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七本槍の道化衆3 (テイルエンドとミルロワールの王女)  作者: 熊野文助


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第七話 テイルエンドとミルロワールの王女②

 外壁の城門をくぐるとそこは異世界だった。


 外壁より上には大きなベールが張られて、上空にあった青空の片鱗すらなくなった。常に薄暗い雲の中にいる感じである。そのベールのかかった雲からは時より黒い雪が地表に降り注いでいる。道から家屋の屋根に至るまでその黒い物体が数センチ積もっており、風景全体が黒色の雪国といった感じだった。


 僕達はその黒い雪を踏みしめながら、中央広場へ向かって歩いていた。積もった黒い雪は体重を乗せ込むと重みで沈みかかる。ザクザクと雪の上を歩く音もする。目だけをつむれば雪国に来ている様な感覚になれる。

 黒い雪は足に付いてきて、次第に足への荷重も増してくる。時より雪だまりを振るい落とす様にその黒い雪をはらい落とした。


 

 もちろん黒色の雪なんて存在しない。

 これは何度も嗅いだあの匂いだ。いわゆるゾンビパウダーである。

 ゾンビパウダーの成分が何で出来ているかなんて知らない。ただ、簡単に言うなら付随効果付き毒薬と言うのが正しいのだろうか。この毒薬は吸った者の体力を徐々に奪い、生命力を失うとゾンビ化させる厄介な効果を持っている。僕が初めて吸ったのは死狂の館だったけど、こんな雪の様なものではなく、もっと粉々しいものだった。でも、この吸い込んだ時の感覚は今でも忘れられない。



 ストナが黒い雪を手に取った。すぐに溶けて、最後には粉が消える様に空中へと散布していく。

「不思議。」

「それはお前さんの腕輪のせいじゃ、マナ獣のマナで守られているから、手で成分が分解して消えるんじゃ。ほれ、見てみい!」

 目の前を行く、マトゥキ部隊の隊員は黒い雪が手に付いて取れないで苦戦していた。

「ライガさん、住民は大丈夫でしょうか?このままでは聖京都に残っている人はゾンビになりますよ。」

 ライガもその雪を手に取って強く握りしめた。すると同様に握りしめた手のひらから靄が出て消えていった。

「全住民の8割はセタ村に避難させた。残り2割はリリラ側へ忠誠を誓った貴族かここから離れたくないと言う昔からの住民だ。」

「いつからこんな黒い雪が降っているんですか?」

「分からん、2週間前にも何人か説得して救出したが、その時にはいつもの聖京都だった。それに……。」

「それに?」

 ライガは思いっきり黒い雪の塊を蹴った。

「ここ1から2日だろうな。1週間もこの量で降り続いていたら、もっと積もっているはずだ。」

 確かにこの間隔で降っているなら、もっと積もっていてもおかしくない。今までなかった事が直近で起こった?それなら、家の中に籠もっている住民ならまだ、生きている可能性は高い。かすかな望みにたくそう。

 

 僕達がこれから向かう場所は中央広場。聖京都の外壁内で真中心に位置する場所である。その西側には聖京都城がそびえ立っ。

 その中央広場で聖剣アヴァロンの力を使ってこのゾンビパウダーの層を破壊する作戦である。

 ストナが歩きながら言った。

「誰よ、こんな作戦立てたのは?本当に大丈夫なの?」

 ストナが少し大きな声で話し出し、敢えて僕達へ聞こえる様にこの作戦の愚痴をこぼしていた。

「おぬしの彼女が吠えておるぞ。」

「彼女ではないですけど、気持ちは分かりますよ。絶対に罠だと思ってます。」

「おぬしも反対派か。なんで作戦会議で反対せんかった。」

「反対をしている訳では無いですよ。この雪が止むならそれに越した事は無いですが……。でもあきらかにタイミングがおかしくないですか?」

「そりゃあ、おぬしの師匠に言ってくれ、わしらはそんな事言われても知らん。」

「師匠ではないですけど、セアリー様のタイミングではなく、聖剣アヴァロンを入手したタイミングですよ。そもそも使えないなら持ってきますか?聖京都城内に置いておけば、良くなかったですか?」

「そんな事わしに言うな、分からんもんは分からん。」

 僕は遥か前を行くマトゥキの背中を追った。彼らは今回の事、どう思っているのだろうか。


 反転!?


 その言葉が気に掛かる。


 僕達が城門をくぐり、この光景を見た時の事だった。

 ターンが全員を集めてマトゥキに手紙を渡した。その手紙はセアリー王女からのものだった。

 セアリーは魔王大戦の資料から集めた伝承と打開策を手紙で託していた。

 スルーニルの文献には魔王大戦時、天候に関する異変を記した物があったと言う。セアリー曰く五大天異。セアリーの手紙にはこの五大天異のうち、2つの内容とその解決策が記されていた。煙火の落雷、夜陰の黒雪。どちらも対応が同じで、聖騎士が聖剣アヴァロンの聖の波動を使うと言うのだ。魔王大戦ではローゼルがこれを使って回避したと書かれているらしい。


 たまたま城門に入ると、そこが夜陰の黒雪となっており、その前の戦いでたまたま手に入った聖剣アヴァロンで早急に夜陰の黒雪を解除する事が出来る?

 めでたし、めでたし?


 あり得ない。

 この解除への誘導自体が罠かもしれない。

 でも、解除しなければ、まだ城内に残っている住民がゾンビとなる。みんなそんな事は百も承知で中央広場へと向かっているのだ。

 ただ、ひとつ気になるのが『反転』の文字である。


 グリーテル・リトダが遺した『悟りの書』に魔王復活儀式の最後のページになぶり書きの様に書かれていた文字。それが『反転』。

 死から復活する意味での反転なのか?

 それとも何かを反転する?

 邪のマナの逆が聖のマナ。聖剣アヴァロンでの聖の波動がもし魔王復活の儀式に必要な要素なら、これで儀式が始まってしまう。

 それは……ルイーゼ王女の……。


 ドンと背中を押された。

「大丈夫だ。ルイーゼ王女を信じろ!」

 ライガが僕の思いを察してか励ましてくれた。

 そうだ。もう、進むしかない。迷っている場合ではない。

 僕はもう一度、空を見あげた。黒い闇に覆われている様だった。罠でも何でもまずはこの闇を払いする事が出来るなら、それを選ぶべきだ。オーウィズ王子も同じ様に指示するだろう。

「はい!」

 僕は自分に気合をいれるかのように、ライガに答えたのだった。



 中央広場が見えて来た。見えて来た?

「絶景だな。」

 ライガが笑いながら言った。絶景と言うのだろうか?僕達の目の前に大量のゴブリンが待ち構えていた。でも、ただのゴブリンではない。

「ライガさん、スキルを使ってきますよ。」

「聞いている。核がふたつあるんだろ。ダブル核モンスターか、楽しみだ。」

「楽しみですか、やっぱりライガさんらしいですよ。ストナ!」

 僕達はメンバーを集めて武器へと光と聖のマナ寄せをした。あのカラコロ厶増殖薬は基本的に闇と邪のマナを宿している。マナ寄せをしなくても大丈夫だろうが念のためにメンバーへと施す。


 マトゥキ達が薬漬けゴブリン(勝手に命名)をなぎ倒してくれるので、僕達はその後を進んで行った……。

 突然、ライガ、マーロンの足が止まった。

「ナギト!」

 僕はマナ寄せ開眼で周囲を見た。

「ライガさん、マーロンさん、左右からかなりのゴブリンです。来ます。」

 突如として両サイドからゴブリンの集団が襲ってきた。マーロンとライガが前方左右の敵を薙ぎ倒してくる中、僕とエージナが右手側、ストナとテロットが左手側を担当する。

 

 火炎鳥!

 エージナの攻撃で目の前のゴブリンを焼き払う。その焼き払われたゴブリン達を盾にして後ろから次々と襲ってくる。そのゴブリンを一匹一匹突き刺すように核を壊していく。

 ゴブリンはスキルを使ってくるが、派手なスキルは使ってこないので、マナの流れを読んでカウンター攻撃で相手を倒していく。

 マナ寄せの効果が絶大で、2つあるマナうち作られたマナに剣先を当てるだけで、核が消滅する。

「キャ!」

 後ろでストナ声が聞こえた。ストナガ倒れている。

「ここはわしがなんとかするから行ってやれ!」

 僕は右手側のゴブリンをエージナに任せてストナ側へと向かった。

 ストナに矢が飛んできた。「心臓の矢」だ。僕はマナを斬るように矢を落とす。

 すると、目の前に剣を構えたゴブリン達が現れた。左手側が本命か?目の前のゴブリンに向けて剣を構える。一気に襲われれば、こちらも太刀打ち出来ない。

 万段突撃!

 ライガが目の前のゴブリンを一掃してくれた。助かった。


 その時だった。

 時間が止まった様な感覚に襲われた。僕達のいる空間へ目に見えない幕が張られた。目の前のマナが揺らぐ。全身が地震の中にいる様にグラグラ感があるのに、目を閉じるとなくなる。視界だけが歪んでいる。

 その視界から歪みが消え、今度は何か違う空間に入った様に感じた。

「なんだ?」

「ナギト、気をつけろ。何かいるぞ。」

「何が起こったの?どうなったの?」

 僕、ライガ、ストナは互いに背中合わせで周りの様子をうかがう。

 幕の外ではマーロン、カール、エージナ、テロットがゴブリン達と戦っている。しかし、こちらにゴブリンは襲ってこない。向こうが僕達を意識している様に思えない。どうなっているんだ?僕達だけが、別空間に入った様だった。

 魔王城でエイディからマナの剣を受け取った時も異空間へと招かれたけど、ここはその時とは違う。異空間というより、何か結界の中に入ったという感じだ。

 ストナが聖流剣で結界から出ようと試みるが弾かれてしまう。ライガの万段突撃でも結界は壊れない。いや、ダメージ自体が当たっていない様だ。壁はあるけど、空気の壁に遮られている様だった。

 マナ寄せ開眼でもマナのベールが掛かっている様にしか見えない。

 ここはどこなんだ。


「ライガさん、ストナどう?」

「何が起こったのよ?説明してよ。聖流剣も通じないし、さっきからちょっと耳がキーンとなってる。何かスキル攻撃を受けてる?」

「ストナ嬢、それは単なる耳鳴りだ。問題はここに外の音が聞こえなくなった事だ。ふたりとも気をつけろ!誰かに見られている感覚がある。ナギトの眼はどうだ?」

 僕は全体を見渡したが、特に異様なマナは感じない。

「マナは感じないです。なんですかね。ここは外のマナは感じる。近くにエージナがいる事は分かるけど、何か別の空間にいる様です。」

「俺達以外誰もいない空間?そんな事はない。必ず誰かいるはずだ。」

 丸いベールの被さった空間に3人がただたたずんでいた。

「わー!」

 今度はストナが大声を出した。

「響かないわね。」

「びっくりするんじゃないか。」

「密封空間ではないわね。」

「なんで?」

「響かないから。」

「え?……待って、何か来る?上空?いや、下?

 地下?」

「どっちよ。」

「分からないよ。」

 僕は目を敢えて閉じた。どこにいる?マナが目の前に形づいてくる。転移陣か?このマナ!?バンパイアだ。見覚えのあるマナだ!

「ウィンザー!」


 次の瞬間、僕達の前にウィンザーが突如現れた。

「久しぶりだな。お前達ともう一度やりたい為に、リリラに頼んでこの機会をもらった。再戦と行こう。」

 ウィンザーは両手に曲刀を持っている。完全に本気モードのようだ。

「この空間は何だ。なぜ僕達3人なんだ。」

 ウィンザーは僕の言葉に気にも留めず、ライガの方を見た。

「初顔だな。自己紹介がまだだったな。我は高貴なる3魔女ナーガム様の従者、ウィンザー。と言ってもナーガム様はもうこの世にいないがな。バーブルとミリアンも既に世を去った。お前達の手によってな。お前はライガか?」

「ほお、良く分かったな。」

「ここにいるからな。」

「どう言う意味だ?」

「そのままの意味だ。この空間はリリラに作らせた死闘空間。昔からバンパイアが使う私念の決闘空間だ。この空間にはこちらの指定した者を入れる事が出来る。ここはどちらかが倒れるまで解除されない。」

「なぜ俺達なんだ。」

「分からないのか、バーブルとミリアンの両方殺した者をここに集めた。それがお前達だ。そしてリリラ側の刺客として来たのが私と言う事だ。」

 ライガが一呼吸おいて答える。

「面白いな。俺もお前の事を聞いて一度戦ってみたかった。ちなみに外からこっちは見えるのか?」

「残念ながら、お前達が死んで結界が解けないとこっちの姿は見えない。残念だったな。斬り刻まれるところが見られなくて。」

「そうだな。どうせバンパイアは消えて行くんだろ!お前の最期をみんなに見せられなくて残念だ。」

「面白い!本気でいくぞ!曲乱真舞!」

 乱舞が来る!

 乱舞はマナが読めない。いや、読む前に攻撃を受ける。

 でも、見るんだ。読むんだ。

 目に頼るな。マナを感じろ!

 マナ寄せ開眼だ!


 来る!動いた。

 ウィンザーの身体が6つに分かれた。僕の方へ左右から2体が来る。2体両方ともウィンザーだ。これが乱舞の正体か!正体が分かっても避けられなければ意味がない。2体の2刀流。4刀流。どうやっても避けようがない。


 曲刀が何重にもなって僕を襲ってきた。

 避けきれない。

 何度斬られたのか分からない。

 ……。

 気づくと、ストナが横にいた。

「大丈夫?」

「ウィンザーは?」

「今、ライガが戦っているわよ。」

 ストナの聖回復で回復してくれたのだろう。傷は癒えていた。僕はゆっくりと起き上がってライガ達を見あげた。すると、大きな声が空間に響いた。

「エイディの子孫が情けないな。女子に膝枕か。お子様だな。ワハハハハ。」

 笑い声だけが響いていた。

「挑発にのったら負けよ。」

「分かっているよ。ストナは大丈夫?」

「私は避けたから、少しダメージを受けたけど。」

「ストナはどうやってあの乱舞を避けたんだ?」

 ストナはすこし下唇に人差し指を当てて考え込む表情を見せた。

「勘かな?」

「勘?」

 いわゆるセンスか。ストナは考えられない程のスキルセンスがある。聖流剣で相手と戦う時、敵を見ているのかと不思議になる程複雑な動きをする。

 ……。

 敵を見ない。

 マナだけを感じ……。


 いやいや、人にはそれぞれ生まれ持ったものがある。真似をすればいいわけではない。


「ナギト、来るわよ。一旦離れるわ。」

 ストナが右手側へと離れて行った。


 戦いはライガが押されている。向こうがその隙を付いて再び曲乱真舞を使って来た。

 再びあの4刀流攻撃がくる。

 どうする。どうせ眼では見切れない。それなら、スキルを使うしかない。やるぞ!

「回転マナ返し、解除、回転マナ返し、解除、回転マナ返し、解除、回転マナ返し、解除、回転マナ返し、解除…………………………。」


 …………………………。

 意味が分からない。

 回転マナ返しで敵の攻撃を避けた。剣先は僕の身体を狙って斬りつけて来る。その剣先から発されてマナの流れを感じながら剣先を避ける。この時点でスキルを解除してすぐに回転マナ返しを使う。すると、真後ろにいる様にもう1体の剣先が肩の上にあったがこの剣先を避けて、再び解除、回転マナ返しを使う。

 最初の一体のもう片方剣先が僕の顔に向けて突き付けて来ていた、その突きもマナの流れを利用して避けてからの解除……。この流れを永遠に繰り返す。

 次第に自分の体勢がどうなっているのかも分からなくなる。

 目が回る。今自分がどこにいるのか?どんな体勢なのか?何をしているのか?ただ、ひたすら4本の剣を避け続けた。

 何百と避けて相手のマナが弱まり、ようやく攻撃が止んだ。


 目の前のウィンザーが突如として消えた、そして中央部に現れた。ライガやストナも無事に立っていた。どうやら今回もふたりとも乱舞を回避出来た様だ。

 その一瞬でライガが動いた。再び攻撃を仕掛ける。中央部に戻った瞬間を狙ったんだ。

 僕も続く。こんな攻撃を何度も回避することは出来ない。攻めるしかない。


 ライガとウィンザーがぶつかりあう。曲刀2刀流対槍。ウィンザーはライガの槍を曲刀で受け流している。時よりカウンターを入れてくる。そのカウンターを受け流す為にライガの形勢が悪くなる。

 そんな繰り返しが続いていた。


 ストナが後ろからウィンザーを狙った。聖流剣と万段突撃の間に挟まれているけど、全く動じない。通常攻撃の様に交わしている。

 手強い。


 でも、両方攻撃を受けた際に一歩後ろへ引く癖がある。ここを狙うしかない。

 3人の力で倒すんだ!

 信頼しろ、ストナとライガを。

 信じろ!


 今度はストナが先に仕掛ける。さすがとしか言いようがない。最初の一撃が互いに相殺されると、次は相手の2撃目になるが、聖流剣の回転で見事にかわす。かわしている感覚はないと思うくらい自然に戦っていく。それにライガが続く右側にストナ、左側からライガで相手を攻撃する。

 ウィンザーが両方の剣で攻撃を受けた。

 次の瞬間後ろに下がる。僕はウィンザーに向けて突きを放った。

 ウィンザーが気づいたが、ここからなら狙える。

 行け!


 ウィンザーは一瞬で右肩を落として敢えて肩にめり込ませた。

 しまった!核を突けなかった。

 ウィンザーは身体をねじって回転したので、僕はその勢いで吹き飛ばされた。ストナ、ライガも飛ばされた。

 僕達は狙いに行った攻撃で相手に時を与えてしまった。乱舞のスキルを使う時間を。


 乱舞が来る。

 曲乱真舞!


 再び僕にウィンザーの影のようなものが2体現れた。身体の体勢が整っていない。けど、やるしかない。

 回転マナ返し、解除、回転マナ返し、解除………。

 再びあの繰り返し避けを使う。

 目が回る、身体も目も脳みそもぐるぐる回る中で次の攻撃を考えていた。

 どうする?

 ……。

 この攻撃が終わる瞬間、最後の攻撃で回転マナ返しを解除しなければどうなる?

 そのままの突き刺せるのか?

 相手の攻撃の終わるタイミングはなんとなく分かる。マナが著しく弱くなる。そのタイミングで回転マナ返しをそのまま食らわせれれば、どうなる?

 乱舞で肉体が6体に分けられていたとしても1/6は倒せる。上手くやれば、1/3まで倒すことが出来る。だからどうしたのか?になるのか、されどダメージを与える事が出来るのか?

 やるしかない。とにかく今自分出来る事はこれだけだ。


 回転マナ返し、解除のループ作業を繰り返していると、マナが弱まった。

 今だ!

 回転マナ返し(解除なし)。ウィンザー幻影の核を突き抜いた。僕はそのまま消えかかっているもう片方の核にも突きさした。


 ……。

 幻影は消えていった。


 中央にウィンザーが…………。出てこない?消えた?倒した?

 すると、空間にウィンザーの声が響いた。

「久しぶりに楽しい死合だった……。リリラとの戦い楽しみだ………………。」

 そう声が聞こえて、やがて空間は静まり返った。ウィンザーのマナが消えた。上空から封印も消えて行く様に感じた。

 ドン!

「よくやったな。」

 ライガが僕の肩を叩いて来た。

「ライガさんやストナのおかげです。」

 今度はストナが近寄って来る。

「まあ、50点くらいあげるわよ。」

「何だよその上から目線は。それに何点満点だよ。」

「うーん1000点かな。」

「低!」

「美味しいところ持っていったから、私が倒したかったのに。」

 ワハハハ、ライガの笑い声か空間に響いた。そして、僕の肩に腕輪を乗せてきた。

「行くぞ。次はリリラだ。」

「はい!」

 空間が上空から溶けるように消え始め、次第に辺りの声が鮮明になってきた。

 ゴブリン軍団との戦いもほとんど終わりかけていた。

「おまえさん達、どこに隠れておった?心配させて。」

「すみません。ストナが野暮様で。」

「なんで私よ。ナギトでしょ!」

 僕達を見てエージナ、テロットも安心した様である。マーロン達の前衛もあらかた片付いている様子だ。

 空は相変わらず黒く、黒雪が舞っていた。

「行くぞ!」

 僕は前方へ進んで言っているマトゥキ達を追った。



 中央広場へと集まったメンバーには傷を負った者も大勢いた。

 数チームがチームごと行方不明になっている。まだどこかで戦っているのか、既に餌食になったのかは分からない。捜索する時間もない。

 また運ばれてきた負傷兵の中にも既に息絶えている人も少なく無かった。

 戦いはまだ終わっていない。ここで気を緩める訳にはいかない。

 

 マトゥキが広場の中央で剣をかざした。

 マナがマトゥキの全身を駆け巡る。聖剣アヴァロンから発したマナが一度マトゥキの体内を駆け巡ってから、再び剣先へと集中する。

 マトゥキの気合と共に聖のマナが巨大な強風の様に マトゥキ中心に吹き荒れた。30秒くらいすると上へと上がり、天空の暗闇に穴があいた。

 穴は徐々に広がり、地表へ日の光を照らし始める。暖かな光を受けると地面に積もった黒い雪が蒸発する様に消えて行く。

 数分後には空は綺麗な青空となり、日の光が聖京都城を綺麗に照らしている。

 日の光を受けて、山と積まれたゴブリンの死骸も黒雪同様に蒸発していったのだった。

 

 僕の前にマーロンか立った。

「終わりではないぞ、ここからが始まりだ。賽は投げられた。相手がルイーゼ様に何かする前に救出する。そしてあの魔女を倒す。」

「マーロンさん、やりましょう。」

 ストナが僕の左腕を寄り添って来た。

「私はナギト隊長に続くだけだから。」

 ライガが僕の肩に腕を乗せた。

「ここまで来たら、隊長を信じて進むしかないな。」

 エージナ、テロットも僕の方を見て言った。

「わしらもおぬしに任せる。そのかわり礼は弾む様に王子様に言っとけよ。」

「また、何が欲しいんですか?」

「決まっとるじゃろ。魔障の沼地探索に七本槍の道化衆を貸し出してもらうんじゃ。」

「それって結局、僕じゃないですか。」

 マーロンが僕の前に立った。

「俺が許可する。七本槍の道化衆をエチャーメルへ派遣する。ただしこの戦いが終わってからだ。」

「よし、のった。」

「マーロンさん、エージナさんものったじゃないですよ。」

 すると、ストナが腕を引き寄せた。

「いいんじゃない。仕事がある事はいいことよ。それに全員無事で戻ろうよ。」

 それなら。

「行くぞ!」

 僕が大声で叫ぶと、全員が「オー!」と声を上げた。

 進むは聖京都城!倒すは3魔女長女リリラだ!

 

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