 これならカウンターが使える。


 闇の戦士、いやブルドは再びこっちを見た。

 攻撃が来る。流し切りからの百段突撃。流し切りの横斬りが始まった瞬間、攻撃が突き変わる。この瞬間に相手を狙うのは難しい。しかし、横斬りに変わる前なら、攻撃は可能。

 フェアラーに使った手と同じやり方だ。

 来る!

 ブルドがこっちに向かってスキル使った。マナの動きから、相手の動きを読むんだ。

 その円弧の動きの到達点に僕の剣を構えて置んだ。

 来た。

 僕は剣先が相手の心臓に来るように突きを出した。


 ……。

 しまった。

 剣が弾かれた。


 あの闇の鎧、恐ろしく硬い。僕は無防備!

 そのまま、相手の攻撃の餌食にな………………。


 僕の身体は一瞬で別のところに吹き飛ばされた。


 いや、ライガが僕を少し離れた場所へと運んでくれていた。

「惜しかったな。なかなか良かったぞ。少々詰めが甘かったけどな。」

「ライガさん、あの鎧硬いですよ。」

「そうだな、マーロンに相手をしていてもらうか。」

「何かたくらんでますか?」

 ライガは少し楽しそうに笑った。

「魔王城を思い出して楽しくなったな。」

 僕の脳裏にもその時の事がよぎった。

「あれをやるんですか?」

「せっかく、メンバーが揃っているからな。」



 マーロンに暫くブルドの相手をしてもらい、僕達は布陣を組んだ。ライガ、僕、カールの順番に並ぶ。

 ライガの槍に光と聖のマナ寄せ。僕の剣には光聖火水風土のマナ寄せをする。

 マナの剣にマナが回転を始めた。

 準備は整った。僕達はマーロンに合図を送ると、マーロンは頃合いを見計らってブルドから離れた。すると、今度はこっちへ向かって来た。

「来ます、毎度おなじみの流し切りです。」

 ブルド、いやその闇の戦士は左回りの円弧を描きながら僕達の方へやって来た。彼の剣が横斬りになる瞬間をライガは捉える。万段突撃を食らわせた。

 彼を鎧ごと貫く事は出来なかったが、万段突撃を食らわした部分の表皮を覆うマナが薄くなった。

「カールさんお願いします。」

「行くぞ!」

 心の中で行きたくないですけど……、と何度も呟いた。

 

 カールの投網スキルで僕をブルドに向けて弾いた。次の一瞬、意識が飛びそうになりながらも意識を保つ。このまま意識なく突っ込めば人間爆弾に変わらない。そんな事をしたい訳では無い。

 剣のマナに意識を集中する。

『マナを細く槍の様に集めろ!そのマナを渦を巻く様に細く細く針の穴を通す様に細くしろ!』

 投網のスキルでその細さが増す。

 いける!


 狙いは左側の核。核の核を狙う!


 細く細く貫くんだ!


 核の核を目掛けて、剣を槍の様に突き刺した。


 突き刺した瞬間に闇の戦士のマナの核が崩れ去り、身体がゆっくりと消えていった。

 崩壊の一撃が完成した瞬間だった。

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